dress-after the party-






		   目的のホテルは、HONKY TONKから歩いて10分ほどのところである。

		   通常であれば。

 		   倍以上の時間をかけて、ようやく道程の半分ほどを消化する、というほどに
		  なって。

		  「銀……次っ」

		   潤んだ眼をした蛮の歩みが、止まった。

		  「も……駄目だ。歩けねぇ、よ」

		   媚薬をかがされた蛮の体は、歩くたびに擦れる衣擦れにすら反応してしまっ
		  ており、半ば銀次に縋りつくような形でここまで歩いてきたのだったが、それ
		  ももう限界のようである。

		  「仕方ないなぁ、蛮ちゃんは。じゃあ、一回イク?」

		   耳元で囁きながら――それに逐一反応してしまう蛮を楽しみながら――指指
		  し示す先は、公衆トイレ。

		   普段の蛮であったなら、死んでもお断りだ、などと叫んで突っぱねたであろ
		  うに、このときの蛮に、そんな余裕などあるはずもなく、銀次の肩に顔を押し
		  付けるようにして頷いた。

		   公衆の面前でこんなことをしても、振り袖姿である為、普通のカップルにし
		  か見えない。

		   流石にトイレに入るときくらいは、人の見ていない隙を伺いはしたが。

		   個室に入るなり、蛮は洋式の便座の上に座り込んでしまった。

		  「マジ……覚え、てろよ銀次っ」

		  「だって蛮ちゃん可愛いんだもんv苛めたくなっちゃうでしょ」

		  「っのやろ……ぁ」

  		   早速裾を左右に割ると、トランクスの下、痛々しく張り詰めているものがあ
		  る。

		   布の上から触るだけで、ビクリと身を竦ませる蛮が愛しくてたまらない。

		  「じゃあ、振り袖汚さないように、上手く俺の口の中に出してね」

		   そんなことを言われると、恥ずかしさと後ろめたさで蛮は頬を染めるが、次
		  の瞬間ぱくりとそれを咥えられると、もう何も考えられなくなる。

		  「ひぁっ……あっ、ぁあっ」

		   瞼の裏がチカチカするほどの快感に、程なく蛮は銀次の口中に吐精した。

		  「んっふ……ん」

		   余韻に浸っている蛮は、気がつかなかったのだ。

		   銀次が、さっきの包みの中から、銀色のリングを取り出したのを。

		   カチャリ、と金属音。

		   同時に、熱くなったその根元に、冷たさを感じた。

		  「な……に?」

		  「ホテルまで、我慢できるようにねv大丈夫、ホテルに着いたら外すよ。で
		  も……」

		   言いながら、銀次の手はまたも包みの中を弄っている。

		  「最初から我慢できなかった蛮ちゃんには、ちょっと罰ゲームしてもらおうか
		  な。」

		  「なに……考えて、アァっ!?」

		   熱い銀次の舌。

		   今度は、後ろに。

		  「よし、細いから、このくらいでイイかな」

		   言うなり、そこへ侵入してきたのは。

		  「ひぃ……あ」

		   細身のローターだった。

		  「大丈夫。一番弱いのにしとくから。ほら立って蛮ちゃん。ホテルいこ?」

		  「立てる、かっ!バ……カぁ」

		  「じゃなきゃ一番強いのにしてお姫様だっこしてくよ?」

		  「……ッ!!」

		   馬鹿の皮をかぶった鬼畜に、蛮は当分勝てそうに無い。







		   フロントで銀次が受付と話している間、蛮は気が気ではなかった。

		   膝はとうにガクガクと笑っていたし、ため息をつくだけで妙な声を出してし
		  まいそうだった。

		   あまりに妖艶なその色香に、すれ違うカップルの、それも両方が釘付けになっ
		  ていたことなど気付く由も無い。

		   ――最も、そのうち女性の方はそんな反応をしてしまった自分自身を疑問に
		  思って首を傾げるのだが。

		  「203。うん。ここだよ、蛮ちゃん」

		   銀次が鍵を外すなり部屋に駆け込むと、ベッドまで辿りつかず、床の上に座
		  り込んでしまった。

		  「はぁっ……はぁ……はやくっ……ゃくっ」

		   ぽろぽろと、その両眼から涙が溢れる。

		  「わかってるって。よく我慢できたね、蛮ちゃん」

		   再び振り袖の裾を割り、根元の戒めを開放すると同時に後ろに咥えこまれた
		  ままのローターを最大にした。

		  「ぁぁああああっ」

		   喉を仰け反らせて、蛮は果てた。

		   そのまま仰向けにゆうらりと傾いだ体を抱きとめて、銀次は囁く。

		  「ベッド、行こうか」

		   激しすぎる束縛からの開放に、蛮の頭の中は真っ白だ。
 
		   返事などする余裕もないが、遠慮無く銀次は蛮を抱え、ベッドにその体を横
		  たえた。

		   未だ開放の余韻に浸っている蛮は無抵抗で、やすやすと銀次はその足を開か
		  せる。

		  「んっ……ァ」

		   ロータ―を引き抜くと、名残惜しげにヒクつく内部が、淫らに赤い。
 
		  「かなりほぐされたみたいだね。いつでもOKって言ってるよ?」

		   舌でつつくと、我に返った蛮の顔がみるみる紅潮する。

		   そんな反応をこそ銀次は喜んでいることなんて、蛮には思い至らない。

		  「でも、せっかく色々貰ったんだし、いきなりヤっちゃうまえに試してみたい
		  よね」

		   満面の笑顔の銀次。対照的な蛮。

		  「まだあんのか、よっ……もぉ、いいっ」

		   必死で後ずさりしようとする腰を抑えつける。

		  「遠慮しないで。あ、太いのとかあるし」

		   見せつけるように取り出したのは、黒くグロテスクな形のバイブレーター。

		  「いいっ!!いらねぇっ」

		   顔を蒼くして蛮は叫ぶ。

		  「大丈夫だよ。俺のよりは小さいし」

		  「そんな問題じゃ……っ!」

		   押し黙ったのは、冷たいそれの先端を入り口にぴたりとあてがわれたせい。

		  「あーでも、いきなりコレ突っ込むのはやっぱ辛いかな。柔らかくはなってる
		  けど、乾いてきてるしね」

		   しかし、冷たさが離れたのにほっとするまもなく、蛮は悲鳴を上げた。

		   銀次が蛮の秘部へと塗りこんだのは、暗緑色の透き通ったジェルだった。

		  「やっ、あ!なに……ぁっ?」

		  「潤滑剤かなんかだと思うけど……あ、コレにも催淫剤入ってるんだ」

		  「ちょっ……おいっ」

		   遠慮なしに銀次の指は蛮の内部へと侵入する。

		   ジェルのせいで蛮の内部はよくすべり、既にほぐされていたそこは、指が3
		  本に増やされてもあっさりと受け入れた。

		  「は……ぁんっ……ァ、銀っ……コレなんか、変っ……ぁっ」

		   腰を振り乱し、蛮は訴える。

		   それまで以上に頬は紅潮し、瞳は潤みきっていた。

		   実はこのジェル、先ほど銀次が蛮にかけたものとは違うタイプのもので、先
		  程のは感度を非常に敏感にするタイプのものだったのだが、これはより強い刺
		  激を自ら欲するようになる、というシロモノだった。

		   つまり二つの薬を併用したことになる蛮は、あらゆる刺激に敏感に反応しな
		  がら、更に強い刺激をも求めるような体になってしまっているのだ。

		  「じゃ、入れてみるね」

		   そんなことも知らず、のんきに銀次は笑う。

		  「あっ!ああぁっ、んっ」

		   腰をうねらせることによって振り袖がしわを作るが、もはや蛮にはそんなも
		  のを構っている余裕はない。

		   銀次は蛮の弱いところを的確に狙ってバイブを挿入する。

		   薬の力も借りて、程なく蛮は達する。

		   しかし。

		  「もっ……ぬけ、よぉ」

		   銀次はバイブを抜こうとはしない。

		  「だって、蛮ちゃんすっごい美味しそうにしゃぶってるんだもん」

		   言いながら再びぐいぐいと押し込みながら蛮を苛む。

		   今度は前を刺激することも忘れない。

		  「いっ……ぃ、ぁんっ」

		   蛮がゆるゆるとまた勃ちあがり、天を指したとき。

		  「ア……っ?」

		   手もとのバイブを抜き去った。

		  「そんなに言うなら抜いてあげる」

		   声もなく、数瞬間が蛮の目の前を通りすぎる。

		   目の前の相棒の為すことが、信じられなかった。

		  「……っ!」

		   その時、蛮の中の何かが弾けた。

		   その時の蛮の眼は焦点が合っていなかったと、後々まで銀次は語ることにな
		  る。

		   勢いよく上体を起こすと、銀次の胸倉を掴みいつもとは逆に組み伏せたのだ。

		  「ば……蛮ちゃん?」

		   流石の銀次の頬にも汗が伝う。

		   ものも言わず蛮は、銀次のジッパーを引きおろすと、既に勃ち上がっている
		  銀次のモノを取り出した。

		   そして。

		  「ふ……っあ、ア、んっ……ああぁっ」

		   自らの秘部に銀次をあてがい、そのまま身を沈めた。

		   自重により深く深く銀次を飲みこむ。

		   めちゃくちゃに腰を使って、薬によって目覚めさせられた欲望を満足させよ
		  うと喘ぐ。

		  「あっ、はぁ……ぎんっじィ……ひぁっ」

		   振り袖はまだ両袖に残ったままで、娼婦のように馬乗りになって。

		   純潔の象徴である振り袖を纏った蛮の狂態は、淫らで腐敗した美しさを散ら
		  していた。

		  「いっ……ぁ、ああああぁぁっ」

		   遂に絶頂を迎え、一際高い嬌声。
 
		   物凄い締め付けに、くらりとなるほどの快感。

		   そのまま持って行かれそうになる自分を懸命に制して、銀次は開放の甘い誘
		  惑に耐えた。

		   放出を追えた蛮は意識を朦朧とさせながら仰向けに倒れかける。

		   それを抱きとめておいて、軽く、蛮の頬を叩いた。

		  「ここまで挑発しといて自分だけ落ちちゃうなんてナシだよ」

		  「…………て、めっ」

		  「当分は、寝かせてあげないから、そこんとこよろしくねv」




		   結局、蛮が休息を手に入れたのは、この2時間後のことであったという。
 





		   翌日。

		  「ねー蛮ちゃん、士度になんか貰ってたよね?アレなんだったの?」

		   ベッドに突っ伏したまま動かない蛮へ。

		  「しらね。見てねーもん」

		  「あけてみたら?」

		   そんな動作すら億劫といった体で、蛮はのろのろと封を破った。

		  「……あンのやろ」

		   出てきたのは、『疲労回復』とでかでかと銘打たれた栄養ドリンクだった。
		
		  「あははは。士度芸が細かいねー」

		   なんだか無性に悔しくて、蛮は相棒を睨みつけた。

		  「てめー、その汚れちまった振り袖、自分で返しとけよ!」

		  「あ"っ!」





		   かくて、Get Backersの新しい一年が始まる。



		   ende









		  東京・裏新宿さまにてフリーになっていたSSですv咲様ありがとうございましたv
		  ……って、何時の話じゃ!?と激しくセルフ突っ込み。
		  配布されていたのは1月中ではなかったかと記憶しております。ええ。
		  今何月よ?ダメダメですな(泣)すみません(滝汗)
		  それはさておき(待て)、鬼畜銀次と麗しい蛮ちゃんがもうvこんな素敵なSSを
		  フリーにしてくださるとは!咲様はなんて太っ腹なんでしょう!(^^
		  銀次に跨る蛮ちゃんvにぎゃふん!ですv
		  咲様、ありがとうございましたv&遅くなってしまって申し訳ありませんでした(汗)