紫煙 額にかかる髪を鬱陶しげにかきあげながら、蛮は口に咥えたタバコに 火を点けた。 途端立ち上る紫煙。 その煙を肺いっぱいに送り込んで。 満足したのか、蛮は微かな笑みを浮かべた。 「うまいのか?」 「あ?」 その一連の動作を黙って見ていた雷帝が、不意に声をかけた。 雷帝の言葉がうまく聞き取れなかったのか、「何が?」とばかりに首 を傾げる蛮。 「それだ。」 と手の中の物を指差せば、蛮は小さく笑みを浮かべて「ああ。」と声 を洩らした。 「吸ってみるか?」 笑って差し出されたそれを、勧められるまま口にする。 「どーよ?」 くすくすと笑いながら問い掛ければ、眉を顰めた雷帝がその手を払っ た。 「不味い。」 「そっか?」 雷帝の反応に、蛮の笑みが更に深まる。 「けど、珍しいな?オメーがタバコに興味示すなんてよ。」 「あんまりおまえがうまそうに吸っているから。」 問い掛けに、雷帝は蛮を見据えたまま答えた。 蛮も、薄く笑んだまま、そんな雷帝をただ見つめていた。 「ま、人の好みはそれぞれだからな。いーんじゃねぇの。」 「そんなものより俺は、」 一度言葉を区切ると、蛮の腕を引き寄せ、そのまま組み敷く。 「おまえのほうがいい。」 言葉の先を耳元に囁くと、首に口付けを落とす。 その白い肌に紅い薔薇が浮かび上がると、雷帝は満足げに笑みを浮か べた。 「…まだやんのかよ?タバコくらいゆっくり吸わせろよな。」 溜め息混じりに洩れた言葉に、雷帝がゆるりと秘所に指を突き入れた。 そこは何の抵抗もなくそれを受け入れ、剰え、濡れた音を響かせる。 そのまま軽く蠢かせれば、途端物欲しげにひくつくそこに、雷帝の笑み が深まった。 「そんなもの吸うより気持ち良くなるさ。それに、おまえも欲しい、だ ろう?」 「………ん……っ。」 なおもそこを刺激すれば、蛮の口から押し殺したような甘い溜め息が 零れ落ちた。 入れた指を蠢かせながら、雷帝は蛮に口付けようとした。が、それを 蛮の手が押し留める。 「……ったく……。」 溜め息と共に言葉を洩らし、軽く上体を起こすと、蛮はサイドテーブ ルにあった灰皿にタバコを押し当て揉み消した。 「しょーがねぇなぁ。」 そうしてくすりと笑むと、雷帝の首に腕を絡める。そうしてそのまま 引き寄せ、その唇に軽く口付けを落とした。 離れかけた唇を雷帝が追い、再び塞ぎ、激しい口付けを繰り返した。 揉み消されたタバコから、名残の紫煙がゆらゆらと立ち上る。 その煙が消える頃、代わりに、甘い吐息が室内を満たしていた。 THE END
吉野さまがサイトにて企画実施中の「108のお題」に投稿させて もらった雷蛮です。しかも初書き! なんつうか、蛮ちゃんがもう、「誰やねん?」って感じで申し訳な いです(泣)いつものうちの蛮ちゃんじゃないのは確かです。が、 どうやら雷蛮はこういうイメージもあるらしく、最初に考えたのも こんな雰囲気でした。なんでだろ?(Byテツ&トモ) いちようそんなことにはなってますが、裏に置くにはぬるすぎるの で表に置きました。 この会話の前後は皆様のご想像にお任せします(^^) しかし、バレンタインSS(銀蛮)ほっぽって何書いてるんでしょう ね(汗)……すみません!(><;) と言うわけで、お茶濁しにUPしてみました(苦笑)