「というわけで、コタロ君もネギ君と仮契約するように♪」

			「「え、ええーっ!?」」

			 パルの一言に、ネギとコタローが同時に異議を唱えた。

			「ちょい待ちぃ!なんで俺がネギと仮契約せなあかんねん!?」

			「ちょ、ちょっと待ってください!コタロー君と仮契約って、どういうことですか!?」

			「仮契約しておいたほうが何かと便利でしょ?フェイトのことだってあるし、手持ちの札は多いに
			こしたことはないからね。」

			 そう言われて、二人とも言葉に詰まる。

			「……それはそうかもしれませんが……。」

			「確かにそうかもしれへんけど、そんなん、考えてもへんかったわ。」

			 契約していた場合の利点を考えると反論もできず、二人は困ったように顔を見合わせた。

			「仮契約してないのは、コタロ君だけでしょ?それだと、何かあった時、困ると思うのよね。キス
			に抵抗があるのかもしれないけど、ちょっと口と口をくっつけるだけでしょ?それでこっちに有利
			なアイテムが手に入るなら、それにこしたことないと思うんだけどな。ね、コタロ君はどうなの?
			ネギ君とキスするのはいや?」

			「ハ、ハルナさん!?」

			「いやも何も、そんなんしたことないしなぁ……。よう分からんわ。」

			 ぼりぼりと頭を掻きながらネギの口元を見るコタローに、ネギの頬に朱が散る。

			「それはいやじゃないってことかな?で?ネギ君はどうなの?」

			「え!?あ、いえ、あの、その、い、いやというわけではないですけど………。」

			 真っ赤になって俯いたネギは、小さな声でそう答えた。

			「なら問題なしだね♪というわけで、カモく〜ん♪」

			 どこか楽しげな声でカモを呼ぶパルに、ネギは小さな唸り声をあげ、コタローは逆らってもムダ
			と判断したのか、小さくため息をついた。

			「おう、話はまとまったのかい?」

			「もちろん。じゃ、頼んだよ、カモ君♪」

			 そう言って手を振ると、意味深な笑みを残してパルは部屋を出て行った。

			「………。」

			 取り残されたネギとコタローは、無言のままお互いに顔を見合わせる。そうしている間にカモは
			魔法陣を書き上げると、準備万端とばかりにネギの肩に飛び乗った。

			「準備OKっすよ、兄貴。」

			「カ、カモ君……。」

			 その言葉に、ネギは困ったようにカモに視線を向け、次いでコタローに視線を向けた。その目が
			困惑を雄弁に物語っていて、視線を向けられたコタローも、困ったようにネギを見返した。

			「あ〜、その、なんや……。しゃーないから、するか?」

			 暫しの沈黙の後、コタローはそう言って苦笑した。それに僅かに逡巡した後、それでも小さく頷
			くと、ネギは魔法陣に足を踏み入れた。それに続き、コタローも魔法陣に足を踏み入れる。そうし
			て互いに向き合った。

			 視線が合った途端慌てて外す二人に、カモは思わず苦笑した。

			「…………い、行くで?」

			「う、うん…………。」

			 コタローはぎこちない動作で手を伸ばすと、ネギの頬に触れた。触れた途端小さく震えるのに、
			思わず手を引っ込めそうになったが何とか押しとどめた。

			 緊張にか、真っ赤になって目を堅く閉じているネギの睫毛がふるふると震えている。つられて緊
			張してしまわないよう、コタローは大きく深呼吸すると、そのまま目を閉じてゆっくりと顔を近づ
			けた。

			「ん…………。」

			 触れた途端、微かな声が漏れた。

			 発動した魔法陣が光を放ち、二人を包み込む。触れた唇の柔らかな感触と、その光のもたらす浮
			遊感が気持ちよくて、意識せぬまま、コタローはネギの体を引き寄せた。

			 初めて触れた唇の感触に、ふと、楓が『水ようかんのようだった。』と評していたのを思い出す。
			それを聞いた時、『どんな感触なんや。』と想像してみたりしたのだが、まさか自分が体感すると
			は思っていなかった。

			『『ぷるんっぷるん♪』とか言うてたな。確かにそやな…。やっこくて、気持ちええ……。』

			「んん……っ。」

			 柔らかな感触を味わうように、軽く食んでみる。途端漏れた声が、ひどく甘く響いた。

			 どれだけそうしていただろう。苦しさにどんどんと胸を叩くのに気付き、ようやくコタローはネ
			ギを解放した。

			「はぁ……。」

			 苦しげに息をつくネギが、どこか恨めしげな視線をコタローに向ける。それを気にすることもな
			く、コタローはネギにゆっくりと顔を近づけた。

			「な、何……?」

			 顔を近づけてくるコタローに、ネギは思わず一歩後ずさった。それを、腕を回して逃げ道を断っ
			てしまう。

			「初めてやったけど、なんや、気持ちええもんなんやな。」

			「な……っ!?」

			 ぽつりと漏れた感想に、ネギの顔が朱に染まった。

			 徐に、コタローの指がネギの唇に触れた。そうしてゆっくりとなぞるのに、ネギの体が小さく震
			える。

			「コ、コタロー君……?」

			 微かに震える声が、名前を紡ぐ。それに答えることなく、コタローは緩慢な動作で指を離した。

			 そのまま解放されるものと安堵に力を抜いたネギを、けれどコタローは放すことなく引き寄せる
			と、そのまま唇を重ねた。

			「……っっ!?」

			 驚きに見開かれた瞳は、しかしすぐに固く閉じられた。

			 触れた唇の柔らかさが気持よくて、触れるだけの口付けを何度も繰り返す。時折軽く食んでみれ
			ば、その度に腕の中、ネギが小さく身を震わせた。

			 足もとで騒ぐカモの言葉など、耳に入っていなかった。けれど、べしべしと頬を叩かれるに至っ
			ては、流石に無視してもいられなくなり、仕方なくコタローはネギから身を離した。その途端、ネ
			ギはその場にへたばった。

			「兄貴!」

			「なんや、大丈夫か?ネギ。」

			 コタローが膝をついてネギの顔を覗き込むと、恨めしげな視線を向けてくる。その顔は朱に染まっ
			ていて、目には薄らと涙が浮かんでいた。

			「コタロー君のバカぁ……。」

			「そない言うたかて、しゃーないやろ?気持ちよかったんやもん。ネギはちゃうんか?」

			「う………。」

			 そこで言葉に詰まるところを見ると、どうやらネギもコタロー同様気持ちよかったのだろう。そ
			れにコタローが小さく笑う。

			「ま、これで契約終了やな。よろしく頼むで?ネギ。」

			「………うん。」

			 にっと笑って差し出された右手を、少しの間を置いて、ネギは苦笑して握り返した。

			「ハプニングはあったが、ま、無事に終わったってことで、ハルナの姉さんに報告するか。」

			「え?あ、カ、カモ君っっ!」

			 呼び止めるのも聞かずに走り去ったカモに、ネギは慌ててその後を追いかけようとした。それを、
			コタローの腕が引き留める。

			「コタロー君?」

			 振り向いたネギの唇に、コタローの唇が軽く触れた。

			「コタロー君!?」

			 驚いて身を引こうとするのを引き寄せる。そっと頬に触れれば、緊張にか、ネギは身を震わせた。

			「なぁネギ。」

			「な、何…?」

			「これからも時々、してええか?」

			「……っ!?」

			 コタローの言葉に、ネギの目が驚きに見開かれる。困惑に揺れる瞳がコタローを見、けれどすぐ
			に外された視線が彷徨う。

			「え、あ、あの……。」

			「ダメか?」

			「う………。」

			 じっと見つめられ、ネギは困惑しながらも、けれどコタローから目が離せなくなってしまった。

			 沈黙が流れる。

			 沈黙を破ったのはコタローだった。

			「ネギ?」

			 名を呼んで答えを促すコタローに、ネギは困ったように俯いて、けれど小さく、だが確かにこく
			りと頷いた。それに、コタローが嬉しそうに笑う。

			「ほんまか?」

			「う、うん……。でも!」

			「でも?」

			「ふ、二人でいる時だけだからね?」

			「分かっとるって!」

			 コタローはそう言って笑うと、ネギにそっと口付けた。







		 	THE END















			お疲れ様でした〜。
			252時間目に対抗して(?)、書いてみたコタネギ(爆)
			コタとネギ君の仮契約ネタはこれで2回目。
			どっちも「ネギ君とのキスは気持ちいい」がコンセプトってのが、
			笑えます(笑)
			原作でもやってくんないかなぁ(笑)