TRICK





		
		「ネギ!」

		「え?」

		 後ろから不意に呼ばれて振り返る。振り返った途端、口の中に、何か
		丸いものが放り込まれた。

		「んぐっ!?」

		 それが何かを認識するより先に、放り込まれたそれは喉を通過していっ
		た。

		「ケホ…。な、何?…って、こ、これっ!?コタロー君!?」

		 飲み込んでしまったものの正体を、ネギはそれを飲み込ませたコタロー
		に聞くより先に、「体感」によって理解してしまった。

		『年齢詐称薬』。

		 赤は大人に、青は子供に、その外見年齢を調整できる魔法薬(マジッ
		クポーション)だが、どうやら、その青いほうを飲み込まされたらしく、
		今のネギの外見年齢は10歳になってしまっている。

		 15歳と10歳との体格の差から、着ていた服はぶかぶかで、それこ
		そズボンは押さえていないとずり落ちてしまう。それを手で押さえなが
		ら、ネギは抗議の声を上げた。

		「どっからこんなもの……ていうか、なんでこんなもの飲ませたの!?」

		 ネギの抗議も尤もである。

		 しかし、コタローのほうは悪びれた様子もなく、へらりとその理由を
		告げた。

		「いや〜、今の目線で見たときの、10歳のネギってどんなんやろって
		思ってな。思ったら見とうなって、つい、な。」

		「ついじゃないよ!ついじゃ!ああもう、この当時の服なんて、もうな
		いのに……。」

		 ネギはめいっぱい絞った状態のベルトでも押さえきれないズボンを諦
		めて脱ぎ捨てると、やはりぶかぶかなシャツ一枚になり、ぶつぶつ言い
		ながら長すぎるその袖をまくった。

		「この薬の効果って、どれくらいだっけ?朝には元に戻ってると思うけ
		ど……。……って、コタロー君。何してるの?」

		 後ろから抱き付いているコタローに、ネギの声が低くなる。が、コタ
		ローのほうは全く動じる気配もない。

		「いやあ、こん時のネギって、可愛かったんやなぁ。」

		「はぁ?何言ってるの?可愛い?それ、男に使う言葉じゃないよ?」

		 むっとした表情を向けてくるネギに、コタローは笑ったまま、頭をガ
		シガシ撫でている。それが、ネギの神経を逆撫ですることも知らずに。

		「もう、止めてよコタロー君!鬱陶しい!」

		 触れてくるのを払い除けようとして、逆にその手を掴まれて反転させ
		られる。向かい合う形となった状態で、コタローはへらりと笑った。

		「当時も、なんやなまっちろい、女みたいな顔した奴やな、とは思って
		たんやけどな。こうして見ると、女顔どうこう言うより、可愛い顔して
		る言うんが正しいのが分かるわ。」

		「女みたいな…って、コタロー君、そんなこと思ってたの!?」

		「おうた当初はな。でも、すぐそうやないって思い知らされたけどな。」

		 最初の印象が、同年代の、それも同性のコタローにすら「女みたいな
		顔した奴」だったということが分かり、ネギは少なからぬショックを受
		けた。当時、異性からは確かに「可愛い」というようなことをよく言わ
		れてはいたが、まさか同性からそういう評価を受けていたとは思ってい
		なかったのだ。 

		「10歳の僕って、そんな風にコタロー君に見られてたんだ……。」

		「だから、最初だけだって、言ってるやろ?」

		「でも、可愛いって思ってるんでしょ?今の僕を見て。」

		「あ〜、それは否定できへんな。だってなぁ。」

		 ネギが何か言うより先に、コタローはネギを軽々と抱えあげると、顔
		を近づけた。

		「くりっとした目に、ぷにぷにのほっぺ。その上薄っすら桜色の唇、と
		きたら、もう、思わず食べたなるのしゃーないわ。」

		「た、食べ……っ!?え!?ちょ、コタローく……んっっ!」

		 コタローの言葉に驚く暇もなく、唇を塞がれる。

		 そのまま問答無用でディープキスに移行する辺り、例え見かけだけと
		は言え、10歳にする行為ではない。そう抗議をしたかったが、如何
		せん、唇を塞がれたままでは声を出すことなど出来なかった。

		「ん……は…ぁ……。コ…タロ……んっ。」

		 ようやく口付けから解放され、息をついたのも束の間、するりとシャ
		ツの中に入り込んできた手に脇腹を撫でられ、息を詰める。

		「やっぱ、感度は変わってへんな。」

		 感心したように言うコタローに、ネギは頬を真っ赤にして抗議の声を
		上げた。

		「見かけだけなんだから当たり前…って、そういう問題じゃなくて!変
		なとこ触んないでよ!」

		 コタローの腕の中から逃げようと、必至でもがくが、如何せん、今の
		ネギの体は10歳当時に戻ってしまっている。15歳のままのコタロー
		との体格差もあって、もがいてももがいても一向に逃れられない状況だ。

		「も、放してよ!コタロー君!」

		 自由にならないもどかしさにそう叫んでみても、コタローは一向にネ
		ギを解放する気配はない。それどころか、あっさりとその願いを退けた。

		「いやや。」

		「イヤって、ちょ、えっ!?うそ!?コタロー君!?」

		 コタローは暴れるネギをものともせず軽々と抱え上げると、そのまま
		すたすたと歩き出した。

		 向かうその先にある部屋に気付いたネギは、なんとかコタローの腕か
		ら逃れようと、更に暴れだした。

		「放してってば!コタロー君!!何考えて……っ!?」

		「ネギの考えてる通りのことや。」

		「………………っ!!」

		 口角だけを上げて笑みの表情を作り出すコタローに、ネギは言葉を失っ
		た。

		 思わず動きも止まってしまったのを、これ幸いとばかりに、さっさと
		目的の場所に運んでしまう。目の前に現れたそれに我に返ったネギは、
		逃れようと再びもがき出した。

		「や、やだってば!コタロー君!!」

		「そない嫌がることやないやろ?いつもやってることやんか。」

		「そ、そういう問題じゃ……っっわっ!」

		 抵抗空しく、結局寝室まで運ばれてしまったネギは、ベッドに半ば放
		られる形ではあったが、そこでようやくコタローから解放された。慌て
		て逃げ出そうとするが、簡単に腕の中へ収められてしまう。

		「放してよ、コタロー君!やだってば!」

		「そない言うたかて、この体勢じゃ説得力ないんとちゃうか?」

		 そう言われて、自分の状況に気付く。逃げようと身を返したところを
		コタローに抱き込まれたため、見ようによっては自分から下半身を差し
		出しているようにとれなくもない。しかも、ぶかぶかになってしまった
		ズボンは、先ほど自分で脱いでしまった。下着はつけているとはいえ、
		あられもない格好に、ネギは羞恥に真っ赤になった。

		「こ、これは不可抗力で……っ!」

		「ズボン脱いだんは、ネギやろ?」

		「だからそれは…っっ!!」

		 耳元でそう揶揄されて、更にネギの頬は赤みを帯びる。その様がいつ
		ものネギとはやはり違っていて、コタローは衝動に任せ、抱く腕に力を
		籠めた。

		「ああもう、なんや、めっちゃ可愛いやんか!」

		「可愛いって言うな!」

		 即座に怒るネギも、見かけ年齢10歳の今の状態では「可愛い」とい
		う感想しか浮かばず、やや乱暴に、コタローはネギの頭をガシガシと撫
		でた。ついでに付け加えれば、尻尾はこれでもかと言わんばかりに揺れ
		ていて、そのはしゃぎようが分かるというものだ。

		「もう、やめてって言ってるでしょ!放してよ!コタロー君!」

		「だから、いややって言うてるやろ?往生際悪いで?ネギ。」

		「そういう問題じゃ……って、え、コ、コタロー君!?」

		 いつの間にか外されたボタンの隙間から、不埒な手が肌に触れてくる。
		その感触を確かめるように撫ぜる指の感触に、ネギは小さく身を震わせ
		た。

		「すべすべやな♪それに、なんや、やっこくて気持ちええわ。」

		 首筋に口付けながら、指で肌の感触を楽しむ。

		 まだ幼さの残るその肌はやはりいつもとは違う感触で、コタローはそ
		れを楽しむため、殊更ゆっくりと撫でさすった。

		「……や…だ………っコタロ…く……んっ。」

		 時折、掠めるように弱いところに触れられ、その度ネギはシーツを
		ギュッと握り締め身を震わせる。その様が、コタローの劣情を更に煽っ
		た。

		「そない言われても止まれへん。…ネギ……。」

		「……っ!」

		 熱のこもった声で耳元に囁かれ、びくりと体が揺れる。

		 その反応に、そういえば耳が弱かったなと思い出し、唇を寄せる。

		「んっや……っ。」

		 耳への愛撫に、ネギは肩を竦めて、体を震わせた。シーツを掴む指に
		も、力がこもっているのが分かる。

		「ほんまここ、弱いんやな。なぁ、気持ちええか?」

		 コタローの問い掛けに答えはない。

		 ネギはただ唇を噛み締めて、必至に快楽に耐えている。

		 ネギからの答えがないのはつまらなかったが、体の反応を見れば感じ
		ているのは明白だ。それに、普段もこんな風に「抵抗」とばかりに声を
		殺すことが良くあったから、コタローは気にせず行為を進めた。

		「ネギは、体のほうが正直やからな。」

		 揶揄する言葉に、ネギの頬に朱が散る。

		 そんなところも可愛いなと、コタローは思った。

		 耳への愛撫を続けながら、指を少しずつ下へと滑らせて行く。弱いと
		ころを掠める度、腕の中の体は反応を返してきた。

		 殊更ゆっくりと移動していく指がネギのそれを捉えた瞬間、ネギは驚
		いたように顔を上げた。

		「コ、コタロー君!?ちょ、本気……っ!?」

		 今更ながら慌てているネギに、苦笑してしまう。ここまできて、「本
		気?」はないだろう。

		「ここまできて、何言うとんのや。冗談やないで?」

		「……………っ!!」

		 押し付けられた熱に、ネギの肌が一気に朱に染まる。次いで青褪める
		ネギに、コタローは一瞬動きを止めた。

		「や、やだっ!やだっ!」

		 再び腕の中で暴れだしたネギを、慌てて強く抱き締める。

		「ここまできて、お預けはなしやで?ネギ。」

		「やだっ!無理!絶対無理だってば!!」

		 いやいやをするように頭を降り続けるネギに、顎を掴んで動きを封じ
		てしまう。そうして、宥めるようにその頬に口付ける。

		「何が無理なんや?ネギ?」

		「……だ、だって……。」

		「だって?」

		「………は、入んないよ………。」

		 顔を真っ赤にして、消え入りそうな声でそう告げたネギに、一瞬、言
		葉を失う。が、次の瞬間、コタローは思わず吹き出してしまった。

		「なっ!?なんで笑うの!?」

		「……く……っ…いや、すまん……あんまネギが可愛いこと言うもんや
		から……。」

		 肩を震わせて堪えきれない笑いを洩らしているコタローに、言葉を失っ
		たまま、ネギは怒りにふるふると身を震わせている。

		「わ、笑い事じゃないよ!もう、いい加減放せっ!!」

		 再びもがき出したネギを、コタローは笑いながらも逃すまいとしっか
		りと抱き締めた。

		「悪かったって。なんや、ネギもすっかりその気になってたんやな。」

		「違……っっ!」

		 人の悪い笑みを浮かべるコタローに、ネギは否定の言葉を口にした。
		それを口付けで封じ込めて、そのままコタローはネギを仰向けにして組
		み敷いた。

		「ん……は……ぁ……。」

		「大丈夫やって。優しくしたるさかい、安心せぇ。」

		「そういう問題じゃ……っ!んんっ!」

		 ネギの抗議は、口付けで塞がれた。そのまま貪られるように口付けら
		れ、呼吸を乱される。

		「は……っあ…っ!」

		 酸素を求めて大きく息を吸い込んだ瞬間、首筋にぴりりとした痛みを
		感じた。確実についているであろう痕を満足げに見つめるコタローに、
		ネギは反射的に手を上げていた。

		「あた。」

		「痕つけるなって……あれほど言ったのに…っ!」

		「すまんすまん。なんや、つけたなってな。」

		 悪いとはこれっぽっちも思ってやしないだろう顔で謝られても、説得
		力の欠片もない。

		 睨んでも、全く堪えていないのだろう、なんだかひどくふやけたよう
		なコタローの笑みに、ネギは一人怒っているのがなんだかバカらしくなっ
		てしまった。

		「……今度つけたら、承知しないからね……。」

		 そっぽを向いて拗ねたようにそう言うネギに、コタローの笑みが更に
		深くなる。

		「分かったって。」

		 宥めるように触れるだけの口付けを落として、もう一度、今度は深く
		口付けた。

		「ん……はぁ……ぁ…。」

		「好きやで、ネギ。」

		 耳元に低く囁かれた言葉にひくんと反応しながら、ネギは答えの代わ
		りにコタローの首に腕を絡めた。

		「今の僕の状況、分かってるよね……?」

		 上目遣いで問い掛けてくるネギに、コタローは人の悪い笑みを浮かべ
		た。

		「早く続きして、やろ?」

		「バっ違うっ!10歳なんだから、無茶するなってことだよ!」

		「はいはい。わーってるって。ちゃんと、用意もしとるさかい、安心
		せぇ。」

		「……っ!?」

		 にやりと笑って眼前に差し出された小瓶に、ネギが真っ赤になる。

		 しっかりローションを用意しているコタローに、ネギは言葉を失くし
		て口をぱくぱくさせた。

		『確信犯っ!?』

		 思わず出そうになった言葉は、口付けで塞がれた。

		 口付けたまま、コタローは行為を再開させた。

		 途中まで外していたボタンを全て外し、その白い肌を露にさせる。首
		筋からゆっくりと、その感触を味わう。舐めるように触れてくるコタ
		ローの唇と舌に、ネギは小刻みに体を震わせた。

		「ん……ふ……ぅ……っ。」

		 押し殺したような声に顔を上げれば、ネギは自分の手で口を塞いで、
		必至に声を殺していた。

		「声、聞かしてぇな。ネギ。」

		 耳元に囁きかければ、びくりと反応しながらも首を横に振るネギ。

		「強情やな。」

		 苦笑して、それでもそのうち根を上げるだろうと、コタローはあえて
		ネギの手を外すようなことはしなかった。

		 中断していた行為を再開させる。

		 指と口でゆっくりと愛撫を施し、かなりの時間をかけて、コタローは
		ようやくネギの熱に触れた。途端、今まで以上の反応が返ってくる。

		 下着を脱がせ、露になったそれに、ちゅ、と音を立てて口付ける。体
		の震えと共に、押し殺した声が洩れた。

		 ネギの反応に口元を歪めたコタローは、そのままゆっくりと舐め始め
		た。

		「ん……っふ………んんっ。」

		 口元を手で押さえ、必至に声を殺すネギに、劣情が揺さぶられる。そ
		の思いのまま、攻め立てていく。そうしながら、器用にも小瓶からロー
		ションを指で掬い、後孔に塗り込めた。

		「ふぁっっ!」

		 不意に感じたローションの冷たさにか、ネギの口から堪えきれない声
		が上がった。それに、思わず笑みが浮かぶ。

		 ネギは今、年齢詐称薬によって10歳に戻ってしまっているが、それ
		はあくまでも見かけだけだ。当然ながら体は快楽を覚えていて、ロー
		ションの滑りを借りて入り込んだコタローの指に、面白いように反応が
		返ってくる。

		 それでもいつもよりきついと感じるのは、やはり10歳という年齢の
		せいだろうか。

		 きついと感じているのはネギも同様だった。

		 眉間に皺を寄せ、硬く目を閉じているその表情から、きつさに耐えて
		いるのが容易に理解できた。

		「……辛いか?」

		「ちょっと……キツイ……。」

		 素直に答えるところを見ると、余程きついようだ。

		「力、抜けるか?」

		「う…ん……。」

		 なんとか力を抜こうとするネギに、宥めるように触れるだけのキスを
		何度も繰り返した。それでも中のきつさはさして変わらず、仕方なく、
		コタローは一度指を抜いた。

		「はぁ……。」

		 途端、安堵したような声が零れた。

		 コタローはもう一度ローションをたっぷり指につけると、もう一度そ
		こへあてがった。

		「入れるで、力、抜きぃ。」

		「う…ん……っくぅ……っ。」

		 ゆっくりと侵入してくる指の感触に、ネギはなんとか力を抜こうと努
		力した。努力の甲斐あってか、先よりは少し楽な気がする。

		「まだ、キツイか?」

		「ん……でも、さっきよりは、マシ……。」

		「そか。」

		 その言葉に安堵する。優しくすると言った手前もあるが、ネギの辛そ
		うな顔を見るのは忍びない。どうせなら、気持ち良くなってもらいたい
		と思っているのだから。

		「はぁ……。」

		 不意に洩れた溜め息にも似た吐息に、鼓動が跳ね上がる。同時に、自
		身が脈打つのが分かった。

		「動かすで。」

		 あまりこのままでいたら、それこそ慣れていないところに挿入して傷
		つけてしまいそうだ。それだけは避けたくて、コタローはぶっきら棒に
		そう告げると、ゆっくりと指を蠢かした。

		「え、あ、くぅ…っ!」

		 動かすときついのか、ネギの顔に苦痛の表情が浮かぶ。思わず逃げを
		打つ腰を押さえて、ある一点を探して指を蠢かす。

		「く……ん、あぁ…っ!」

		 そこに触れた瞬間、明らかにネギの反応が変わった。

		 苦しげだった表情は、一転して快楽に悶えるものとなった。

		 見つけ出した前立腺を執拗に刺激してやれば、その度に体はビクビク
		と震え、ネギ自身は雫を零し始める。

		「ふ……ぅ…んん……っっ。」

		 口をついて出そうになる嬌声を、ネギは自分の手で口を塞ぐことでよ
		うやく堪えていた。

		 聞かせてもらえない声に不満はあったが、それよりも、一刻も早くネ
		ギの中に入れてしまいたかった。その熱を思う存分感じたかった。けれ
		ど、今の状態ではそれはまだ無理な話で、逸る気持ちをなんとか抑えつ
		つ、少しずつ指の数を増やしていく。ローションの量も増やしながら、
		なんとか自身を受け入れられるよう、コタローはそこを解すことに専念
		した。

		 3本目の指が入った時、ネギは一瞬だけ辛そうな顔をした。が、直ぐ
		に快楽に溺れるそれになる。

		「ネギ……まだ、キツイんか?」

		 呼びかけに、硬く瞑られていた目が、ゆっくりと開いた。

		 涙に、いや、それだけではない、快楽に濡れた瞳とかち合う。上気し
		た頬。問い掛けに、首はゆっくりと横に振られた。

		 そんな表情を見ていたら、我慢の限界が来てしまった。

		 指を引き抜き、既に膨張していたそれをあてがえば、その熱さに驚い
		たように、ネギはびくりと体を震わせた。しかし、抵抗はなかった。

		「優しくするつもりやったんやけど、あかん。もう我慢の限界や。辛
		かったら、ごめんな。」

		 思わず謝罪の言葉を口にするコタローに、ネギは首に腕を絡めて触れ
		るだけのキスをした。

		「しょうがない……コタロー君だから、許してあげるよ……。」

		「ネギ……。」

		 はにかんだような笑みを浮かべるネギに、思わずぎゅっと抱き締める。

		「ネギ、ネギ……っ。」

		 力任せに抱きついてくるコタローを、それでもネギは受け止め、抱き
		返した。

		 衝動のまま挿入してしまわないように、コタローは一つ深呼吸をする
		と、あてがっていたものをゆっくりと押し進めた。

		「く…ぅ……っ。」

		 辛いのか、苦悶の表情を浮かべるネギに、それでも逸る気持ちを抑え
		ることが出来ず、挿入していく。しかし、まだ慣らしが足りなかったの
		か、中々思うように入れることが出来ない。

		「ネギ、もっと力抜けへんか?」

		「……う……ん………。」

		 言われるまでもなく、なんとか力を抜こうとしているようだが上手く
		いかないようだ。コタローにしがみ付いて、必至に苦痛に耐えている。

		「……これ以上…ム、リ……っや…抜いて……っ。」

		 よほど辛いのか、そう懇願してくるネギに、しかしコタローのほうと
		て、今更止まれるわけもない。

		 ならばと、ネギの気を紛らわせようと前を刺激し始める。

		「あ、やぁ…っコタロ…君…っい、や……ぁ…っ。」

		 萎えかけていた前への刺激に、後ろからの苦痛に快楽が混ざる。

		 相反する感覚にいやいやをするように頭を振るネギに構わず、コタ
		ローはそこを刺激したまま、少しずつ、だが確実に奥へと押し込んでい
		く。それに、ネギの悲鳴とも嬌声ともつかない声が上がった。

		「……っっくぅ……っ。」

		「全部入ったで。ネギ。大丈夫か?」

		『大丈夫じゃない!』と叫びたいのはやまやまだったが、如何せん、ネ
		ギにしてみれば苦痛にそれどころではなかった。

		 それでもなんとか体の力を抜いて痛みを軽減させようと努力をしてみ
		るが、5歳違うだけでこれだけ違うのか、いつも以上に感じる質量に、
		思うように力を抜くことが出来ない。

		 今では苦痛しか生み出さない繋がりに、ネギの目に思わず涙が浮かぶ。

		「…い…た……っやだ……抜い…て…っっ。」

		 ふるふると頭を振って嫌がるネギに、コタローは困ったような笑みを
		浮かべた。

		「そない言うたかて、なぁ。ああ、でも、確かにいつもよりキッツイわ。」

		 溜め息と共にそう呟いて、コタローは今では完全に萎えてしまってい
		るネギ自身に触れた。途端、びくりと反応が返ってくる。

		「これで、気、紛れへんか?」

		 言いながら、緩々と刺激を与えていく。殊更、ネギの感じる箇所を重
		点的に刺激してやれば、少しずつ、だが確実にそれは昂っていった。

		「……ぁっや…だぁっっ……や、め…やぁ……っ。」

		 繋がった部分は、未だ痛みを訴えている。しかし、自身に与えられて
		いる刺激に、そこからは否応もなく快楽が湧き上がってくる。

		 相反する感覚に、それでも体に教え込まれた快楽が、少しずつ痛みを
		凌駕し始めたようだ。

		 その証拠に、幾分血の気の引いていた顔は薄っすらと上気し、時折洩
		れる喘ぎにも似た声も熱を含み始めた。それ以上に、そこを刺激してい
		る指が滑るのが、感じている何よりの証拠だろう。

		 溢れ出し始めた雫に、コタローがネギの耳元に囁きかける。

		「まだ、痛みしか感じられへんか?ネギ。」

		 自身の変化はネギ自身が一番分かっていることで、ネギはコタローの
		言葉に頬を朱に染めた。それでもそれを肯定する言葉を口にすることに
		は抵抗があり、ネギは言葉の代わりとばかりにコタローに抱きついた。

		 頬を染め抱きついてくるネギに、コタローの口に笑みが浮かぶ。

		「マジ、可愛いわ。」

		「可愛いって言うなっ!」

		 反射的に怒鳴り返したネギの口を、口付けで塞ぐ。そのまま思うまま
		貪って、そうしながら、少しずつ、腰を揺すり始めた。

		「……っ!あ、やぁっ!痛…い……っっコタ…やあぁ……っっ。」

		 コタローが動く度に、そこから鈍い痛みが湧き上がる。同時に施され
		る前への刺激による快楽と相俟って、ネギにはもう、痛いのか気持ちが
		いいのか判断することが出来なくなっていった。

		「は…っ、…痛っ……あっ!や……も、やぁ……っ。」

		 鈍い痛みを引き起こしていたはずの腰の動きも、徐々に慣れ親しんだ
		感覚を伝え始める。

		 体の奥のほうがぞくぞくするような、何とも言えない感覚に、ネギは
		必至にコタローにしがみ付いた。

		「あ、や、やめ…っコタロ…く……っひぁっ!」

		 徐々に激しくなる揺さぶりに、既に声を堪える余裕もないのか、ネギ
		の口からはひっきりなしに嬌声が上がる。

		 ネギは必至にしがみ付くあまり、コタローの背に爪痕を残してしまっ
		ていることにも気付かなかった。

		 引っ掻かれたコタロー当人は、その痛みに小さく笑みを浮かべると、
		更に腰の動きを激しくさせた。

		「…ひぁっあっ!も…ダメ……っや、あぁ……っ!」

		「ネギ……っく………っ!」

		 一際大きな反応の後、コタローの手に白濁した液体が吐き出された。
		絶頂の際の締め付けに促されるように、コタローもまた、ネギの中に熱
		い迸りを放った。

		 体内に熱が放たれたのと、ネギが意識を手放したのはほぼ同時だった。






		 意識の向こうで、微かな音がする。それは意識が覚醒するにしたがっ
		て大きくなり、ついには耳を覆いたくなるほどの大音量に感じられた。

		「ん……何……?何の音?」

		 完全には覚醒していない意識の中、未だ鳴り止まぬ音の源を探す。

		 酷くだるく感じられる体を起こして辺りを見渡せば、音源は自分の携
		帯であることが判明した。

		「僕の携帯……?……ああ、アラームかけておいたんだっけ……。」

		 ようやく意識がはっきりしてきたのか、思い出したようにそう呟いて、
		携帯を手に取るとアラームを止めた。

		「あふ。何時……?」

		 欠伸をしながら、時間を確認する。

		 07:30。

		 携帯のデジタルにはそう表示されていた。

		「?今日休みなのになんで……。あ、そうか。タカミチと約束してたん
		だっけ。」

		 学園が休みにもかかわらず起床を急かすアラームに一瞬首を傾げたが、
		タカミチと会う約束をしていたことを思い出す。ついでに、昨夜の行為
		も。思い出した途端、思わず頬に朱が散る。と同時に、自分の体を確認
		して、元に戻っていることに胸を撫で下ろした。

		「……昨日、あのまま寝ちゃったんだ…。ああ、もう、シャワー浴びな
		きゃ。」

		 呟いてベッドから降りようとしたところを、後ろから腕を引かれる。

		「わっ!?」

		 引かれた勢いに逆らえず、そのまま体はベッドへ逆戻りした。

		「え!?な、何?!」

		「どこ行くんや?」

		「コタロー君!?」

		 ネギは、コタローの腕の中にすっぽりと収められてしまう形で、後ろ
		から抱きつかれていた。

		 まだ眠っていると思っていたため、この行動に驚きを隠せないでいる
		ネギに、コタローの目が細められた。

		「今日は休みのはずやで。こんな時間に、何の用で、どこに、誰に会い
		に行くんや?」

		 問い掛ける声もいつもより低く、また、聴き方もどこか問い詰めてい
		るかのようで、ネギはコタローにまるで尋問を受けているかのような気
		にさせられた。

		「何の用って、コタローくんには関係ないでしょ。」

		 後ろ暗いことをするわけでもなんでもないのにこのような聴き方をさ
		れれば、誰でもカチンとくるだろう。ネギも例外ではなく、思わずつっ
		けんどんな答えを返してしまう。それが更にコタローの機嫌を損ねるこ
		とは分かっていたが、素直に言う気にもなれなかった。

		「シャワー浴びるんだから、放してよ。」

		「いやや。」

		 即座に否定され、思わず溜め息をつく。

		「嫌って、あのねぇ。僕、これから行かなきゃならないとこがあるんだ
		よ。約束があるの。分かった?分かったら放してくれる?」

		 溜め息混じりに言いながら、体に絡みつく腕を外そうと手をかける。
		しかし、腕の力は弱まるばかりか、逆に更に強く抱き込まれてしまう。

		「コタロー君!」

		「約束って、タカミチさんとか?」

		 図星をさされ、思わず動きが止まってしまったネギに、コタローの気
		が不穏な空気を纏い始める。

		「ちょ、何勘違いしてるのか知らないけど、タカミチとは仕事の関係で
		会うんであって、コタロー君が考えてるようなことは……っ!」

		 自分の反応がコタローに要らぬ嫉妬をさせていると気づき、慌てて事
		情を説明する。しかし、時既に遅し、だった。

		「俺が何考えてるか、分かるって言うんか?分かるってことは、実際、
		そうなんちゃうんか?大体、仕事関係なら、何も休みの日でなくてもえ
		えやんか。それとも、休みの日でないとあかん理由でもあるんか?例え
		ば、ネギの言う、俺の考えてるようなこととか、なぁ?」

		 コタローの声が更に低くなる。

		 畳み掛けるように言われ、ネギは一瞬、なんと返せばこの誤解が解け
		るだろうと迷ってしまった。しかし、それにより、疑惑は最早、コタ
		ローの中で完全に確信となってしまった。

		 ゆらりと立ち上がると、コタローは問答無用でネギを組み敷いた。

		「せやったら、行かせるわけにはいかへんな。」

		「誤解だってば!確かにタカミチとは会うけど、本当に仕事のことで相
		談するだけなんだよ!タカミチのほうが忙しくて、今日しか時間取れな
		くて、だから、たまたま休みの日になっちゃっただけなんだってば!コ
		タロー君が考えてるようなことなんて、本当にないんだよ!信じてよ、
		コタロー君!」

		 完全に誤解してしまっているコタローに、必至になって訴えるが、コ
		タローの表情は一向に変わる気配もない。当然、解放してくれる様子も
		ない。逃れようともがいても、上から押さえつけられているため思うよ
		うにいかず、焦燥感だけが増していく。

		「コタロー君!」

		「……ネギがそうかて、向こうもそうとは限らん……。」

		「え?」

		 ぽつりと洩れた言葉は、ネギの耳に届かなかった。

		「何?なんて言ったの?コタロー君。」

		「なんでもあらへん。」

		 聞き返してくるネギに、しかし、コタローは素っ気無くそう言ったき
		り、黙り込んでしまった。

		「?とにかく、放して、コタロー君。」

		「いやや。」

		「コタロー君!」

		「折角の休みやで?なんでタカミチさんに遠慮せなあかんのや。そや。
		昨日は痛い思いさせてもうたから、今日はちゃんと気持ちようさせたる
		わ。な?ネギ。」

		 口角だけ上げて笑みの表情を作るコタローに、ネギの顔が青褪める。

		『目が笑ってないし!怖いよ、コタロー君!』

		 思わず硬直してしまったネギを他所に、コタローはネギの両足を肩に
		担ぎ上げた。

		「!?」

		「昨日はあのまんま寝てもうたからな。まだ残ってるんちゃうか?」

		 言いながらそこへ指を滑らせると、そのままゆっくりと埋めていく。
		そこはさしたる抵抗を示さず、指を受け入れた。

		「ひぁ…っ!」

		「やっぱ、まだ残ってるみたいやな。熱くて、溶けそうや……。」

		 入れた指を、ゆっくりと蠢かす。

		「い、や…っやめっっやぁ……っ!」

		 入り込んだ指が前立腺を刺激する度、ネギの意志とは無関係に体は反
		応してしまう。いつの間にか増やされた指にも、昨日と違い、痛みはほ
		とんどなかった。

		「あ……ダ、メ……っやくそ…く……が、あぁ…っ!」

		 体は完全に快楽に翻弄されていた。それでも、タカミチとの約束があ
		るからと紡がれた拒絶の言葉は、しかし、入り込んできた熱棒に嬌声に
		すりかわった。

		「は…ぁあ……っ。」

		「めっちゃ、熱いな……ネギん中……。」

		 熱っぽく囁かれた言葉にも、上手く言葉を返せない。それでも乱れた
		呼吸を整えて、なんとか言葉を紡ごうとするが、その度に突き上げられ、
		嬌声に紛れる切れ切れの言葉は意味を成さなくなっていく。

		「約束は…キャンセル……やな……。」

		 ゆっくりとネギを追い立てながら、コタローは満足げにそう洩らした。

		 先と違って満足そうな笑みを浮かべるコタローに、ネギはその背に爪
		を立てながら、乱れた呼吸の中、それでも今できる精一杯の悪態をつい
		てみせた。

		「……ぁっこ、の……バカ犬……っっ!」

 





		 結局、タカミチとしていた約束はコタローの思惑通りキャンセルと
		なった。







		 タカミチのところへ断りの連絡が入ったのは、約束の時間をかなり過
		ぎてからだったのだが、ネギとの会話の最中は、怒っていることなど微
		塵も感じさせぬ対応だったにもかかわらず、通話が切れた途端、タカミ
		チが携帯を握り潰してしまったとか、翌日、体育の授業の着替えの際、
		背中の爪痕を見咎められたコタローが、「ああ、これか?ネコや、ネコ。
		このネコがまた、めっちゃプライドたこうて、でも、ものごっつう可愛
		いヤツなんや。」と、当人達にしか分からないのろけをほざいていたと
		か、それはまた別の話である。




 
		 THE END
		
	







		…なんだか無駄に長くて、気が遠くなりそうです…(−−;)
		途中、あまりの甘さに砂を吐きそうになったり。書いてる本人が
		これではダメダメですね;
		「ネギま!」でエロは、やっぱ難しいなぁ。
		さて、「年齢詐称薬」。
		「幻術みたいなもの。」とカモ君が言っておりましたが、実際の
		ところ、正直どんな状態になっているのかよく分からないです。
		ので、「メ○モちゃん」を参照(笑)
		よって、幻術ではなく、体もきちんと大きくなったり小さくなっ
		たりするという前提で、この話は書かれています。ですから、前
		半のネギ君は、意識はともかく、
		「10歳」です。
		(犯罪でないか?それは;;)
		そこはこだわりポイントなので、よろしくお願いします(何がだ;)
		なんにしても、楽しんでいただければ幸い。
		よろしければ、感想をお願いします。励みになりますので。
		次はタカネギかなぁ…。(←まだやる気らしい…)