BLUE PLANET



           外は雪。

     真っ白な結晶がひらひらと、まるで花びらのように舞い降りる。

    『"風花"とも言うんだぜ。こんな雪のことをよ。』

    そう言った蛮ちゃんの言葉に思わず頷きたくなるような、そんな儚さを持った雪。

    『積もらないかなぁ?』

    『この程度じゃ無理だろ。そうなりゃいいけど、な。』

    微笑を浮かべた蛮ちゃんに、希望は願望に変わるから不思議。

    『積もればいいのに。』

    白く、一番綺麗で無垢な色に塗り替えて。何もかも、覆い隠して。

    一時でもいいんだ。

    蛮ちゃんがそれを喜んでくれるなら。

    それだけで、俺は幸せになれるから。

    『寒くない?蛮ちゃん。』

    腕の中の何よりも愛しい人。

    俺より体温の低い体が、ぬくもりを求めるみたいに擦り寄ってくる。

    まるで、猫みたい。

    『オメーあったけーな……。』

    ぽつりと呟かれた言葉も、どこか夢見心地で。

    たぶん、もう、眠りはすぐそこ。

    『あはは。俺、お子様体温だから。』

    『ん……でも、気持ちいい……。』

     後半はもう言葉になってなくて。

    次いで聞こえてきたのは気持ち良さそうな寝息。

    俺の腕の中、安心し切ったように眠る蛮ちゃんが愛しくて仕方ない。

    『おやすみ。』

    起こしてしまわないよう小さく囁いて、そうして更に抱き締める。

    触れ合った肌があったかい。

    蛮ちゃんより俺のほうが圧倒的に体温は高い。

    だから、俺の熱を蛮ちゃんに伝えるように、温もりを分けるように、抱き締める。

    本当に、あったかい。

    誰かの存在がこんなにあったかくて気持ち良いものなんだって、一緒に居るとそれ

    だけで満ち足りた気分になれるんだって、それを俺は蛮ちゃんに教えてもらった。

    『蛮ちゃん……大好き。』

    『ん……銀次…。』

    ぽつりと零した言葉に反応するように、蛮ちゃんが小さく俺の名前を呼んだ。

        一瞬起こしちゃったのかと心配したけど、でも、蛮ちゃんは眠ったまま。

  思わず、笑みが浮かぶ。

  『うん…俺はここに居る……。蛮ちゃん。大好きだよ……。』

  起こしてしまわないよう気をつけながら、それでももう少し強く、蛮ちゃんを抱き

  締めて。   大好き。   大好き。   大好き。   何度言っても言い足りない。   愛してる。   愛してる。   愛してる。   何よりも、誰よりも。   蛮ちゃんさえ居てくれたら他には何もいらない。

  蛮ちゃんだけでいい。

  本当は、この腕の中、出来るなら閉じ込めておきたいけど。

  でも、それは俺の我侭だって分かってるから。

  分かってる、分かってるけど、でも、こんな風に安心し切った顔をされると、俺だ

  けの物だって、腕に閉じ込めたくなるから困る。

  こんな気持ち、きっと蛮ちゃんには分からないだろうけど。   ずっと、こうしてようね。    ずっと、一緒に居ようね。    ずっと、生きていこうね。    二人で。    不思議だね。この気持ちはずっときっと変わらないって、そう断言できる。

  そう、まるで降り続けるこの雪みたいに、俺の胸に積もっていくんだ。    愛しさと    優しさと    温もりと    そして、ほんの少し、切なさが。    『ん……。』

   蛮ちゃんが身動ぎした。

   まるで温もりを求めるみたいに俺の胸に頬を摺り寄せて。

  『可愛い……。』

   思わず頬に口付け。

   起きてたら、『何しやがる!?』って、きっと殴られてたと思う。

   想像したら苦笑が洩れた。

  『顔に似合わず、蛮ちゃん乱暴だから。』

  それが蛮ちゃん特有の照れ隠しだって分かってるけど、ね。

  外は雪。

  風花がひらひらと街に舞う。

  『積もればいいのにね。』

  そうしたら、きっととっても綺麗な笑みを見せてくれるはずから。

  『積もってくんないかなぁ。ね、蛮ちゃん?』

   蛮ちゃんの嬉しそうな笑顔が見たい。

  それは既に自分の願いになっていて。

  何もかも蛮ちゃんが中心になっている自分の思考に呆れたりもしたけど、でも、そ

  れもいっか、なんて今は思ってる。

  きっとこんなのは特別で、滅多にない幸運なんだって知ってるから。

  『大好きだよ、蛮ちゃん。』

  そっと囁きかけて、そうして頬に優しく口付ける。

  明日、雪が積もってることを祈りながら、掛け替えのない温もりを腕に抱き締めて、

  俺は静かに目を閉じた。    THE END
タイトルは西脇 唯ちゃんのアルバム「LEKTION」から。         以前書いた「COCON*コクン*」と「LOVIN’ YOU」         を足して2で割ったような話です。蛮ちゃんのセリフなんて、もう         まんまって感じで(苦笑)それでも結構実は気に入りの話だったり         します。甘々ですけどね(笑)         刹那くんに「かみぃさんが書かれる話みたい」と言わしめました(苦笑)