[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
DANDELION 朝、目が覚めると横に寝ていたはずの蛮ちゃんの姿はなかった。 「え!?」 起き抜けの寝ぼけた頭もその事実にいっきに覚醒。思わずタレて慌てまくっ てしまう。 「き、昨日はここにいたよね……?ええ~~~~っ!?なんで!?どこいっ ちゃったの!?蛮ちゃ~~~んっっ!!」 ビチビチとてんとう虫くんの中で暴れていたら、蛮ちゃんの定位置、運転席 に一枚のメモが置いてあることに気がついた。 「?なんだろ……?」 手に取って読んでみる。 『銀次へ 先にHONKY TONKに行ってる。起きたら来い 蛮』 用件だけの短いメモ。字は蛮ちゃんのものだ。 「なんだぁ~~~。もー、びっくりしたーっ!」 消えた蛮ちゃんの行き先が分かって、とりあえずほっとする。が、いつもな ら起こしてくれるか、起きるまで待っていてくれる蛮ちゃんが、今日に限って メモ一つ残して一人でHONKY TONKに行ってしまったと言うのが気に かかった。 「なんかあったのかなぁ~?」 首を傾げながらも、とりあえず俺は、蛮ちゃんの待つHONKY TONK へと向かった。 「おっはよ~。」 挨拶と共にドアをくぐれば、夏実ちゃんと波児さんが口々に返事をしてくれ た。もちろん俺の蛮ちゃんもv……って、え?何で蛮ちゃん、そんな格好して んの? 思わず入り口に立ち尽くしてしまった。 「何んなとこに立ち尽くしてんだよ?銀次。座れよ。」 そう言って蛮ちゃんは、笑みを浮かべて俺にカウンター席に座るよう促した。 「う、うん……。」 蛮ちゃんの格好に目を奪われながら、俺はおずおずと椅子に腰を下ろした。 俺の前に立って笑みを浮かべている蛮ちゃんに、首を傾げる。 いつもなら俺の隣には蛮ちゃんが座っているはずだった。が、今蛮ちゃんが いるのはカウンターの向こう側。そう、HONKY TONKの黒いエプロン をつけて、夏実ちゃんと波児さんと同じ場所に、蛮ちゃんは笑みを浮かべて立っ ていた。 「………蛮ちゃん……まさか俺に内緒で転職しちゃったの?」 思わず零れ落ちた言葉に、蛮ちゃんのゲンコツがHITする。 「いてーっ!」 「んなわけねぇだろ!何考えてんだ!?」 「だって~~っ。」 思わずタレて、蛮ちゃんを上目遣いで見つめる。 内緒で(そりゃメモはあったけど)ここへ来てるし、そんな格好してるし、 そう思っちゃっても仕方ないじゃん。 なんて、考えてたことが顔に出てたみたい。思わず頬を膨らませた俺に、蛮 ちゃんが苦笑した。 「波児にキッチン借りてたんだよ。だからだ。」 キッチンを?何のために? タレたまま「ウキュ?」と首を傾げた俺に、蛮ちゃんが綺麗な笑みを浮かべ た。 ほえ~~~vやっぱ蛮ちゃんって、綺麗だな~~~~vvvvvvv 見惚れてたら、頭を小突かれた。 「何呆けてやがる。ほれ。」 そう言って目の前に出されたカップ。 湯気の立ち上るそれに目を向ける。 一見コーヒーのようにも見えるけど、それにしてはあまり匂いはしない。 これが一体なんなのか分からなくて、俺は疑問を素直に口にした。 「ほえ?何これ?」 「コーヒー。」 「コーヒー?でも、あんま匂いしないよ、これ?」 「ま、いーから飲んでみろよ。美堂 蛮様特製のコーヒーなんだからよ。」 そう言って笑みを浮かべてる蛮ちゃんは、俺をからかってると言うか、反応 を楽しんでるというか。うーん、なんて言うのかな?そう、悪戯を企んでるっ て言うの?そんな顔してる。 「蛮ちゃん特製の…?……飲めるの?これ。」 言った途端また殴られた。 「いいから黙って飲め!」 「は~い……。」 睨まれて、肩をすぼめる。 蛮ちゃん特製のコーヒーねぇ……。ホントなら喜んでvなんだけど、蛮ちゃ んのその目がな~……。ま、いっか。蛮ちゃんが俺に薬盛るはずないもんね♪ そう考える。そうして砂糖に伸ばした手を、蛮ちゃんに遮られた。 「?何?蛮ちゃん。」 「まず、そのまま飲んでみろよ。」 「?いーけど……。」 「なんだろ?」とは思いながらも、蛮ちゃんに言われた通り、そのまま飲ん でみる。 一口、二口。 口に広がる味に、確かにコーヒーだと納得する。でも……。 「どーよ?」 なんだか楽しそうな表情で、蛮ちゃんが感想を求めてくる。 「んー、波児さんのよりかは劣るけど、でも、これはこれで美味しいよ。」 「そっか。」 満足そうな笑みを浮かべる蛮ちゃんに、俺も自然と笑顔になる。 でもなー。コーヒーだとは思うんだけど、なんか違う気も……? 「ねぇ蛮ちゃん。これ、ホントにコーヒー?」 「何?オメー疑ってんのか?」 「そうじゃないけど、なんか微妙に違う気も…しなくもないかな~なんて、思 うんだけど……。」 こんなこと言ったらまた蛮ちゃんに怒られるかな?とも思ったんだけど、気 がつけば疑問は口を付いて出ていた。慌てて口を塞いで蛮ちゃんを見れば、目 の前に驚いたような蛮ちゃんの顔。それに、俺も思わずきょとんとしてしまっ た。 「蛮ちゃん……?」 「ちゃんと味の違い、分かってんだ。へー……意外。」 ぽつりと洩れた蛮ちゃんの言葉に、さすがにちょっとムッとする。 「なんだよそれ!俺だって味の違いくらい分かるよ!」 「そーは見えねーからよ。腹に入りゃなんでもいーのかと思ってた。」 そう言って笑う蛮ちゃん。 ひどいなーもう。そりゃ、そんなことなくもないかもしんないけど、でも、 味オンチってわけじゃないよ?俺。 頬を膨らませた俺に、蛮ちゃんが「悪ぃ悪ぃ。」と苦笑した。 「で?これって何なの?蛮ちゃん。」 「あ?ああ、これ?『タンポポコーヒー』。」 「『タンポポコーヒー』?!」 素っ頓狂な声を上げて、俺はカップの中身を凝視した。 タンポポって、あのタンポポだよね?黄色い、今時季道端に咲いてる……。 「根っこを刻んで乾燥させて、んでもってフライパンでとろ火で焦げるまで炒 るんだよ。そいつを粉にしてお湯を注いで出来上がり。カフェインレスだから、 夜寝る前に飲むのがいーんだけどな。」 呆けたように『タンポポコーヒー』を見ていた俺に、蛮ちゃんは簡単に作り 方を説明してくれた。 「香はちっと薄いけどよ、色も味もよく似てんだろ?コーヒーに。」 俺の反応に満足しているのか、顔を上げれば、頬杖をついたまま蛮ちゃんは 笑みを浮かべて俺を見ていた。 「ちなみに、ごぼうでもできんぜ?」 「ご、ごぼう!?」 さらりと告げられた蛮ちゃんの一言に、俺はさらに目を丸くした。 ごぼうってごぼうって、あのごぼうだよね!?ドロついてて細長くってキン ピラゴボウとかに使う、あれ!……ごぼうでコーヒー……いくら味がコーヒー みたいでも、なんかちょっと嫌かも……。 「っても、『ごぼうコーヒー』じゃ色気がねぇからよ、『タンポポコーヒー』 にした。春っぽくていいだろ?」 くすりと微笑む蛮ちゃんに、俺は満面の笑みを浮かべた。 「うんvだから、なんだね。先にここに来たのって。」 多分、俺に春を実感させてくれようとしたんだと思う。この『タンポポコー ヒー』で。だって、この季節じゃなきゃ作れないものだし、それ以外、蛮ちゃ んが俺を置いて先にHONTY TONKに来た理由、俺には思いつかないか ら。 「蛮ちゃん大好きv」 そう言って「えへへ~v」と笑った俺を、蛮ちゃんは薄っすらと頬を桜色に 染めて、軽く小突いた。 「バーカ。」 次いで微笑。 やっぱり蛮ちゃんは最高に綺麗で可愛いv カウンター越しでなければ抱き締めてたんだけどな~。残念。 「で、どーよ?俺の特製『タンポポコーヒー』のお味は?」 「最高v」 俺は満面の笑顔でそう答えた。 「ところで、蛮ちゃんも飲んだの?これ。」 「あ?飲むわけねーじゃん、そんなもん。」 「……………え?」 「俺様の口にそんなパチモン合うわけねっての。それに、作ったのも今日が初 めてだからな。」 「…………蛮ちゃん……。」 どうやら俺は、実験体だったみたい……★ THE END 春です。ので、それらしいお話を。 とは言え、実際に書いたのは昨年の秋でしたが(笑) このタンポポコーヒー、図書館で見つけた「薬になる花」(だったかな?) と言う本に載っていました。見た瞬間「使える!(←なんにだ?と言う突っ 込みはなしでv)」と思う辺りダメですな(苦笑) コーヒーと違ってカフェインレスなので、お肌にも優しいタンポポコーヒーv 是非試してみてはいかがでしょうか?春を体感できること間違いなし!(多分) ちなみに、私は試したことないですv(おい)だって、これ知ったの秋だった しv(笑) 場所によっては飲ませてくれるようです。と、後輩から聞いたけど、本当か な?