JUNKY DANCE 「蛮ちゃんのうそつき!!」 「うるせー!悪かったって言ってんだろ!?テメーしつけーぞ!」 「嘘つき」呼ばわりする銀次に、蛮も負けじと怒鳴り返す。 さっきからこうして、二人は怒鳴り合っていた。 そもそもの始まりは8月の終わりにした約束。 そして「奪還料が入ったらホテルに行こう」というその約束を、その後奪還料 が入ったにもかかわらず蛮が反故にしたのが、このケンカの起こり。 そして今に至る。 「だって蛮ちゃん、俺、すっごく楽しみにしてたんだよ!?仕事終ったら蛮ちゃん とHできるって!だから仕事だってすっごい張り切ってやったのに!それなのに 結局させてくんなくて!蛮ちゃんのうそつきうそつきうそつき!!」 捲くし立てるように怒鳴った銀次に、蛮は思わず耳を塞いだ。 「だから!しょーがねーだろ!?波児に半分持ってかれて、いくらも残んなかっ たんだからよ!テメーのバカみてーに入る胃袋のお陰で食費だってばかになんねー し。んなことで使い切っちまうわけにはいかねーだろが!?」 約束を反故にしたことは棚に上げて正論を説く蛮に、銀次が頬を膨らませる。 蛮の言うことももっともだとは思うが、それでも、全てを理性で納得できるも のではない。 「そだけどさ〜……。でも、すっごく楽しみにしてたんだよ!?蛮ちゃんと久々 にHできる!って。」 「テメーにゃ羞恥心はねぇのか!?何度もんなこと大声で言うんじゃねぇ!」 いい加減頭にきていた蛮が銀次を殴りつけた。 殴られた箇所を押さえて蹲った銀次は、目に涙を浮かべて蛮を上目遣いに見た。 「殴ることないじゃん!暴力反対!」 「うるせー!男なら、いつまでも過ぎたことぐだぐだぬかしてんじゃねぇ!」 「そっちこそ!男なら約束守ってよ!」 「……分かってんよ!次には行くから!」 その言葉に、銀次は蛮を凝視した。 疑惑に満ち満ちた目を向ける銀次を、負けじと蛮も見返す。 「……絶対だよ?」 「ああ。」 「絶対絶対絶対だよ?」 「……オメーしつけーぞ……。」 しつこく確認してくる銀次に、蛮は思わず溜め息をついた。 「だって蛮ちゃん、はぐらかすの上手いんだもん。」 「嫌味かよ?そりゃ。」 「そーじゃないけど、でも、そうじゃん。」 「……わーった。今度金が入ったら、ホテルにも行くし、オメーの言うことも聞 いてやる。」 「え!?ホント!?」 溜め息混じりに蛮が洩らした言葉に、銀次が目を輝かす。 「絶対だよ!?今回みたいにおあずけはなしだからね!?」 「ああ。」 「ヤッター!vvvvv蛮ちゃん大好きvvvvvvvv」 途端抱きついてくる。それに、蛮はもう一つ大きな溜め息をついた。 「そーと決まったらボケっとなんかしてらんないよ!ビラ配んなきゃ!」 俄然やる気の銀次。 その豹変ぶりに、蛮は呆れたようにもう一つ大きな溜め息をついた。 『やる気んなってくれんのはいーんだけどよ。理由がな……。ったくしょーも ねぇ。』 もう一つ溜め息をついて、蛮は煙草を口に銜えた。そうして火を点けようとし たその時、不意に携帯が鳴った。 「はい。こちらGet Backers。」 (蛮くん?仕事頼みたいんだけど、すぐHONKY TONKに来てくれない?) 「……わーった。」 電話の向こうのヘブンの声に、思わず舌打ちしてしまう。まさか、こんなに良 い(?)タイミングで仕事の話が来るとは思っていなかったのだ。 「なになに?仕事?」 「……ああ。」 嬉々として尋ねてくる銀次に、蛮の表情は冴えなかった。 「ヘブンがHONKY TONKに来いとさ。」 「ヘブンさんが!?じゃ、急いで行かなきゃ!」 眉間に皺を寄せたまま、銜えた煙草に火を点ける蛮の腕を満面の笑顔の銀次が 引っ張る。 「おい、引っ張んなよ。」 「早く行かなきゃ!んでもって仕事が終ったら、ホテルだからね!」 笑顔でそう言い切った銀次に、蛮は思わず自分の運のなさを嘆かずにはいられ なかった。 今回の依頼はヘブンの持ってきたものにしては裏もなく、至極簡単な仕事だっ た。その分報酬は少なかったが、「骨折り損のくたびれもうけ」の常と違い、二 人の機嫌はかなり良かったと言えた。特に銀次の機嫌は、傍から見ても心配にな るくらい良かった。 「簡単な仕事で良かったねーvいつもこーだと楽でいいんだけどね。」 「まーな。」 依頼人に無事取り返したものを渡した二人は、とりあえず腹ごしらえをしよう とファミレスへと車を走らせていた。 「えへへ〜v」 食事の後のことを考えているのだろう。銀次の顔はさっきから緩みっぱなしだ。 それと対照的に、蛮の顔は強張っていた。動揺を隠すかのように、さっきから 忙しなく煙草を弄んでいる。 「……嬉しそうだな。」 あまりの上機嫌ぶりに思わず声をかけてしまったことを、蛮はすぐに後悔した。 「うんvだ〜って、食事が終ったら、蛮ちゃんとひっさびさにH出来るんだも んvvvも〜嬉しくって嬉しくってvvvそれに、今回は蛮ちゃん、俺の言うこ と聞いてくれるんだもんvvvあ〜んなことや、こ〜んなこともしてもらえるん だって思ったらもうvvvvvvv」 「…………………………………。」 今にも空に舞い上がりそうな銀次の喜びように、蛮の顔から血の気が引いてい く。 ホテルに行って一体何を要求されるのやら。考えただけで冷や汗が出る。 『ちくしょー……。まさか、こんなに早く仕事が来るなんて思ってもみなかった からな……。ばっくれる……わけにゃいかねーよな、さすがに。さっきの今だ もんな……。くそー……。』 なんとか回避できないかと、それこそ蛮は必死に考えた。 『なんかねぇか、なんか……。』 そうこうしている内に、最初の目的地、ファミレスに到着する。 「まずは腹ごしらえ〜vお腹がすいてちゃHはできないもんねv」 軽い足取りで店へと入っていった銀次の後姿を、蛮は暗い表情で見つめた。 『はぁー……。逃げてぇ……。』 思わずスバルに懐いて溜め息をついた蛮を、銀次が底抜けに明るい声で呼んだ。 「蛮ちゃん何してんのー?早くおいでよーv」 銀次の上機嫌ぶりに、ますます蛮の気は重くなる。 重い足取りで店へと入った蛮の目に、ふと店の時計が映った。 9:52――――。 時計の針はそう表示していた。 『10時ちょい前……か。…………ん?』 ふと、思いつく。 上手くいけば、最悪の事態だけは免れるかもしれない。 「遅いよ、蛮ちゃん。俺、もうなんにするか決めちゃったよ。」 先に席に着いていた銀次が、そう言いながら蛮にメニューを手渡す。それを受 け取りながら、蛮はその向かいにゆっくりと腰を下ろした。 「……銀次。」 「なに?」 「この、後のことな?」 「今更なしにしようなんてダメだからね!?絶対行くんだから!ホテル!」 思わず叫んだ銀次を殴りつけて黙らせる。 幸い、平日のためかそれほど客は居らず、そのため大して注目を集めずに済み、 蛮は胸を撫で下ろした。 銀次の頭を小突くと体を前屈みにし、蛮はひそひそと話し始めた。 「声がでけぇんだよ!……そうじゃなくて、行ってからその…。」 「行ってからって、蛮ちゃんが俺の言うことなんでも聞いてくれるってやつ?」 「……そう、それなんだけどよ……。」 「あ!まさか、それなかったことにしようとか言うんじゃ……。」 蛮の言葉に、銀次は疑惑に満ちた目を向けた。 「ちげーって。その、ちゃんと確認しとこうと思ってよ。」 「確認?」 「そう。言っとくが、今日だけ、だからな?」 「あー、そゆこと。うん、分かってるよ、今日だけだってのは。いつもだと嬉し いんだけどねv」 ヘラッと笑った銀次を反射的に殴りつける。 「痛いよ、蛮ちゃん。」 「うるせー!いーか?今日だけだかんな!?」 「は〜い……。」 蛮に睨まれ、銀次はそう素直に返事をした。 「ご注文はお決まりでしょうか?」 水とおしぼりを持ってきたウエイトレスが、それらをテーブルに置きながら声 をかけてきた。 「で?なんにすんだ?」 「えっとねー、ハンバーグと、海老グラタンと、このスパゲッティと、こっちの ミックスピザと、それから……。」 つらつらと注文していく銀次に、毎度のことながら呆れてしまう。注文を取っ ていたウエイトレスの笑みも、だんだん強張っていった。 「ご注文を繰り返します。ハンバーグと海老グラタン、きのことたらこのスパ ゲッティ、ミックスピザ……。」 注文を確認し終えたウエイトレスが、引き攣った笑みを浮かべ厨房へと下がる。 そうして20分後。 見ている方が胸焼けしそうな量の料理がテーブルにところ狭しと並べられ、 15分後にはそれら全てが綺麗に銀次の腹の中へと収められていた。 「は〜vお腹いっぱいで幸せ〜vvv」 助手席でぱんぱんに張った腹を摩っている銀次に、蛮は今日何度目かの溜め息 をついた。 「いつものことだが、ほんっと、よく食うよな……。」 「へへvだってこれから俺、頑張んなきゃなんないもんv」 『頑張んなくていい!!』 笑みと共に洩れた銀次の言葉に、蛮は思わずそう叫びそうになった。 「久しぶりだもんね〜vしかも!今日は蛮ちゃん、俺の言うことなんでも聞いて くれるしvえへへへへ〜v」 さっきから顔が緩みっぱなしの銀次。相当嬉しいらしい。が、銀次が喜べば喜 ぶほど、蛮の表情はどんどん暗くなっていった。 『……もうちょいで11時。これなら、なんとかなっか……。』 時計を横目で見ながら、手近にあったホテルに車を乗り入れる。 車のエンジンが止まるのももどかしげに飛び降りた銀次が、「早く、早く。」 と蛮の腕を引っ張って中へと入っていく。あまり少女趣味な部屋は蛮が嫌がるか ら、当たり障りのないのを選んで鍵を引っ掴むと、銀次はそれこそぐいぐいと蛮 の腕を引っ張って部屋へと移動した。 蛮を先に部屋へ入れて、後ろ手にドアを閉めると鍵をかける。その音に、蛮の 体が小さく揺れた。 「まずはお風呂入ろvもちろん一緒にねv」 「…………わーってるよ。」 「約束だもんねーv」と続けられ、仏頂面で答える。 嬉々として服を脱ぎ捨てた銀次が軽い足取りでバスルームへと向かう。その後 姿に溜め息をついて、半ばヤケクソで蛮も服を脱ぎ捨てた。 「蛮ちゃんこっちこっちv」 既に備え付けの椅子に腰を下ろしていた銀次が、手招きで蛮を呼ぶ。蛮はそれ にも一つ溜め息をつき、銀次の側に膝をついた。 「で?何しろってんだ?」 半ばヤケクソで訊いた蛮に、銀次が笑みを浮かべる。 「まずは、俺の体洗ってv蛮ちゃんの体は俺が後で洗ったげるからv」 「……………。」 何か言いたげな蛮の視線に、銀次が笑みを深めた。 「約束だよね?」 「分かってんよ!」 そう怒鳴って、蛮はスポンジを取ると、勢いに任せて大量のボディソープをそ れにかけた。 「スポンジじゃなくて、蛮ちゃんの手で洗ってよv」 不機嫌丸出しの顔でスポンジの泡を立てていた蛮の手が、その一言で止まる。 「………あ?」 思わず銀次を睨みつける。視線の先で、銀次が嬉しそうに笑みを浮かべていた。 「今日は俺の言うこと聞いてくれるんだよね?蛮ちゃんv」 「……………。」 銀次の勝ち誇ったような笑みに拳を握り締める。が、諦めたように立てた泡を 手で掬い取り、それを銀次の体に塗り始めた。 まず後ろから洗い始める。首筋から背中へ。一瞬爪を立ててやろうかと考えた が、銀次の「爪立てないでね?蛮ちゃんv」の一言に、小さく舌打ちして行為を 続けた。 「なんかさー、これって、ソープみたいだよね?行ったことないけどv」 『俺はソープ嬢か!?』 至極ご満悦な銀次の洩らした一言に、心の中でそう叫んで、蛮は拳を握り締め た。 あんな約束さえしていなければ、銀次の良いようになどさせておかないのに。 自分で蒔いた種とは言え、不用意な一言を、蛮は心底後悔していた。 「おら、手出せ。」 「はいv」 言われて素直に差し出した銀次のその腕を引っ掴み、肩から指先へと洗ってや る。それから胸へ。 股間を飛ばして足を洗い始めた蛮に、銀次が楽しそうに声をかけた。 「蛮ちゃん。ちゃんと前も洗ってよv」 「んなもん自分でやれ!!」 頬を真っ赤にして怒鳴る蛮に、銀次の笑みが深まる。 「約束だよね〜?」 「く……っっ!」 銀次の一言に唇を噛み締める。が、観念したように、それへと手を伸ばした。 眉間に皺、額に怒りマークを目一杯浮かべ、頬を朱に染めたまま、蛮は銀次自 身に手を這わせている。その柔らかな感触に、銀次がうっとりと目を閉じた。 「これが口だったらな〜v蛮ちゃん、してくんない?」 とんでもない一言に、蛮の眉間の皺と額の怒りマークが増える。 「………握り潰されてーんなら、遠慮なくそう言え。」 凄まじいまでの殺気を伴って言われ、剰え自身を握る指に力を込められて、銀 次は慌てて首を振った。 「え、遠慮します!」 「……ふん!」 込めていた力を解いてそれから手を離すと、シャワーヘッドを引っ掴んでお湯 を出す。 乱暴にお湯をかけられ、銀次が抗議の声を上げた。 「蛮ちゃん乱暴!」 「うっせぇ!!」 銀次の体についていた泡を完全に落としてからお湯を止める。 「これで満足かよ?」 睨むような目で見ながら問いかけてくる蛮に、銀次が嬉しそうに笑みを浮かべ た。 「うんvありがとv次は蛮ちゃんの番だよvはい、ここに座ってv」 そう言って場所を開けると、椅子に蛮を座らせる。そうして蛮がしたように、 銀次も手でボディソープを泡立て、それを体に塗り始めた。 「おい。俺は別に手じゃなくてい……っ。」 言いかけた言葉を、背をなぞるように滑る銀次の指に遮られる。 小さく震える体に、銀次が耳元に囁いた。 「気持ち良い?蛮ちゃんv」 弱い耳への刺激に蛮の肩が震える。それに、銀次の笑みが深まった。 「蛮ちゃん耳、弱いよね〜v」 「耳…元で、囁くな……っっんっ。」 不意に胸の突起を摘まれ、噛み殺したような声が洩れた。 「テメっ何して……っっ!」 「何って洗ってるんだよvそれだけなのに、感じる?」 揶揄するような銀次の言葉に、蛮の頬に朱が散る。 言いながらそれを指で弄くられ、蛮は唇を噛み締めて、ついて出そうになる声 を堪えた。 「ここは念入りに綺麗にしなくちゃねvね?蛮ちゃんv」 そう言って自身に触れてくる。 直接的な刺激に、蛮の体が大きく震えた。 「バっっそ、こは…自分です……っ!」 「遠慮なんてしなくていーってv」 嬉々としてそれに指を這わす銀次。 洗うと言うには程遠い手の動きに、蛮の息が乱れ始める。それでもついて出そ うになる喘ぎを、蛮は懸命に堪えていた。 「あ、俺のは念入りに洗ってないよなぁ……。蛮ちゃんの中で洗えばいっかv」 そう言って腰を抱き椅子をどかすと、自分の膝の上に座らせる。そうしてボ ディソープに手を伸ばす銀次に、蛮が目を見開いた。 「テメ、何言って……っアッ!」 秘所に触れる指に、堪え切れなかった声が零れ落ちた。それが狭い浴室に響く。 思わず洩らした喘ぎのその反響に、蛮は頬を赤らめて唇を噛み締めた。 「蛮ちゃ〜ん。声、聞かせてよ。ね?」 言いながら蛮自身への愛撫を淫らにしていく。 その刺激に体を震わせながら、それでも蛮は懸命に声を噛み殺した。 「ふーんだ。いーもんね。」 両手で口を塞いであくまで声を上げまいとする蛮に、銀次の嗜虐心が頭を擡げ る。 手に取ったボディソープを泡立てると、それを蛮の秘所に塗り込めた。そうし てそのまま指を滑り込ませる。 「……っ!」 泡と共に挿し込まれた指の感触に体が震える。 「ここも綺麗にしないとねv」 楽しそうな銀次の声に、蛮はぎりりと唇を噛んだ。 緩やかに抜き差しされ、堪えようもない快楽が蛮を苛む。指が弱いところを掠 める度に湧き上がる疼きに押さえ切れず、くぐもった嬌声が洩れた。 「蛮ちゃ〜ん。いい加減声、聞かせてよ?」 強情にも喘ぎを堪える蛮に、銀次が情けない声を出す。それに、蛮は何度も首 を振った。 「……いいよ。蛮ちゃんがその気なら、俺にも考えがあるもんね。」 そう言って指を引き抜く。 「そもそもこの手がいけないんだよね?」 耳元に囁きかけて、口を塞ぐ手を外してしまう。そうして蛮が抵抗するよりも 早く、左手は背中で固定し、右手は自分の手を添えて秘所へと導いた。 「ぎ、銀次……っっ!?テメっ何す……っ!?」 秘所に触れる自分の指の感触に、蛮が気色ばむ。が、銀次はそれを無視し、自 分の指を添えるとそのままそこへ挿し入れた。 「…………ッ!」 刺激に体が大きく震える。 「……っぁ……っっ。」 「感じる?」 楽しそうな銀次の声音に、蛮は唇を噛み締めて銀次を睨み付けた。 「テ…メ……っ何…考えて……っっ!?」 紫紺の瞳が恥辱に、まるで燃えているように見える。 その色が、銀次の嗜虐心を更に煽り立てた。 「たまにはこーいうのも良いでしょ?自分の中の熱さを感じられて。」 本気とも冗談ともつかない言葉に、蛮の頬に朱が散った。 「ふざけ……っ!あ…っっ!」 蛮の抗議も聞く耳持たず、銀次はもう一本挿し込み、そのまま指を蠢かせた。 「や…め…っ!ぎんっや……ぁっ!」 途端体が跳ねる。 銀次の指が蠢く度に、蛮の指も自然とそれに巻き込まれる。それによって否応 なしに感じることになる自分の中の熱さに、羞恥に、蛮の肌が淡く染まった。 「どう?感じる?蛮ちゃん?」 耳元の囁きに、恥辱のためか、蛮の目から涙が零れ落ちた。 「泣かないでよ、蛮ちゃん。」 動きを止め、銀次が困ったように蛮の頬に口付けた。 「…っるせ……っっ!」 「俺の言うこと聞いてくれる約束でしょ?これは俺が望んだことなんだよ?だか ら蛮ちゃんが気にすることなんかないんだから。ね?」 「そ…ゆ、問題じゃ…ね……っんっ!」 不意に秘所を甘く犯していた指が引き抜かれた。それに、蛮の口から安堵の溜 め息が洩れる。 「泣くのは反則だよ、蛮ちゃん……。」 「うるせ……っ!テメー…が変なこと、すっから……っ…っ!?」 言いかけて、秘所にあてがわれたものの熱さに体が強張る。 「ぎ、銀次っ!?」 「指が嫌なら、今度は俺の熱さを感じてね?」 「ちょ、ま、待てっ!ぎんっ!あ、ああぁ……っ!!」 思わず逃げを打つ腰を押さえ付け、ゆっくりと突き刺していく。全長を埋めた ところで、銀次は一度息をついた。 「久しぶりだから、無茶しちゃったらごめん。」 耳元に囁かれた言葉に、蛮は目を見開いた。 「なっ!?ふ、ふざけ……っア…ッ!」 堪え切れず上がった嬌声が浴室内に反響する。両手の自由を奪われている蛮に は、それを羞恥しても、止める手立てはなかった。 蛮の口から零れ落ちる嬌声が甘く響く。結合部からする濡れた音もまた、同様 に反響して、それらが二人の情欲を煽り立てる。 「も……っぎ…んじ……っっ!」 「蛮ちゃ……っく……っ!」 限界を訴える蛮を強く抱き締めて、達するために最奥を刺激する。 一瞬硬直し、次いで弛緩する体。 くず折れかけた体を抱き起こして、思いの丈を知らしめるかのように蛮の中へ と全てを放った。 中でじわりと広がる精に、蛮が小さく体を震わせる。 乱れた呼吸を繰り返す蛮を抱き締めて、銀次は暫くの間余韻に浸っていた。 「やっぱ蛮ちゃん最高v気持ち良かったーvvv蛮ちゃんも、でしょ?」 嬉々として訊いてくる銀次に、蛮の頬が朱に染まる。これでは「はい、そうで す。」と言っているようなものだ。 それに、銀次の笑みが更に深まる。 「えへへvじゃ、次はベッドでしようねv」 銀次は嬉しそうに頬に口付けて、蛮が何か言うより早く、埋めたままだった自 身を抜き取った。 その刺激に、蛮が小さく反応する。 「っと、その前に、泡落とさなきゃね。」 思い出したように呟いて、シャワーヘッドに手を伸ばした。 激しい行為に、体についていた泡は半ば以上落ちていたが、僅かに残っていた のを綺麗に流す。温かなお湯が気持ち良いのか、蛮は目を細めて、銀次にされる ままおとなしくしていた。 「さ、蛮ちゃんvベッド行こv」 お湯を止め、にっこりと笑いかける。そうしてタオルを取るとそれを蛮の体に かけ、そのまま横抱きに抱き上げた。 「バ…ッ!?降ろせ!自分で歩ける!!」 頬を真っ赤にしてじたばたともがく蛮に、銀次の笑みが深くなる。 「遠慮なんてしなくていいよ、蛮ちゃんvそれより、あんま暴れると落ちるよ?」 そう言ってわざと片手を離す。反射的に銀次にしがみ付いた蛮の姿に、銀次が 嬉しそうに笑った。 「その調子v」 「〜〜〜〜〜〜っっっ!!」 思わず曝してしまった醜態に言葉も出ない。 蛮は耳まで赤くして、銀次を睨み付けた。 「だから蛮ちゃん。その目は反則だって。」 蛮の視線を受け止め苦笑する銀次に、蛮が首を傾げた。 「あ?」 「色っぽ過ぎだよ、その目。すっごいそそられる。」 「な…っ何言ってやがる!?んなわけあるか!!眼科行け!眼科!!」 途端真っ赤になって激昂する蛮に、銀次は苦笑を禁じえなかった。 「分かってないのは蛮ちゃんだけだよ。ホント、無自覚なんだから。困るよ な〜。」 溜め息混じりに、グチにもとれる言葉を呟く。 「なんだそりゃ!?テメ…うわっ!」 喚く蛮を少々乱暴にベッドに降ろす。 上体を起こそうとするのを押さえ付け、あっさりと組み敷いた。そうして両足 をさっさと肩に担ぎ上げてしまう。 「銀次!ちょ、離せ!」 「ダメだよ?蛮ちゃん。忘れちゃった?今日は俺の言うことなんでも聞くって約 束したでしょ?それまだ聞いてもらってないんだから、ね?」 「ふざけんな!さっきバスルームで聞いた……あ、やっ銀次っっ!」 秘所に触れる銀次のものの熱さに、思わず腰が逃げを打つ。が、銀次がそれを 許すはずもない。しっかりと腰を押さえ付ける。 「あんなんじゃまだ足んないよ。でもとりあえずはもう一回、しよv」 「ふ、ふざけ…っあ――――っっ!」 問答無用で押し入ってくる欲望のその熱さに、蛮の体がしなやかに仰け反った。 半ばまで入れ、そこで浅く抜き差しを繰り返す。敏感な入り口付近を刺激され、 蛮は背を弓反らせ、嬌声を上げた。 「う、あ…っあぁ…っ!」 堪えることも出来ずに洩れる嬌声。縋りつくように首に回された腕。快楽に立 てられる爪の痛み。甘く零れ落ちる己が名。そして潤んだ紫紺の瞳―――――。 蛮のその何もかもが銀次を煽り立てて止まない。 枯れることなく湧き上がる情欲に身を委ね、銀次は腰の律動を徐々に激しくし ていった。 「蛮ちゃん…大好き…大好きだよ……。」 「あ…んっ!ぎ…んじ……っっ!」 そうして、二人はほぼ同時に二度目の絶頂を迎えた。 「はぁ……。」 うっとりと溜め息をつき、蛮を抱き締める。涙の残る目元に口付ければ、蛮が ゆっくりと目を開けた。 「蛮ちゃん可愛いv」 笑ってそう告げれば、途端殴られた。 「痛いよ、蛮ちゃん。」 「五月蝿い!」 殴られた箇所を摩りながらも、頬を朱に染めて怒る蛮も可愛いと思ったが、口 には出さなかった。 不意に、繋がったまま、銀次がにっこりと笑いかけた。 「でね、蛮ちゃんv」 「……何だよ?」 睨むような視線を向ける蛮を気に留めず、銀次は嬉しそうに蛮への"お願い"を 口にし始めた。 「蛮ちゃんにしてもらいたいことなんだけど、まずね、一人Hv」 晴れやかな笑顔に似合わない一言に、蛮の目が点になる。 「・・・・・・・・・あ?」 長い間を置いて、ようやく蛮の口から洩れたのはその一言だけだった。 「蛮ちゃんがね、自分で自分を慰めてるとこ、見てみたいんだv俺。へへv想像 しただけでぞくぞくするvまずそれが一つねv」 蛮の反応は無視し、銀次はそう言って嬉しそうに笑みを浮かべた。 「それから、俺を誘う蛮ちゃんでしょv体位は…時雨茶臼がいーかな?やっぱv で、蛮ちゃんに腰動かしてもらいたくてーv俺が、じゃなくて、蛮ちゃんが自分 で俺のこと受け入れてくれるのも見たいしvあ、また69もしたいなーv蛮ちゃん にキスマーク付けてもらうとかーvそれから……vvv」 つらつらと"して欲しいこと"を並べ立てる銀次。 蛮は言葉もなく、ただ口をあんぐりと開けて、そんな銀次を呆然と見ていた。 銀次が5分ほども際限ない欲望(蛮談)を並べ立てる内、ようやく自失状態か ら立ち直った蛮が、眉間に皺、額に青筋を立てて震える拳を握り締めた。 「で、これが一番大事なんだけど…。」 『まだあんのかよ!?』 思わず心の中で叫んだ蛮の目が、次の瞬間軽く見開かれた。そうして困惑した ように心持ち伏せられる。 「蛮ちゃんに俺のことどう思ってるか、ちゃんと言葉にしてもらいたい。」 視線を逸らしてしまった蛮を、銀次は真っ直ぐに見つめた。 「はぐらかさないで、ちゃんと言って欲しいよ、俺。蛮ちゃんに。」 「………銀次。」 「分かってるけどね。蛮ちゃんが俺のこと、好きだってことは。でも、やっぱり 一度くらいは言葉にして欲しいんだよ。」 銀次の言葉に、蛮はただ黙っていた。そんな蛮を、銀次も無言で見つめた。 暫しの沈黙が流れる。 不意に、銀次が苦笑した。 「でもそれは最後でいいからさ。とりあえず、さっき言ったの一つずつ叶えて ねv」 そうしてにっこりと笑う銀次に、蛮の顔から血の気が引く。 『何考えてやがんだっ!?このバカ!』 笑みを浮かべている銀次を睨みつけて、蛮はベッドの脇に置いてあった時計に 視線を向けた。 0:03―――。 そのデジタル表示に、蛮の口元に笑みが浮かんだ。 それに気付いた銀次が首を傾げる。 「蛮ちゃん?」 「悪ぃが銀次。ショータイムは終わりだ。」 そう言って不敵に笑う蛮に、銀次の頭上に"?マーク"が浮かぶ。 「どー言う意味?」 「おら、その時計見てみろよ?」 言われて備え付けの時計に目を向ける。が、訳が分からず、銀次はますます首 を傾げた。 「何時んなってる?」 「0:03。それが?」 「ってこたぁ、日付が変わったってことだよな?」 「うん。」 「言ったろ?"今日だけは言うこと聞いてやる"って。オメーも頷いたろ?」 「うん。そーだけど……。って、ああ!?」 突然、何かに気がついたように銀次が叫んだ。 「ば、ば、蛮ちゃんっっっっ!」 「よーやく分かったかよ?鈍い奴だな。」 言葉もなく口をぱくぱくさせている銀次に、蛮の笑みが深まる。それはまるで 勝ち誇ったような笑みだった。 「言ってた"今日"はもう昨日ってことだよ。これでオメーのバカな頼み、聞かな くていいってこった。残念だったな?銀次くん?」 至極満足そうな笑みに、残念だなどとそんなこと、全然全く、それこそこれっ ぽっちも思っていないことが分かる。 それに、銀次は蛮に恨めしげな目を向けた。 「……初めっからその気だったんだ……?」 「あったりめーだろ!?しかもテメー、俺に何させる気だった!?ふざけやがっ て!そんでもバスルームじゃ、テメーの言うこと聞いてやったんだ!ありがたく 思え!!」 睨まれて、剰えそう怒鳴られても、銀次が納得するはずない。銀次の蛮を見つ める目が、徐々に不穏なものになっていく。 「そーいうこと言うんだ……ふーん……。」 「……んだよ?文句あんのか?」 銀次の気に不穏なものを感じ、蛮の口調が幾分弱くなる。それに、銀次はにっ こりと笑いかけた。 「俺の純情踏み躙ったんだもん。覚悟は出来てるよねぇ?蛮ちゃんv」 にっこりと笑った銀次の、しかしその目は完全に据わっていた。 受け入れたままだった銀次の熱が急速に硬度を取り戻すに至り、蛮は自身の置 かれている現状をようやく思い出した。 「お、おい…銀次……?え…ちょっと……わっ!バカやめ……っっ! あぁ…っっ!!」 ぎりぎりまで抜かれたそれが、再度突き立てられる。その衝撃に、蛮は嬌声を 上げ仰け反った。 「今夜は絶対寝かさないから、覚悟してねv蛮ちゃんv」 「な…っ!?ぎ、ぎんっアッ!やっあ………っっっ!」 否を許さない銀次に、蛮の口から堪え切れない嬌声が零れ落ちる。 そうして、それは銀次の言葉通り、明け方まで続いた。 THE END はい。これが言っていた既にUP済みの「夢中」の続編です。 とは言え、別に単体でも読める代物となっておりますので、その辺はまあ、 お気になさらずに(^^; しかし、銀次よ・・・;;; 書いてて「おい(怒)」と思ったのは言うまでもありません(苦笑)(← 書いてるおまえが「おい(怒)」だろ;) さて、この場合、どちらが勝った(?)ことになるんでしょうかね? ・・・う〜ん・・・痛みわけ?(苦笑)