密室



		「あんたが美堂 蛮?」

		 乱暴に放り込まれた座敷牢で、この時代珍しい金髪の少年が声をかけてきた。

		「……だったら?」

		 憮然と答えた蛮と言う少年に、金髪の少年は何やら楽しそうに笑みを浮かべた。

		「ふーん。どんな奴かと思ってたけど、ずいぶん華奢だね。」

		 そう言って、値踏みするように全身を見る。何が楽しいのか笑みを浮かべたま
		まで。

		「…んだよ?気色悪ぃな。テメー誰だよ?」

		「ん?俺?俺は銀次。天野 銀次。」

		「……テメーが?」

		 驚きの色を含んだ声に、銀次と名乗る少年は笑みを深めた。

		「あれ?知ってるの?」

		「銀次さんの名は外でも有名ですから。」

		 少女のような容姿をした青年が脇から口を出した。それに、彼らの傍らに居た
		数人が青年の言葉を肯定するように頷いた。

		「カヅっちゃん。それってどういう意味?」

		「意味も何も、事実を言ったまでですよ。」

		「"雷帝"ってあんたのことだろ?」

		 蛮の言葉に、銀次はただ笑みを浮かべただけだった。が、蛮はそれを肯定と取
		り、銀次の後ろに控えている数人の人物を見た。

		「ってこたぁ、そっちのはVOLTSの四天王の3人か。」

		「へぇ。よく知ってるね。紹介したほうが良いかと思ってたんだけど。」

		「いらねぇよ。そっちから"絃の花月"、"ビーストマスター冬木 士度"、
		"MAKUBEX"だろ?そっちの奴は知らねぇけどな。」

		 一番端に居た男を指差して、蛮はそう言った。

		「ああ。これは笑師。」

		 蛮の指摘に、銀次が笑って紹介してやった。

		「銀次はん。"これ"はひどいんとちゃいまっか?」

		 情けない顔をした笑師に、銀次以下、4人は笑い出した。

		「テメーはこれで十分だ。」

		「そりゃひどいって、士度くん。」

		「ふーん。てこたぁ、かなり俺って警戒されてんだな。」

		 誰に言うともなしにぽつりと呟いた蛮に、銀次が笑いかけた。

		「警戒も何も、ここへ入れられたってことだけで十分危険人物ってことでしょ?
		"邪眼使いの美堂 蛮"くん?」

		 銀次の言葉に、蛮はさして驚いた風もなく笑みを浮かべた。

		「知ってんだ?俺のこと。」

		「もちろん。噂はここにも聞こえてたよ。どんな奴かと思ってたけど、こんなに
		華奢な奴だとは思わなかったな。」

		「そりゃどーも。」

		 銀次の言葉に興味なさげに答えると、彼らの目の前を横切って牢の隅に行って
		腰を下ろした。

		 このメンバーに臆することない蛮の態度に、銀次を除いた4人の顔に驚嘆の色
		が浮かぶ。以前ここへ入れられた罪人は、人を殺したと言っていたわりには情け
		ない男で、2日ともたなかったからだ。

		 見かけによらず胆の据わった奴なのかもしれないと、4人は一様にそう感じた。

		 4人を他所に、笑みを浮かべた銀次が蛮の隣に腰を下ろす。それに蛮は視線だ
		けを向けた。

		「"地獄の沙汰も金次第"って、知ってる?」

		「ああ?」

		 唐突な銀次の言葉に、蛮が首を傾げた。

		「あんたほどの奴がまさか手ぶらで来るはずないよね?」

		「……なんの話だよ。」

		 銀次から視線を外した蛮は、知らん振りを決め込んだ。

		 頬杖をついたその手を、銀次が掴む。

		「とぼけるのはなしにしない?蛮くん?」

		「何言って……うあ!?」

		 口元だけ歪めた笑みを浮かべ、徐に銀次が蛮の体を引き倒す。咄嗟に反応し切
		れなかった蛮は、銀次にされるがまま畳にうつ伏せになった。

		「何しやがる!?」

		 暴れる蛮を、いつの間にか銀次の側に移動していた士度と花月、そして笑師が
		押さえつけた。圧倒的な力の差に、身動きままならない状態を強要される。

		「ご自慢の"邪眼"とやらを使ってみる?24時間で3回って言ったっけ?とする
		と、この人数相手だと足りないかな?」

		 笑いながら顎を掴んで上を向かせた銀次に、蛮は鋭い視線を向けた。

		「いいね、その目。ぞくぞくする。」

		 蛮の反応に銀次はひどく嬉しそうな笑みを浮かべた。それに、蛮の瞳に更に鋭
		さが増す。

		「ま、とりあえず身体検査しようか?」

		 銀次はにっこりと笑うと、蛮の足元へと移動した。そうして徐に着物の裾を絡
		げ、剰え下帯も取り除いてしまった。

		「な…っ!?」

		 羞恥に頬を朱に染めた蛮に構わず、暴れるのを士度たちに押さえさせて、その
		足を割り開き腰を高く上げさせる。

		「綺麗な肌だね。白くて。」

		 低く笑いを零しながら、銀次は露になった双丘を撫で摩った。それに、体が微
		かに反応する。

		「ちくしょっ!何しやがる!?触るな!」

		「さて。じゃ、始めよっか。男が何か隠すとしたらここしかないからね。」

		「触るなって言って……っヒッ!」

		 何の躊躇もなく秘所に突き立てられた2本の指に、蛮の体が痛みに硬直する。

		 その反応に笑みを深め、銀次は入れた指で中を探るように掻き回した。それも
		遠慮も何もない動作で。

		「ヒッ!い…た……っやめ…っっ!あくぅっっ!」

		 鋭い痛みに、蛮の目からは生理現象の涙が滲んでいた。

		「んーと、お、これかな?」

		 無遠慮に中を掻き回していた指が、何かを探り当てた。それを外へ引き摺り出
		す。

		 ようやく抜かれた指に、緊張から解かれた蛮の体が弛緩する。

		「ん?これ?」

		「ダイヤモンドですよ、銀次さん。」

		 一連の出来事を脇で見ていたMAKUBEXが声をかけた。

		「ダイヤ?」

		「小判よりずっと高価で貴重なものです。一体どこで手に入れたのかな……。」

		「そうなんだ。へー。綺麗な色だね。」

		「か…えせ…っ!」

		 先の行為に力を失った蛮が、それでも鋭い視線を向けながら掠れる声を上げた。

		「それは、俺にとって大事なもんなんだ…っ!返しやがれ……っ!」

		「残念だけどそれは出来ない相談だよ。けど、そうだなぁ。あんたが俺のもんに
		なるってんなら、考えなくもないけど?」

		「あ?」

		 眉を顰めた蛮に、銀次が笑みを返した。

		「分からないなら教えてあげるよ。」

		 意味深な笑みを浮かべ、銀次は蛮の腰を鷲掴みにすると更に高く上げさせた。

		「何……っ!?」

		 訳が分からず、蛮は後ろをなんとか振り返ろうとした。そのタイミングに合わ
		せて、銀次は乾いたそこへ自身を突き立てた。

		「―――――――――――――っっっ!!」

		 身が引き裂かれるような痛みに声も出ない。それだけでなく、呼吸さえ困難に
		なる。

		 無茶な進入に傷ついた秘所が鮮血を滴らせ出す。それが白い内股を汚して、淫
		猥でありながら奇妙な色香を醸し出していた。

		 激痛に硬直してしまった体に、半ばまで進入した銀次も痛みを感じているのか、
		眉を顰めた。

		「きっつ……。あんた経験ないの?」

		 痛みに顔を顰めながらも、銀次は小さく笑みを浮かべた。その事実をひどく喜ん
		でいるかのように。

		「銀次さん。体の緊張解いてあげないと。彼、呼吸困難に陥りかけてますよ?」

		 MAKUBEXの言葉に、銀次はようやく蛮の背中を摩ってやった。

		 呼吸を促すように何度か摩ってやるうちに、徐々にだが呼吸が正常な状態になっ
		ていく。

		「大丈夫?」

		 事も無げに訊かれた言葉に答えもない。

		 本来オスを受け入れることのない秘所に、しかも何の準備もなく突き立てられ
		れば傷つくのは当然の結果だろう。それをよりにもよって「大丈夫?」とは。

		 痛みに霞みそうになる意識を拾い集めて、蛮はなんとか銀次を睨み付けた。

		「大丈夫みたいだね。良かった。」

		 悪気はないとばかりに笑った銀次に腹が立つ。

		「大丈夫そうだから続きやるよ?」

		 銀次は嗜虐の色を浮かべた笑みでそう告げると、血で多少ぬめりの良くなった
		のを幸いと、全長を狭いそこへと捩じ込んだ。

		「―――――――っっ!」

		 無理矢理全てを捩じ込まれ、蛮は声にならない悲鳴を上げた。

		 白い内股を血の赤が染める。滴り落ちたそれが畳に小さな血溜まりを作った。

		「くぅ……。きつ…。も少し力抜いてくんない?」

		 そう言われて抜けるものなら蛮とて抜いていただろう。だが、痛みに硬直して
		しまった体は自由にならない。蛮はただ、体を引き裂くような痛みに耐えている
		だけだった。

		「銀次さん。抜けと言われても無理だと思いますよ?少し前を弄ってあげたほう
		がいいんじゃないですか?」

		 苦笑して花月が助言をする。それに納得したのか、銀次は徐に蛮自身に指を絡
		めた。

		「……っっ!」

		 指で愛撫してやれば体が跳ねる。その瞬間の締め付けに、思わず銀次は放って
		いた。

		「すご…!あんた良い体してんじゃん。へぇ。」

		 蛮の締め付けの良さに銀次が満足げに笑みを浮かべる。

		 放ったにもかかわらず、銀次のそれは硬度を保ったままだった。

		 精液に狭いそこも多少滑りが良くなる。銀次は蛮自身に愛撫を加えながら、ゆっ
		くりと腰を蠢かし出した。

		「ヒッ!や……うご……くなぁ……っっ!アッッ!」

		 激痛の中に少しずつ湧き上がる快楽に、蛮は泣きながら頭を振り続けた。

		 尖端を執拗に攻めれば雫が溢れ出す。

		 腰と指の動きに刺激され、淫らにひくつき出した秘所が銀次を甘く刺激する。
		強烈な痛みになかなかイけない蛮と異なり、銀次は再び絶頂を迎え熱い迸りを中
		へと叩き付けた。

		 血と精液で汚れた太股を撫で摩りながら、今度は蛮をイかせようと、自身への
		愛撫を激しく淫らにしていく。

		 徐々に高まる熱に焦燥感が募る。割れ目を爪で引掻かれ、堪らず、ようやく蛮
		も絶頂を迎えた。その刺激に銀次も再度放つ。熱い欲望を内に感じながら、蛮は
		意識を手放した。

		 暫し余韻に浸ってから、銀次は蛮の中から萎えた自身を抜き取った。

		 溢れ出す白濁した精と血の赤が混ざり合い、白い太股を伝い落ちる。畳に出来
		た血溜まりに、行為の乱暴さと激しさが窺い知れた。

		 完全に意識を手放してしまった蛮はぴくりとも動かない。伏せた瞼に滲む涙を
		指で拭ってやる。

		「ちょっと乱暴だったかな?」

		 血の気の引いた白い頬に、銀次が苦笑する。

		 銀次の洩らした言葉に、その場に居た全員が思わず疑問を抱いてしまった。

		 これで「ちょっと乱暴」と言うのなら、「乱暴」とは一体どんな状態を言うの
		だろうかと。

		「カヅっちゃん。手当て、してくれる?」

		「分かりました。」

		 花月は静かに答えると、布を濡らして傷ついた秘所を拭ってやった。それに、
		蛮が微かに身じろぎした。

		「ん……。」

		 濡れた布の感触が傷に沁みたらしい。苦痛に眉を顰めた蛮は、そのまま意識を
		取り戻した。

		 焦点の合っていない目で銀次を見た後、動こうとして走った痛みに現状を思い
		出す。そうして涙の滲んだままの目で銀次を睨み付けた。

		「テメー……。」

		「無理しないほうがいいですよ?傷はかなり酷いようですから。」

		 さらりと告げる花月を睨み付ける。

		「うるせー!俺に触るな!」

		 痛みに眉を顰めながらもそれだけ叫ぶと、なんとか起き上がろうともがき出す。
		それを花月が抱き上げるように起こしてやった。

		「こんな体で無茶したら悪化しますよ?薬を塗りますからおとなしくしていてく
		ださい。」

		「うるさいっ!離せ……うあっ!?」

		 抱くような体勢のまま、取り出した薬を秘所に塗り始める。その感触に蛮は声
		を上げた。

		「や、やめろっっ!触る…な……っやっっ。」

		 ゆっくりとそこを馴らすように塗り込められる薬の、そのぬめる感触に、蛮の
		呼吸が徐々に乱れ始める。

		 むず痒いような、気持ちいいような、そんななんとも表現のしようのない感覚
		が蛮の神経を苛んでいく。湧き上がる訳の分からない感覚に、蛮は何度も頭を振っ
		た。

		「……感じてる……ようですね?へぇ。ずいぶん感度が良いな……。」

		「な……っ!?あっやっっ!」

		 蛮の耳元に、彼だけに聞こえる程度の声で囁きかける。

		 羞恥に顔を上げた蛮に笑みを向け、花月はゆうるりと指を含ませた。

		 途端上がる嬌声に、花月の笑みが深まる。

		「もう少し奥まで塗らないと。我慢してくださいね?」

		 一度指を抜き、それを蛮に知らしめるように見せると、にっこりと笑いかけて
		たっぷりと薬を掬い取る。それを再度秘所に挿し入れた。

		「ヒッ!や、痛……っっあ…あぁ……っっ。」

		 泣きたくなるほどゆっくりと挿し込まれる指の感触に堪らず、蛮は花月に縋り
		ながら嬌声を上げた。

		 たっぷりと掬い取った薬を丹念に塗り込んでいく。愛撫を多分に含んだ動きで
		もって。

		 指が蠢く度に、痛みを凌駕する快楽がそこから沸き上がってくる。否定しよう
		と頭を振っても、それは消えることはなかった。

		「あ…ぅ…やめ……っも…い、やぁ……っっ。」

		「えー?なんでカヅっちゃんの時はこんなに気持ち良さげなの?薬塗ってるだけ
		なのに。」

		 蛮の様子に、銀次が頬を膨らませた。

		 銀次に声を掛けられ、花月は苦笑して指を引き抜いた。

		「乱暴にするからですよ。もっと優しくしてあげないと。それでなくても狭いん
		ですから。」

		「そっかぁ……。分かった。ね、俺にもやらせてよ?優しくするからさ。」

		 無邪気にそう言われ、花月の苦笑が深まる。

		「僕は手当てしてるだけなんですけどね?」

		「いーじゃん。俺がやるよ。薬貸して。」

		 言い出したら聞かない銀次が、花月の手から薬とそして蛮を引っ手繰った。そ
		うして薬を指で掬い取る。

		「え、と。優しく、だよね?」

		「や、やめろっっ!や、ヒッ!」

		 嫌がる蛮の秘所に指を挿し入れる。先よりは性急な行為ではないが、それでも
		傷ついた秘所には十分乱暴と言いたくなる行為に、蛮は悲鳴を上げた。

		「痛いっ痛いっっ!」

		 涙を浮かべて苦痛を訴える蛮に銀次が首を傾げた。

		「おっかしいなー?カヅっちゃんみたく優しくしたんだけど?」

		「銀次さん。悪化させちゃダメですよ。取りあえず一度抜いてください。」

		 花月に言われ仕方なく抜き取る。それに、蛮の口から安堵の声が洩れた。

		「いいですか?銀次さん。ゆっくり入れるんです。こう……。」

		 手本を示すように指を入れていく。そこを撫で、解すようにして奥へと挿し込
		めば、蛮の体が快楽に震える。

		「や…ぁ……っ。」

		 切なげな声を上げる蛮に、十分感じていることが分かる。

		「と、こんな感じです。分かりましたか?」

		 ゆっくりと指を抜き取りながら、花月が銀次に問いかける。それに、銀次は勢
		いよく頷いた。

		「分かった。ありがとカヅっちゃん。やってみるよ。」

		 そう言って再度蛮の秘所に指を押し当てる。身動ぎする蛮に構わず、花月がし
		たのを真似しながらゆっくりと挿し込んでいく。

		「い、やっっやめっあっあぁ……っっ。」

		 それが奥へと入り込んでいくほどに、蛮の口からは甘い嬌声が零れ落ちた。

		 それに気を良くした銀次は、心の中で乱暴にしないと呪文のように何度も唱え
		ながら、ゆっくりと指を蠢かせ出した。

		 腕の中の肢体が快楽に震える。縋りつくようにしてしがみついてくる蛮が可愛
		くて仕方がない。快楽を振り払いたいかのように頭を振る様もまた、銀次の心を
		激しく揺さぶった。

		「……カヅっちゃん。どーしよ……。」

		 愛撫を施すことに夢中になっていた銀次が、不意にぽつりと呟いた。

		「?どうしたんです?銀次さん。」

		「……俺、すっげーしたくなっちゃった……。入れたらやっぱ、ダメだよね?」

		 銀次の言葉に、花月は苦笑し、蛮は青褪めた。

		「悪化、しますよ?確実に。」

		 苦笑する花月に、銀次は「やっぱり。」と言った顔をした。

		「や、いやだ!やめろっっ!」

		 先に味あわされた苦痛を思い出して、蛮はなんとか銀次から離れようともがき
		出した。

		「も…や…だ……っ!」

		「あっと、ダメだよ。離れちゃ。まだ顔見てたいんだから。」

		 もがく蛮を抱き締める。顎を押さえて上を向かせると、そのまままたゆるゆる
		と刺激し始めた。

		「あっっや…っも、やだぁ……っっ。」

		 顔を逸らすことも出来ず、銀次に良いように刺激され反応を返してしまう。せ
		めてと目を瞑れば、閉じた瞼に唇に口付けてくる。

		 指の動きは乱暴ではないが容赦がなく、疼くような、だが達するには緩い快楽
		にイきたくて気が狂いそうになる。

		「も、もう…っや…め…っっ。」

		「「イかせて。」じゃないの?」

		「な……っっ!?」

		 笑って言われた言葉に、蛮の頬が朱に染まった。

		「イきたいでしょ?だってほら、こんなになってる。」

		 言いながら自身に触れてくる。触れた途端濡れた音がし、蛮は羞恥に更に頬を
		赤らめた。

		「俺もイきたいんだよね。でさ、ものは相談だけど、この口で俺のことイかせて
		くんない?」

		「ふ、ふざけんな……っっっっ!」

		 頬だけでなく全身を朱に染めた蛮が叫んだ。

		「ホントは入れたいんだけど、悪化するでしょ?だから下じゃなくてこっちの口
		でイかせてもらおうと思ってさ。そしたら蛮のこともイかせてあげるよ。」

		「だ、誰が……ヒッッ!」

		 不意に自身を握り込まれ息を飲む。根元を握り込まれたまま秘所を刺激され、
		もどかしいほどの快楽に蛮は体を震わせて喘いだ。

		「や、やぁ……っっも、嫌ぁ……っっ。」

		「ほら、どうする?したくないならそれでもいいけど、でも、その場合このまま
		だよ?」

		 意地悪く笑みを浮かべる銀次に蛮の目が切なげに揺れる。

		 イけないもどかしさと苦しさに、蛮の目から涙が零れ落ちた。

		 透明な雫が頬を伝い落ちる。涙に濡れた紫紺の瞳が得も言われぬほど美しい。
		それに銀次は目を奪われた。

		「や…もう……イかせ…っおねが……っっ。」

		 懇願の声に、ようやく我に返る。

		「泣き顔もそそるなー。目、綺麗だね。見たことない色だ。」

		 更に抱き寄せてその目に見入る。

		 頬に纏わりつく髪を払ってやりながら、銀次はうっとりと残酷な言葉を吐いた。

		「でも、泣いても許してあげないよ?俺のことこの口でイかせてくれるか、それ
		とも……。どうしても銜えたくないって言うんなら、下の口でも俺は構わないけ
		ど。でも今ここに突っ込まれたらどうなるか、蛮にも分かるよね?」

		 銀次の言葉に蛮が青褪める。

		 今秘所に銀次を受け入れたら、傷が悪化するのは火を見るより明らかだ。何よ
		り、あんな苦痛を再度強いられるなど、とてもではないが我慢できそうもなかっ
		た。

		「や…だぁ……。」

		 泣きながら弱々しく頭を振る蛮を畳に寝かせる。そうして、秘所を弄りながら
		根元を押さえ込んで涙を零すそれに口付けた。

		「あぅっっ!」

		 途端、蛮の体が跳ねた。

		 根元を押さえ込む指はそのままに、銀次はそれを殊更ゆっくりと舐めあげた。

		「あっあっやっっやぁっっ!」

		 直接的な刺激に、だが根元を押さえ込まれては達することが出来ない。気が狂
		いそうなほどの快楽に、蛮の神経は悲鳴を上げていた。

		「やぁっも、…っかしくな……っっあ…っっ。」

		「だったら俺を銜える?」

		「する……っからぁ……っっお…ねがっっイかせ…っっ。」

		 そう言って泣きながら懇願する蛮に笑みが浮かぶ。

		「じゃ、先に俺のことイかせてね。」

		「やっ先…イかせ……っっ。」

		 泣きながら頭を振る蛮に、銀次は笑って首を振った。

		「ダーメ。俺をイかせることが出来たらイかせてあげるよ。」

		 切なげに揺れる瞳を向ける蛮に嬉しそうにそう告げ、秘所から指を引き抜く。
		そうして花月を呼ぶと、根元を彼の絃で達せない程度に緩く縛らせた。

		「何す…っっ!?や、やだっっ解け、よ……っっっ。」

		 もがく蛮を起き上がらせる。そうして自分は畳に胡坐を掻き、蛮の顔を股間へ
		と引き寄せた。

		「終わったら解いてあげるよ。イきたいんでしょ?早くしないといつまでもその
		ままだよ。」

		 銀次の言葉に、蛮は諦めたように銀次のそれへと手を伸ばした。熱く脈打つそ
		れに眉を顰めながらも、イかせて欲しい一心で口を寄せる。

		 口に含んだ途端、酷い吐き気に襲われる。が、それを何とか堪え、舌で刺激を
		与えていく。瞳からは涙が止めどなかった。

		「ん……初めてにしちゃ、結構上手いじゃん。いいよ……蛮。」

		 うっとりと洩れた言葉も、蛮の耳には届いていなかった。

		 拙い愛撫で懸命に銀次を刺激する蛮の腰が、切なげに左右に揺れる。その魅惑
		的なポーズに銀次は笑みを浮かべると、視線だけで花月を呼んだ。

		 静かに銀次の側に寄った花月に、銀次が蛮に聞こえないように小さく耳打ちし
		た。それに、花月が驚いた顔をする。

		「……いいんですか?」

		「うん。」

		 即答し、銀次は笑みを浮かべた。

		 花月は小さく溜め息をついて、それでも銀次に言われた通り、蛮の背後に腰を
		下ろした。そうして一心不乱に銀次に奉仕している蛮の腰を掴んだ。

		「………っっ!?」

		 達する寸前の過敏な体は、それだけで敏感に反応を返す。

		 何事かと慌てて振り返りかけた蛮のその濡れた秘所に、花月はゆうるりと指を
		挿し込んでいった。

		「あっ!やぁっっ!」

		 疼くような感覚に、蛮が声を上げる。それを確認して、花月はゆるゆると指を
		蠢かせた。

		「ヒッ!や、やめっいやっいやぁっっ!」

		 後ろからゆるゆると刺激され、蛮は銀次に奉仕するどころではなくなっていた。

		 秘所に埋め込まれた指の動きに翻弄され、泣きながら頭を振り続ける。その度
		に涙が珠となって散った。

		「ダメだよ、止めちゃ。俺をイかせてからだって、言ったでしょ?」

		 蛮の痴態を、銀次は楽しそうに見つめながらそう断言した。そうして、目配せ
		で花月に指示を出す。

		 銀次の指示に花月は小さく頷くと、指の動きを止めてやった。

		「あ……ぅ……っ。」

		 途端力を失くし崩れ落ちそうになった体を、後ろから花月が支えてやる。

		「あんまり攻めるとするどころじゃなくなりますよ?」

		 指を抜き取ってやりながら、花月は眉を顰めて銀次に進言した。それに銀次が
		薄い笑みを浮かべる。

		「ん〜そっか、それも困るね。……さ、蛮。続きして?」

		 俯き荒い息を繰り返す蛮の顎を掴んで上を向かせると、笑みを浮かべて先を促
		した。

		「俺をイかせられなきゃ、ご褒美はあげられないよ?」

		 支配者然とした言葉に蛮は唇を噛み締めた。が、銀次の言葉には偽りがないこ
		とが分かっているため逆らうことも出来ない。仕方なく、蛮は再度銀次に奉仕し
		始めた。

		 イきたいと、焦る気持ちが舌の動きを淫らにしていく。反応の返ってくるとこ
		ろを執拗に攻めれば、拙い愛撫に、だが確実に欲望が膨れ上がっていく。溢れる
		雫に湧き上がる嘔吐感を堪え、なんとか絶頂を迎えさせた。

		「全部飲んでね。」

		 支配者の声音で告げれば、蛮は涙を流しながらも何とかそれを飲み下した。

		「良く出来ました。」

		 満足そうに笑いかけると、そのまま蛮を押し倒し仰向けにさせた。

		「は、早くぅ…っ。も、我慢できな……っっ。」

		 あられもなくねだる蛮に銀次の笑みが深まる。

		「うん。今してあげるよ。」

		 言いながら涙に濡れた蛮自身を銜える。舌で歯で刺激してやれば、その度に蛮
		の体は面白いように跳ねた。

		「あっやっっ!解い…てぇっっ!あっあぁっっ!」

		 絃をそのままに愛撫を施す銀次に、蛮の口から悲鳴が洩れる。それに気づき、
		銀次が顔を上げた。

		「そっか。ごめん。今外したげる。カヅっちゃん。」

		 銀次に促され、花月は蛮を戒めていた絃を解いてやった。

		 安堵に、蛮の体から力が抜ける。と同時に激しく自身を扱かれ、嬌声を上げあっ
		けなく達してしまった。

		「は…っは…っあ……ぅ……っ。」

		 力の入らない体を横たえたまま、蛮は目を閉じ乱れた呼吸を繰り返した。

		 弛緩したその両足を銀次が肩に担ぎ上げる。銀次の行動に驚いた蛮は目を見開
		いた。

		「な、何……っ!?」

		「一回じゃ物足りないだろ?もう一回イかせてあげる。快楽に酔わせてあげるよ。」

		 笑みを浮かべた銀次とは対照的に、蛮の顔は蒼白となった。

		「やっ!もういらな……っっあっや、あっっ!」

		 力の抜けた体では逃れることも出来ず、再び銀次に銜え込まれてしまう。

		 直接的な刺激に抗うことも出来ず、蛮は嬌声を上げ続けた。












		「ってな夢見て、朝起きたら夢精しちゃっててさー。蛮ちゃんにすっごい怒られ
		ちゃった。でも蛮ちゃんひどいんだよ?てんとう虫くんから俺のこと蹴り出すん
		だもん。いくらなんでもそこまでしなくたって良いと思わない?」

		 そう言ってコーヒーを音を立てて啜る銀次。

		 聞きたくもないのに延々と夢の話を聞かされた波児、花月、そして士度の3人
		は、一様にうんざりした顔をしていた。もう一人笑師もその場に居たのだが、彼
		だけは銀次と蛮の関係を知らなかったため、うんざりと言うよりは呆然と言う顔
		をしていた。

		「……銀次はんと美堂はんってそないな仲やったん……?」

		「そうか。笑師は知らなかったっけ。」

		 呆然と呟かれた言葉に、花月が苦笑して笑師の言葉を肯定した。それに、笑師
		の顔がさらに呆けたものになる。士度は面白くなさそうにそっぽを向いた。

		「あーでも、夢の中の蛮ちゃんも可愛かったなーvvvvvvvvvvvvvv
		やっぱ一から教えるって男の夢だよねーvvvvvvvvvvvv」

		 調教を男の夢と言う銀次のその言葉を否定はしないが、しかし、それを蛮が聞
		いたらまず確実に殴られるだろう。いや、それ以上の怒りが待っているに違いな
		い。それでも当の本人が不在なのを幸いと夢見がちな妄想に浸っている銀次に誰
		も突っ込まないのは、突っ込んだくらいでは止まらないことをこの場に居た笑師
		を除く全員が嫌というほどよく知っていたからだ。

		 唯一そのことを知らない笑師が、虚ろな目で銀次を見ながら呟いた。

		「あの美堂はんがでっか?……想像できへん……。」

		「しなくていいよ、そんな想像。蛮ちゃんがめっちゃ可愛くて綺麗なのは、俺だ
		けが知ってればいいことなんだから。蛮ちゃんのそんなHな顔想像したら、例え
		笑師でも怒るよ?」

		 そう言った銀次の、口元は笑っていたが、その目は決して笑っていなかった。
		むしろ冷たいとさえ言える光を湛えている。それが、その言葉が本気だと物語っ
		ていた。

		「………こわ……。」

		 殺気にも似た視線に、笑師は大仰に体を竦ませた。

		「銀次。テメーがどんな夢見たってかまやしねーが、俺まで巻き込むな。迷惑だ。」

		 コーヒーを口にしながら、士度が憮然と呟いた。それに花月も苦笑する。

		「夢ですからね、仕方ないですけど。でも、なぜ僕が銀次さんの指南役なのかな。」

		 士度に同意するように花月もぽつりと洩らす。

		 花月の言った「指南役」の意味を理解できなかった銀次が首を傾げた。

		「しな…え?何それ?」

		「『指南役』です。簡単に言えば、教えてあげるってことですね。」

		「そーなんだ。んー、カヅっちゃんがそーいう役回りだったのって、やっぱいろ
		いろ教えてもらったからじゃないかな?相談にも乗ってもらったし。」

		 さらりととんでもないことをしゃべっている銀次に、士度と笑師は顔を顰めた。

		 "花月の教え"と言うだけで、なんだかとんでもないことまで教わっているので
		はと考えてしまう。

		 一様にそう考えた二人は、苦笑したままの花月の顔を凝視した。

		「まあ、確かに昔はそうでしたけど、でも、僕の助言なんかなくても今の銀次さん
		なら、幾らでも美堂くんを鳴かせられるんじゃないですか?ねえ?」

		 二人の視線をさらりと受け止めて、花月は銀次にこれまたさらりととんでもな
		いことを言い出した。

		『美堂が居なくて良かった。』

		 士度のみならず、笑師までがそう思ったのも無理はない。この場に蛮が居たら、
		怒るどころの騒ぎではなかっただろう。

		 この言葉の真意に気づいていない唯一の人物、銀次は、花月の言葉を褒め言葉
		と取ったらしい。締まりのない顔で頭を掻いている。

		「え〜?それはそうだけど。ほら、夢だからさ〜v」

		『おめでたい奴。』

		 銀次の反応に、士度は心中そう呟いた。

		「で?結局、蛮は夢のことは知ってるのか?」

		 溜め息混じりで波児が口を挿んできた。それに銀次は勢いよく首を振った。

		「まさか!言ったら殴られるどころじゃないよ!」

		「何が殴られるどころじゃないって?」

		 銀次の言葉に呼応するように、背後から声が掛けられた。

		「蛮ちゃん!」

		 嬉しさと驚きの入り混じった表情で、銀次は蛮を見た。それに軽く首を傾げな
		がら、定位置とばかりに銀次の隣に腰を下ろす。

		「波児、ブルマンな。」

		 定番のメニューを注文する蛮に波児が苦笑する。

		「たまには金払って飲んでけよ。」

		「今度奪還料入ったらな。」

		 苦笑して片目を瞑ってみせる蛮に、波児は仕方ないなと溜め息をついた。

		 蛮はポケットから煙草を取り出すと、口に銜えて火を点けた。紫煙がゆっくり
		と立ち昇る。

		 その一連の動作を、銀次は惚けたように見ていた。

		『夢でだけど、この口が俺のこと銜えてくれたんだよな〜vvvvvvvvv』

		 昨夜の夢を思い出して、銀次は鼻の下を伸ばした。と同時に下腹部が熱を持ち
		出し、慌てて股間を押さえる。

		「?何してんだ?オメー?」

		 隣でもぞもぞしている銀次を不審に思い、蛮が眉を顰めて問いかけた。それに
		慌てて笑みを向ける。

		「な、なんでもないよ!」

		 銀次の引き攣った笑いに、蛮の不審が更に募る。

		 こういう時の銀次はろくなことを考えていないことが多い。それを経験上知っ
		ている蛮は、問い詰めようと口を開きかけた。

		「蛮。ほら。」

		 それを遮るような絶妙なタイミングで、波児が蛮の目の前にブルーマウンテン
		を差し出した。

		「あ?ああ、サンキュ。」

		 それを受け取って、そのまま口に運ぶ。

		 鼻腔を擽る芳醇な香に気が逸れたのか、恐れていた蛮からの追求は結局なく、
		銀次は胸を撫で下ろした。

		 ここで蛮を怒らせたら、また何ヶ月もさせてもらえなくなるのは火を見るより
		明らかだ。それだけは勘弁して欲しい。それでなくてもここ一ヶ月、させてもら
		えないでいるのだから、これ以上のお預けは精神衛生上と健康上、大変よろしく
		ない。というか、その前に切れるかもしれない。と、引き攣った笑いの下、銀次
		は真剣に考えていた。

		「で?何が殴られるどころじゃないって?」

		「……え?」

		 蛮の言葉に、銀次の背中を嫌な汗が伝い落ちた。

		「な、何が?」

		「さっき言ってたろ?『言ったら殴られるどころじゃない。』って。あれって、
		俺に、ってことだよな?銀次くん?」

		 嫣然と微笑んだ蛮につい見惚れながらも、銀次は心中焦っていた。

		 蛮に夢の話をする訳にはいかない。しかし上手い言い訳も思いつかない。

		 ただ引き攣った笑いを浮かべたままだらだらと汗を流している銀次に、蛮は更
		に笑みを深めた。

		「ふーん?俺に言えないってこたぁ、ろくな話じゃないってことだよなぁ?」

		 こんな風に笑みを浮かべる蛮は凄絶に綺麗だが、綺麗過ぎて怖い。

		 その場に居た全員は一様にそう思った。

		「テメーらは知ってんだろ?何の話だか。……ドリフ。」

		「ワ、ワイでっか!?」

		 頬杖をついたまま急に話を振られ、笑師は文字通り飛び上がった。

		「そ。俺様に話してみ?知ってることをよ。」

		「い、いや〜そないなこと言わはられても……。」

		 銀次同様、引き攣った笑みを浮かべて頭を掻いている笑師に、蛮は凄絶に綺麗
		な笑みを向けた。

		 誘うように艶麗な笑みを向けられ、笑師の頬に朱が散る。

		 照れたように笑う笑師に、銀次と士度の視線が鋭くなる。花月はそれを面白そ
		うに見ていたが、目は笑っていなかった。

		「話せねぇってこたぁ、ねーよな?」

		 もう一度にっこりと微笑まれ、笑師はのぼせたようにぺらぺらと話し出した。

		「銀次はんが夢を見たんですわ。」

		「え、笑師!?」

		 しゃべりだした笑師を止めようと、銀次が慌てて立ち上がる。それを蛮の手が
		制した。

		「夢?何の?」

		「それがまあ、けったいな夢なんですわ。なんも知らんあんさんを、銀次はんが
		一から調教するっつう……。」

		「……ほぉ……。」

		 笑師の言葉に、蛮の笑みの種類が変わる。

		 多分に殺気を含んだ笑みを浮かべ、蛮はゆっくりと銀次に向き直った。

		「……で、今朝の夢精ね。ふーん……?」

		「あ、その、ね。悪気はないんだよ?だって夢なんだから。蛮ちゃん最近全然さ
		せてくれないから、それでそんな夢見ちゃったって言うか……。ね?」

		 引き攣った笑いを浮かべたまま、銀次はしどろもどろに言い訳をした。それに、
		蛮の笑みが深まる。

		「そうだな、夢だもんな。仕方ねぇか。」

		「ね?蛮ちゃんもそう思うでしょ?」

		 蛮の言葉に安堵したように胸を撫で下ろした銀次を、笑師を除いた3人は一様
		に心中『バカ。』と呟いていた。

		「……って、俺が納得するとでも思ってんのか!?」

		 突然爆発したように叫ぶと、蛮は銀次を床に叩きつけた。

		 銀次が床にめり込む音と、波児の「頼むから店は壊さないでくれ〜。」の言葉
		が重なる。花月と士度はやれやれと言った感じでそんな光景を見ていた。

		「ふざけた夢見やがって!あ?んだよ、その『一から調教』ってのは!?勝手に
		俺を夢に出して好き勝手やってんじゃねー!!」

		 止めとばかりに踏みつける。ぐりぐりと力を込めて踏みつけて、それでようや
		く少しは怒りが治まったのか、蛮は「ふん!」と鼻を鳴らすと椅子に座り直した。

		「けったくそ悪ぃ!波児!ブルマンおかわり!」

		「はいはい。」

		 すっかり機嫌を損ねてしまった蛮に、波児は肩を竦めた。

		「………んだよぉ……。」

		 足元で、銀次が唸り声を上げた。

		「あ?」

		「元はと言えば蛮ちゃんが悪いんじゃないかぁ!!蛮ちゃんが全然させてくんな
		いからっっ!だからあんな夢見ちゃったんだよ!!蛮ちゃんのせいなんだから、
		そんな怒んなくたっていいじゃんかっっ!!」

		 ガバッと起き上がると、銀次は一気にそれだけ捲くし立てた。

		 完全に逆ギレしている銀次に、蛮も怒鳴り返す。

		「人のせいにすんじゃねぇ!」

		「蛮ちゃんのせいだよ!蛮ちゃんがさせてくんないのが絶対悪い!!夢の中の蛮
		ちゃんはすっげー可愛くて、強制だけど、フェラだってやってくれて、なのに現
		実の蛮ちゃんはすっげーつれなくてっっ!俺、完全に欲求不満だからね!!」

		 銀次の言葉に蛮の頬が真っ赤になる。怒りと羞恥のためだ。

		「きょ、強制でフェラやらせただとぉ……?」

		 怒りに、蛮は拳を振るわせた。

		「テメー……頭冷やして来い!!!」

		 そう叫んで、椅子から立ち上がった蛮が銀次を蹴りつけた。

		 店を壊してはいけないとの配慮か、それともそれ以外の意図があったものか、
		タイミング良く花月がドアを開けた。そこから銀次の体が外へと蹴り出される。
		そうして無情にも目の前でドアは閉められた。

		「いって〜っ。」

		 蹴られた箇所を摩っていると、閉められたドアが開いた。そうして中から蛮が
		顔を出す。

		「蛮ちゃんっ!」

		「向こう一ヶ月はぜってぇさせねーからな!バカ銀次!!」

		 それだけ怒鳴ると、取り付くしまもなくドアが閉められる。

		「ば、蛮ちゃ……っっ!えええ〜〜〜っっっ。」

		 閉ざされたドアを見つめ、銀次は蛮の無情な言葉に項垂れた。

		「そんな〜ひどいよぉ〜〜っっ。蛮ちゃ〜ん……っっ。」

		 銀次の言葉はドアに無情にも阻まれ、蛮に届くことはなかった。




		THE END









		なんつうか、かんつうか、酷い話ですみません;;
		かれこれ1年以上前に書いたものなんですが、いやはや、
		酷い話です;;
		こんなんUPしていいのかなぁ;とも思ったのですが、
		更新滞ってるし、結局UPすることに。
		やっぱあれですね、ストレス溜まってる時に書くと酷い
		話になりますね;
		あうあう;;