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		Silent Jealousy




		 明け始めた空を見上げ、銀次は大きく伸びをした。

		「ん~、いい朝v」

		 快晴、とは決して言えぬ空模様も、今日の銀次には全く関係なかった。

		 気分爽快、心晴れ晴れ、そんな笑顔を見せている。

		 一方、蛮の様子はと言うと、昨夜の雷帝から受けた無体が祟ってか、未だ
		夢の中。起きる気配は全くない。

		 そんな蛮に、銀次がそろりと近づき、耳元に声をかける。

		「蛮ちゃ~ん。朝だよ。起きて。」

		「んん……もう少し……。」

		 身動ぎし、更に布団を引き上げる。銀次に背を向けるような格好で丸くなっ
		た蛮に、なおも銀次が声をかけた。

		「え~、起きてよ、蛮ちゃん。」

		「…も少し寝かせろよ。昨日は遅かったんだから……。」

		 蛮の言葉に、銀次がいぶかしむ。

		 確か昨日は、今日に向けて早めに寝ようと銀次から言って、その通りにし
		たはずだった。

		 自分の記憶は布団に入って直ぐにないが、蛮だけ遅くまで起きていたのだ
		ろうかと、銀次は首を傾げた。

		「ええ?だって、昨日は早めに布団に……。」

		「てめぇが寝かせてくれなかった……。」

		 そこまで言って、蛮は自分が言ってはならない一言を口にしてしまったこ
		とに気がついた。

		 慌てて口を噤むが、時既に遅し。

		 背中で感じる気配は、不穏なものに変わっていた。

		「…………俺が……?」

		 低い呟きが洩れる。

		 蛮は、寝起きとはいえ、自分の洩らした不注意な一言を、心底後悔してい
		た。

		「雷(アイ)帝(ツ)が現れたんだ……。それでそんなに疲れてるんだね……?」

		 昨夜の出来事を確認するかのように、殊更ゆっくりとそう問いかける。

		 蛮は、何と答えていいものか分からず、ただ口を噤んでいた。

		「……無言は肯定ととっていいんだよね?蛮ちゃん?」

		 言葉と共に、ゆっくりと動き出す気配。

		 その気配に振り向きかけた体を、銀次の手が押さえつけた。

		「何……っうあっっ!?」

		 抵抗する間もなく、銀次の手が露になっていたそこに触れた。

		「……あ~あ……。ぐちょぐちょだ。」

		 指摘と共に差し込まれた指は、濡れた音を伴って奥へと入り込んだ。いつ
		ものような抵抗は全くない。

		 雷帝との名残を残すそこに、蛮は羞恥に唇を噛んだ。

		「ずいぶん楽しんだみたいだね、蛮ちゃん。」

		「…………雷帝(ヤツ)もてめぇだろうが…っっ。」

		 揶揄するように呟かれた言葉に、蛮の口から反論が洩れる。

		 意識の相違はあれど、どちらも銀次であることには変わりがない。

		 蛮にしてみれば、同じ人物に揶揄られる覚えはなかった。

		「あれは俺じゃないよ。」

		 しかし、そうはっきりと告げられた言葉に、蛮は二の句が告げなかった。

		 黙ってしまった蛮を暫くの間見つめ、次いで、指を含ませたまま、銀次は
		その体を仰向けにさせた。そうして腰を抱え上げると、指の代わりに自身を
		差し込んだ。

		「ひぁ……っ!」

		 衝撃に、蛮の体が弧を描く。

		「慣らす必要もないくらい柔らかくなってる。一体、どれだけしたの?」

		 言いながら、激しく腰を蠢かす。その度に、結合部からは濡れた音がした。

		「あ、や…っっ!バカやめっ!あぁ……っっ!」

		 抗いの言葉を無視し、銀次は行為を進める。

		 蛮の羞恥を煽ろうとしているのか、銀次はわざと音がするように腰を蠢か
		した。

		「雷帝(アイツ)は俺だけど、俺じゃない。」

		 激しく攻め立てながら、銀次は言葉を零した。

		「新しい年の始まりに、先に蛮ちゃんを抱いたのが雷帝(アイツ)だなんて、
		許せない……っ!」

		 蛮からしてみれば理不尽ともとれる嫉妬心に、それでも抗うことが出来な
		かった。

		 寧ろその激しさに、言いようのない興奮を呼び覚まされる。

		「蛮ちゃん……大好き、大好きだよ……っ!雷(アイ)帝(ツ)になんて、絶
		対っ!渡さない!」

		「ひ…ぁっっ!ぎ……んじ…っっ!銀次…っ!」

		「蛮ちゃん…っ蛮ちゃん……っっ!」

		 容赦ない行為に、蛮は銀次にしがみ付いた。そうして、うわ言のように銀
		次の名を呼び続ける。

		 銀次もまた、蛮の体を強く抱き締め、蛮の名を呼び続けた。

		「あ……も…ダ、あぁぁ……っっ!」

		「蛮ちゃ……んっっ!」

		 一際高い声を上げ、蛮が先に果てた。次いで、銀次も思いを吐き出す。

		 ぐったりとしている蛮を抱き締めるように、銀次も体を横たえる。そうし
		て暫くの間、二人は余韻に浸っていた。

		「蛮ちゃん……。」

		 小さく零れた呼びかけに、蛮がゆっくりと目を開ける。

		「……ごめんね。大好き。」

		 視線を合わせたくないとばかりに俯いたまま、銀次はぎゅっと蛮を抱き締
		めた。

		「俺、蛮ちゃんが他の誰かに抱かれるなんて、嫌なんだ。例えそれが雷帝(ア
		イツ)でも。……ううん。雷帝(アイツ)には、余計に。」

		 俯いたままの銀次に、蛮が苦笑する。

		「……アホ。ったく、しょうがねぇなぁ。」

		「……怒って、ないの?」

		 呆れたような、けれど決して咎める響きのない声音に、銀次が顔を上げる。

		 視線の先に、苦笑したままの蛮の顔。

		 蛮はその笑みを深めたかと思うと、銀次の頭をこつんと叩いた。

		「怒るも何も、呆れるしかねぇだろ。」

		「え?」

		「独占欲の強いヤツばっかで、参っちまうよな。」

		 そう言って、もう一度銀次の頭を叩く。

		「それって、雷帝(アイツ)もってこと?」

		「………さあな。」

		 あえて言葉にしない蛮に、銀次が何か考えるように黙り込む。

		「……何回、されたの?」

		「あ?」

		「雷帝(アイツ)に何回されたのかって、訊いたの。」

		「ああ?知るか。んなこと数えるわきゃねぇだろ?」

		 憮然と答える蛮。それに、銀次はゆっくりと上体を起こした。

		「あぅっ!バカ、急に動くなっ!」

		 繋がったままのそこを刺激され、蛮が抗議の声を上げる。

		「初Hは雷帝(アイツ)に先越されちゃったから、こうなったら回数で勝って
		やる!蛮ちゃん。覚悟はいいね?」

		 蛮の中で既に臨戦態勢に入った銀次に、蛮の顔が青褪める。

		「なっ!?だから、俺を殺す気か!?」

		「そんな気あるわけないじゃん。大丈夫。間にちゃんと休憩入れてあげるか
		ら。」

		「ふざけ……や、ひあぁっ!」

		 蛮の抗議の声も空しく、銀次の行為は止まることを知らなかった。




		 この時、にっこり笑った銀次の背に、悪魔の羽根が見えたとは、後々の蛮
		の証言である。



		END








		言わずと知れた(?)「除夜の鐘と共に」の続きです(苦笑)
		うちの銀次と雷帝は、すっかり別人格;
		ノリとしては、「お○ろしくて○えない」ですね(←分かる人
		だけ分かればいいっす)
		雷帝、銀次、どっちもどっちですな。
		そして、蛮ちゃんは、結局どっちにも甘い(苦笑)
		こんなSSですが、河本さまに捧げさせていただきます。
		以前いただいた邪蛮イラストのお礼ですv
		と言ったら、怒りますでしょうか?(汗)