FRUSTRATION




		 夏は誘惑がいっぱいです。

		 なぜって、そりゃもちろん、暑いからに決まってます。

		 連日の暑さに、俺の愛しの蛮ちゃんは、

		「暑い!」

		 と言ってタンクトップ一枚になり、それでなくても煽られてる俺の劣情を、
		更に煽ってくれます。

		 それも自覚なしで(泣)

		 はう〜(泣)

		 そりゃ、昨日は唯一公認(←違う)でHが出来る日だったから、思う存分
		蛮ちゃんを堪能できたけど、でも、だからこそ、感触とか、そういったもの
		が新しくて、こう、なんつうか、想像がリアルになるから困るんだよね。

		 ……いや、今日に限ったことじゃないんだけど(汗)

		 蛮ちゃんと一つになった時の熱さだとか、気持ち良さだとか、潤んだ瞳と
		か、上がる声の響きだとか、もう、頭の中に、想像てんこ盛り!

		 調子に乗って付けた跡が白い肌に散ってるのがまた、Hくさくて……。

		 どうにもこうにも、体が熱くなる。

		 ……も少し、やらせてくれてもいいと思うんだけどなぁ……。

		 思いはそれでも声には出さず、代わりに小さく溜め息をついた。

		 ホントに、俺、よく我慢してるよね?四六時中側にいて、誘惑されまくっ
		てて、しかも手を伸ばせば簡単に触れることが出来て、望めば手に入りそう
		な距離にいるのに、月にたった一度の行為で我慢してるんだもん!

		 だからその日はタガが外れちゃっても、仕方ないと思わない!?

		 何度だって触れていたい、蛮ちゃんを感じていたい、そういつも思って
		るんだもん。それが叶う唯一の日なんだから、片時だって蛮ちゃんを離した
		くないって思うのは、当たり前だよね?

		 ……それでいつも、蛮ちゃんには無理させちゃうんだけど……(汗)

		 でも、昨日はホント、気持ち良かったなぁvvv

		 俺を呼ぶ蛮ちゃんの、快楽に上擦った声がまた堪んなくてvvv

		 縋り付いてくる腕の強さだとか、薄く桜色に染まった肌だとか、ひくつく
		内の熱さだとか、潤んだ瞳だとか、俺を締め付けてくる内壁だとか、もう、
		何もかも気持ち良くて、何度も体を重ねた。それこそ食べることも忘れて。
	

		 昨日のことをまざまざと思い出して、体の熱が一気に上昇する。それだけ
		じゃなく、当然の反応だけど、俺自身も熱を持ってしまって苦しくなってく
		る。

		『……ど、どうしよう……(滝汗)』

		 焦る心とは裏腹に熱はどんどん高まって、二進も三進も行かない状況に
		なってしまった。

		『あう〜(滝汗)蛮ちゃんごめん!!』

		 心の中で謝って、内からの衝動に蛮ちゃんを押し倒す。瞬間、驚きに半ば
		見開かれた瞳と視線が重なった。

		 予期していなかった行動に虚をつかれたのか、蛮ちゃんの反応は鈍かった。

		 それをいいことに、どんどん行為を進めていく。

		 首筋に口付けながら、タンクトップをたくし上げ胸の飾りを摘む。と同時
		にベルトを外し、とっとと前を寛げてしまう。

		 とにかく抵抗する間を与えず、性急にことを進めていった。

		「なっ!?銀次!?何……っ!?」

		 さすがに俺が何をしようとしているのか理解したのか、蛮ちゃんは慌てて
		抵抗し始めた。けど、滑り込ませた指で蛮ちゃん自身を愛撫し始めれば、途
		端抵抗とは違う反応が返ってくる。

		「テ…メ……っ何処触って……っんっ!」

		 抗議の言葉を口付けで遮る。

		 とにかく早く一つになってしまいたくて、それへの愛撫もそこそこに下着
		ごとズボンを脱がすと、秘所に舌を這わせた。

		「ひゃ…ぁ……っ!」

		 そのままゆっくりと舐め上げれば、びくんと体が跳ね上がる。

		 引き剥がそうとかけられた手を気にせず、なおもそこを舐め、指を滑り込
		ませた。半ば無理矢理入れたにもかかわらず、そこは甘く絡み付いて、更に
		奥へと誘い込む。それに気を良くした俺は、指を増やし、入り口を解すよう
		に掻き回した。

		「……蛮ちゃん……好きだよ……大好き…。」

		 耳元に囁いて、指を引き抜き自身を宛がう。途端びくりと震える体が愛し
		くて仕方なかった。

		「ま…やめ……っあぁっ!」

		 制止の声を無視し、奥まで一気に押し込む。多少の抵抗はあったが、それ
		でも蛮ちゃんは俺を全て受け入れてくれた。

		 全長を埋め、一呼吸置いてから律動を開始する。

		「あ、あっ…や、ぎん…っ……ぁっっ!」

		 突き上げ、揺さぶり、思うまま快楽を貪る。

		 強い刺激が堪らないのか、蛮ちゃんは俺にしがみ付いて嬌声を上げ続けた。

		「は…ぁ……あ……っ!」

		 一瞬の硬直。次いで訪れる解放。

		 絶頂を迎えた蛮ちゃんに促され、俺も蛮ちゃんの中へと思いを解き放った。

		「は……ぁ……。」

		 ぐったりと、蛮ちゃんは俺にもたれかかって荒い呼吸を繰り返している。
		そんな蛮ちゃんをぎゅっと抱き締めて、髪に指を滑らせた。

		「蛮ちゃん……ごめん……俺、どうしても我慢が利かなくて……。」

		 呟くように告げた謝罪の言葉に、蛮ちゃんはゆっくりと顔を上げた。

		「……ったく、しょうがねぇな……。」

		 怒鳴られるかと思いきや、暗に反し、蛮ちゃんは俺の頭を軽く小突き苦笑
		しただけだった。

		「怒って…ないの……?」

		「……わけじゃねぇけどな。ま、今日は許してやるよ。」

		 そう言ってもう一度俺を小突く。

		「蛮ちゃん……v」

		 嬉しくて口付けようとした時、




		「ジャスト1分だ。」




		 声と共に、無情にも世界は一変した。




		「…………………え?」

		 俺は助手席に座ったまま。着衣の乱れなんかこれっぽっちもない。もち
		ろん蛮ちゃんもそう。煙草を咥えた唇にはシニカルな笑みが浮かんでいて、
		紫紺の瞳が俺をじっと見つめている。

		「夢は見れたかよ?銀次。」

		 口元を歪めたまま、蛮ちゃんは静かにそう言った。

		「……………え?って、今の、邪眼………?」

		「そ。今のは俺が見せた幻。楽しかったか?銀次くん?」

		 邪眼……?え?うそ、蛮ちゃん俺に邪眼かけたの!?

		「な、なんで!?」

		 まさか蛮ちゃんが俺に邪眼をかけるなんて思ってもみなかったから、上げ
		た声は半分ほど裏返っていた。

		「なんでだと……?」

		 俺の疑問に、蛮ちゃんの表情が一変する。

		 細めた目が鋭く俺を見据え、声も、心なしか低くなったような気がした。

		「昨日散々やったってのにまだやり足りねぇ精力バカにゃ付き合いきれねぇ
		からに決まってんだろうが!」

		 そう一気に捲くし立てると、蛮ちゃんは俺を車外に蹴り出した。

		「いってーっ!」

		 受身も取れず頭を打った俺は、ぶつけた箇所を押さえてその場に蹲った。

		「ったく。頭冷やせ!このバカ!」

		 怒声が降り注ぐのと扉が閉まるのは、ほぼ同時だった。

		「え!?ば、蛮ちゃん!?」

		 扉の閉まるバタンと言う音に次いで聞こえてきたエンジン音。俺の目の前、
		無情にもてんとう虫くん(スバル)は走り去っていった。

		「ちょ、待ってよ!蛮ちゃん!蛮ちゃ〜ん!!」

		 俺の叫びも空しく、小さくなっていくてんとう虫くん(スバル)。後に一
		人残された俺は、蛮ちゃんを追いかけることも出来ず、暫くそこに座り込ん
		でいた。

		「蛮ちゃ〜ん……。」

		 引き返してこないかと暫く座り込んでいたが一向に返ってくる気配は見え
		ず、仕方なく重い腰を上げると、俺はよろよろと歩き出した。噴水へと向
		かって。

		 噴水へ辿り着いた俺は服のまま入り込み、流れ落ちる水を頭から被って火
		照った体を冷まそうと努力する。浴びるうち体の熱は引いていったけれど、
		肝心の下半身の熱はなかなか冷めそうもなかった。

		「はぁ……。」

		 知らず零れ落ちる溜め息。




		 熱い夜は、今日もまた、訪れる。






		THE END










		「息抜き」と称してうっかり書き上げてしまった銀蛮(笑)UPは10月に
		なってから、と思っていたんですが、それじゃあまりに時季を逸してしまう
		と、急遽UP(苦笑)←勉強しろよ!私!・・・全くな。
		さて。
		あまりやらせてもらえないうちの銀次くん。四六時中一緒に居るから、余計
		大変だぁね。と、人事のような発言をしてみたり。ま、他所様のところは幸
		せだからいっか。(おい)
		たまにはこんなオチもOKかなと思うんですが、どうなんでしょ?
		ちなみに、時間としては午前中、です。しかもスバルの中!
		・・・銀次よ・・・;
		狭いよなぁ、スバルの中は。しかも朝っぱらからとなれば、蛮ちゃんが嫌が
		るのも至極当然と言うことで。邪眼かけられちゃっても無理ないよな〜。
		なお、走り去る車の中、蛮ちゃんが頬を赤らめていたのは言うまでもありま
		せん(笑)