薄闇に浮かんだ白磁の肌。

		 滑らかなそれを、一筋の汗が伝った。

		 無意識のうちに寄せた唇。

		 口付けと共に拭ったそれは、なぜかひどく甘くて。

		 理由さえも分からず、ただ、甘露とはかくの如きかと漠然と思う。

		「は……ぁ………っ。」

		 零れ落ちた溜め息混じりの声さえ、甘く耳に響く。

		 今こうして抱いている存在の、何もかもが甘いと感じるとは。

		  他の誰との情交にも、このような思いを抱くことなどなかったのにと、
		思わず、小さな苦笑が洩れた。

		 求めるかのように伸ばされた手を引き寄せて己の首へと導けば、途端、
		縋るように腕を絡めてくる。

		「蛮……。」

		 耳元、低く囁きかければ、ひくりと震える体。

		 声に呼応し、ゆっくりと目を瞬かせた後、現れた紫紺の瞳。

		 快楽に潤み、更に色を増したそれ。

		 青とも紫ともつかぬ、神秘の煌きを帯びた唯一無二の宝玉。

		 それが、己の目を捉えた。

		「ぎ…んん…っっ。」

		 零れ落ちた名を口付けで遮って。

		「名など呼ばなくていい。」

		 ――――"それ"は、俺の名ではないのだから。

		 続くはずの言葉を、しかし今度は彼が遮った。

		 自分がしたのと同じ方法でもってして。

		「……なら…そんな暇、ないくらい…オメーに酔わせろよ……。」

		 離れていく紅い唇が、笑みと共に言葉を零した。

		 妖艶なる笑みに縁取られた紅い唇。

		 細められた瞳は、艶かしくも高貴さを失ってはおらず。

		 それ故にか、欲望がざわりと身の内に沸き立った。

		「その言葉、後悔するなよ?」

		「……させてみろよ。」

		 細い体をなおも引き寄せれば、誘うように嫣然と笑う。

		「おまえが望むなら。」

		 耳元、一言だけ低く囁いて。

		 後はもう、言葉など要らなかった。

		 互いに互いの体を、指で、唇でなぞり、口付けを繰り返す。

		 求め、求められるままに体を繋げ、思うまま快楽を貪って。

		 結合部からする濡れた音と、彼(か)の唇から零れ落ちる嬌声が、奇妙
		にも甘く淫らなメロディを奏でる。

		 それが、耳に心地いい。

		 己の首に縋る腕の強ささえも甘くて。

		 なぜだかひどく ――――― 胸が痛んだ。



		 一人の人間にここまで強く執着するこの感情を、他人(ひと)はなんと
		呼んでいるのか。

		 この感情を表現する言葉を、俺はまだ知らない。




		 THE END








		言わずと知れた、雷蛮。
		裏に置くのは相も変わらずぬるいので、表にUP。

		なんでか雷蛮のほうが、銀蛮より甘いよね?・・・なんでだろう?
		ま、いーや(おい)
		久々の更新が銀蛮のホワイトデーネタでなくてすみません(汗)
		そっちはまだ、書きかけ(汗)蛮ちゃんは未だ夢の中です・・・。
		頑張って書きます〜(泣)