NIGHTMARE 白磁を思わせる肌。 滑らかな肌に指を滑らせて、その絹の如き感触に感嘆する。 初めての行為。 何もかも。 だから、一つ一つ確かめるようにその肌をなぞって、口付けて、 その些細な反応すら見逃さないように目を凝らす。 「………ん……。」 そうして指が、舌が、弱いところを掠める度、唇からは微かな 吐息が零れ落ちる。 押し殺したようなそれ。 洩らすまいとする彼のプライドが、かえって愛しさと、同時に 嗜虐心をそそる。 声、上げて。もっと。もっと、僕の手で乱れて。 そんな欲望が首を擡げて。 湧き上がる欲望に押されるように、脈打つそれに唇を寄せた。 「……ぁ………っ。」 上がる、微かな嬌声。 たどたどしい口使いで、それでも一生懸命舌を這わせれば、時 折確かに洩れる吐息。 それが甘く、耳に心地いい。 うっとりとそれに耳を傾けながら、それへの愛撫を続ける。 幾許かの時間をかけて、それはようやく解放の時を迎えた。 「は…ぁ………。」 受け止めたそれをこくりと飲み下す。 一瞬、背徳感に近い感情が沸き上がったが、不思議と嫌悪は感 じなかった。 白い胸を上下させている彼に、うつ伏せになってくれるよう促 せば、抗うことなくそうしてくれる。 それは、馴れていない僕への配慮なのだろう。 腰の下に枕を置いて高くさせれば、羞恥に肌が綺麗な桜色に染 まった。が、やはり抗う素振りはない。 用意していた潤滑油を指で掬い取って、そうしてそっとそこへ と塗り込めた。 ひやりとした感触に、ふるりと体が震える。 丹念に塗り込めながら、背中に口付けを落とせば、シーツを握 り締め、快楽に耐える姿。 ひどく、エロティックだ。 たっぷりと塗った潤滑油に、滑るそこへと指を潜り込ます。 「……んぁ……っっ。」 濡れた音を伴って入り込んだその感触に、体が歓喜の声を上げ る。 誰かとの行為に馴れた体はそれだけでひくひくと収縮して、受 け入れた指を更に奥へと導いていく。 分かっていたことだけれど、その事実を目の前につきつけられ れば、やはりいい気はしない。 けれどそんな感情も忘れさせてしまうほど、彼の体は淫らで、 そうして甘かった。 狭いそこを馴染ませるようにゆっくりと掻き乱せば、もう、堪 えきれない嬌声が、度々その口から零れ落ちる。 それが嬉しくて、更に指の動きを激しくしていく。 シーツを握り締め、快楽に体を震わせて。それではもう物足り ないのか、ねだるように揺らめく腰に官能を揺さぶられる。 無意識に込み上げてくるものを飲み下して、そこを犯していた 指を引き抜く。そうしてそこに自身を押し当てれば、期待にか震 える体。 白い背中にそっと指を滑らせて、一度だけ口付けを落とした。 薄く散った朱に小さく笑んだのを、彼は知る由もない。 そうしてゆっくりと沈めていった熱に、歓喜の嬌声が零れ落ち た。 熱く絡みつく内壁。 淫らで、とても気持ちが良くて、もう、それだけでイってしま いそうになる。 こんなことでは、彼を喜ばせてあげるなんて夢のまた夢だなと、 ひどく冷静に考えている自分がいる。 こんなにも激しい熱に浮かされているはずなのに。 それを不審に思うよりも先に、堪え切れず、僕は溢れる欲望を 解き放っていた。 「――――――………っ!!」 弾かれたように開いた目に、最初に飛び込んできたのは見慣れ た天井だった。 薄闇の中、自分の乱れた呼吸だけがやけに耳に響いて、ひどく、 気分が悪かった。 「……夢………。」 呟いて、それをきちんと認識する。 でなければ、現実と混同しそうで ―――― 。 それくらい、リアルな夢。 そう、まるで、彼の邪眼のように。 「またか……。どうしてこう……。」 両手で顔を覆って、自分の浅ましい感情に嘆息する。 彼を好きだという感情は、既に自分の中では確立されたものだ。 それは確かなこと。 けれど、だからと言ってすぐに彼をどうこうしたいと言うわけ ではない。興味がないわけではないが、まだちゃんと告白もして いないのにそんなこと、今はまだ考える段階ではない。 まずちゃんと告白して、それから ―――― 。 そう思うのに、夢は自分の内面、それも殊更醜い部分 ――― 欲望を映し出す。 そう、このところ毎晩のように見る ――― 彼と交わる夢。 それがいつも同意の上と言うのも、嫌になるほど自分に都合が いいもので。 だから、まるで醜く浅ましい自分を突きつけられているような、 そんな感覚に捕らわれる。いっそこれが無理矢理だったら、その ほうがまだマシだったかもしれないと、そう思うほどに。 「……いっそ、邪眼なら気が楽だったのにな……。」 嘆息して、彼のあの綺麗な瞳を思い起こす。 時に悪夢を、時に良夢を見せる紫紺の瞳。 穢れなく、高貴なその瞳によってもたらされる夢。 そうだったならどんなによかっただろうか、どんなに救われた だろうか ――― ? 「悪夢」と呼ぶには甘美過ぎる「夢」に、そうして僕は今日も 捕らわれる。 そうしてそれは、「彼」に捕らわれたと言うことに相違ないの だ。 THE END なんつうか、「悪夢」と言うよりは「淫夢」?そうすると蛮ちゃんは 淫魔か?(苦笑)・・・出てきて欲しいかも(←バカ) こんなのをチラッと考えて、で書いちゃう辺りしょーもないですね、 私・・・。(macraさん、すみません!!(滝汗)) ちなみに、二人の名前が出てこないのはわざとです。が、蛮ちゃんは ともかく、お相手はこれじゃ分からないか・・・?(汗)