COLD2



		「38.8℃か。あの程度のことで熱を出すとは、案外柔な体だ。」

		「うるせー!特異体質のテメーと一緒にすんな!」

		 そのバカにするかのような言葉に、俺は思わず叫んでいた。

		 大体このクソ寒い中、服のまま寒中水泳をさせられた上、そのままの格好
		で数時間、寒空の下にいさせられれば風邪を引くのも至極当然のことで、寧
		ろ、風邪を引くどころかピンシャンしているそっちのほうがどうかしてると
		いうものだ。

		 尤も、こいつはどんな大ケガだって電気さえあれば回復するんだから、そん
		な特異体質と比べられること事態間違っているのだが。

		「大体、こうなったのもテメーのせいだろうが!分かってんのか!?」

		「俺ではなく、『銀次』のせいだろう?」

		「どっちでも一緒だ!責任取りやがれ!」

		 『雷帝』からしてみれば、『銀次』のドジを自分のせいにされては不本意
		極まりないことかもしれない。が、俺にとっては『雷帝』だろうと『銀次』
		だろうとおんなじことで、しかも、当事者である『銀次』の意識がここにな
		い今、責任を取れるのは目の前に居る『雷帝』だけ。だから、俺の主張は間
		違ってない!

		「………分かった。責任を取ろう。」

		 俺の言葉に納得がいかない、という顔をしていた『雷帝』は、しかし、何
		を思ったかそう答えると、ゆっくりとした動作で俺の上に覆い被さってきた。

		「……何の真似だ?」

		「花月が言っていたが、熱のある時は汗をかくのが一番いいのだろう?だか
		ら、早く治すために俺が協力してやる。」

		 そう言って、『雷帝』は俺のシャツのボタンを外し始めた。

		「ちょっ、待て!テメ、病人になんてことするつもりだ!?」

		 『雷帝』の言葉と行動に、何をしようとしているのか容易に想像がついた。

		 確かに、汗をたくさんかいて熱を下げるという考えは理に叶っている。決
		して間違っていない。が、体力の落ちている今、そんな無体をされては体が
		もたない。ヘタをすれば、今より病状は悪化するだろう。てか、病人相手に
		そういうことするか!?普通!

		 慌てて抵抗を試みるが、それもあっさりと封じられてしまう。

		「心配するな。病人のおまえに動けなどどと無体は言わん。おまえはただ、
		寝ていればいい。」

		「そういう問題じゃ……っ!うあ…っ!」

		 人のことを気遣っているのかいないのか、どうにも判断つきにくい言葉に
		呆れずにはいられない。ただ分かっているのは、『雷帝』にこの行為を止め
		る気はさらさらないということだけだった。

		 そうこうしているうちにもベルトは引き抜かれ、ズボンの前は寛げられて
		しまった。

		「……っ…あ……っんく…っ。」

		 手際の良さに慌てるも、熱に浮かされた体は思うように動かず、不埒にも
		自身に触れてくる指に反応してしまう。

		 俺のその反応を確かめるかのようにゆっくりと動く指に、不本意ながらも
		徐々に呼吸が浅くなる。

		 そのせいで半ば酸欠状態になっているせいか、それとも風邪による熱のせ
		いか、頭の芯が痺れてぼうっとしてくる。

		 そのせいでまともな判断が出来なくなっているのだろう。きっとそうだ。
		でなければ、自分の思いに説明が、いや、納得が出来ない。

		 悪化するかもしれないと分かっているのに、早く彼が欲しいと思うなんて。

		「雷……帝……っ。」

		 腕を上げるのは億劫だったが、それでもなんとか『雷帝』の首に腕を絡め
		る。名を呼べば、触れるだけの口付けを何度もしてきた。

		「は…ぁ……っふ……っ。」

		 洩れる吐息もやけに熱くて。霞みそうになる意識に、俺は『雷帝』にしが
		み付いた。

		 『雷帝』のいつもより乱れた呼気に、無意識に喉を鳴らしてしまう。『雷
		帝』が自分に欲情しているのだということが、何故だかひどく嬉しかった。

		 自身に触れる指はそのままに、もう一方の指を秘所に宛がうと、『雷帝』
		はそれをゆっくりと挿入させた。

		「んぁ……っっ。」

		 拒むことなく受け入れるそこに、指が根元まで埋め込まれる。

		「…熱いな……。」

		 耳元、呟かれた言葉も熱を孕んでいて。

		 少しだけ冷えた彼の指と、自分の身の内の熱さとのギャップに目眩がしそ
		うだ。

		「ん……っあく……ぅ……っ。」

		 差し込まれた指が、緩やかに蠢きだす。狭いそこを馴染ませるように動く
		それに、上がる嬌声を止めることが出来ない。

		 『雷帝』の為すがままだ。

		 そこを解していた指が不意に引き抜かれ、体を更に引き寄せられる。

		「蛮……。」

		 呼び掛けに閉じていた目を開ければ、目の前に『雷帝』の顔。

		 欲に、金色(こんじき)に燃える瞳とかち合った。

		 意志の強さと、そしてどこか脆さを感じさせるそれ。

		 魅せられたように呆然と、俺は『雷帝』の瞳を見つめた。

		「……何を、笑っている?」

		 知らず笑みが浮かんでいたのか、少しだけ不機嫌そうな『雷帝』の声。

		 それに、俺は微笑を浮かべた。

		「…ああ、綺麗な色だよな。オメーの目、嫌いじゃないぜ。」

		 『雷帝』は、俺の言葉に驚いたような顔をした。次いで、『何を言ってい
		るんだ?』と問いたげな表情をして見せる。

		「綺麗というのはおまえの目のことだろう。」

		「俺の目が?『邪眼』なのに?」

		「そんなことは関係ない。俺はおまえの目を気に入っている。」

		「……銀次といいオメーといい、物好きだよな……。」

		 苦笑した俺の口を、『雷帝』は口付けで塞いだ。

		「おしゃべりはここまでだ。……蛮。」

		 どこか厳かにそう宣言され、秘所に怒張したそれを宛がわれる。次いで来
		るであろう衝撃に、俺は『雷帝』にしがみ付いた。

		「あ…あぁ………っ!」

		 ゆっくりと押し入ってくるそれ。

		 根元まで差し込まれたそれは、ひどく熱く感じられた。

		「あ……う……んあ…っ!」

		 息つく暇もなく体を揺さぶられる。何度も抜き差しされるそれに、秘所か
		らは湿った音が響く。

		 どうしてだろう。無体なことをされているはずなのに、それでも許せてし
		まえるのは。

		 考えても答えが出るはずもなく。

		 きっとこの熱のせいだと、俺は自分の不可解な感情に目を閉じることにし
		た。

		 病人相手だというのに『雷帝』の行為に容赦はなく、そうして俺はただ嬌
		声を上げ、その行為の全てを受け入れた。



 
		「……39.2℃?何故さっきより上がるんだ?」

		「…………あたりめぇだ…バカ………。」

		 結局、さっきよりも高い数値を表示する体温計に、『雷帝』は首を傾げ、
		俺は更にだるくなった体に思い切り溜め息をついた。




		THE END








		サイト開設一周年記念SS、第2弾の雷蛮です。
		雷蛮は裏行きってところがなんとも言えず、苦笑を誘います(笑)
		しかも甘いし(笑)
		銀次相手じゃ、こうはあっさりやらせてもらえないですよ。ねぇ?
		(←誰に訊いてるんだか;)
		ま、もともとうちの雷蛮は甘いので、ご容赦ください(^^;)