I WANT YOU,YOU WANT ME? 背を撫ぜる感触に、体が小さく震えた。 指で、舌で触れるそれは、滑らかな肌の感触を楽しむような微かなものだったが、散々に焦らされた 体には、それすら神経を焦がす刺激に他ならない。堪らず、僅かに腰が揺らめく。図らずも返してし まったその反応に、ネギは羞恥にシーツを握り締めた。 そんなネギの反応に、コタローの口元に小さな笑みが浮かぶ。 「欲しそやな。腰、揺れてるで?」 耳元に囁かれた揶揄の言葉にさえ反応してしまう自分に、ネギは唇を噛み締めた。しかし、そのまま 愛撫を施されれば、堪え切れず微かな嬌声が零れる。 「そんな堪えんかて、ええやろ?俺しか聞いてへんのやから。」 言葉と共に、耳に口づけが落とされる。わざと音を立ててされるそれに、小さな震えが走った。 「……そ、んな……の、僕の、勝手……んっっ。」 言いながらキツイ眼差しを向けるネギに、コタローは口元を笑みの形に歪め、脇腹に手を滑らせた。 途端震える体に、コタローの笑みが深まる。 「そやけど、声我慢してっと、辛いやろ?それに、俺もネギの声聞きたいし。なぁ、ネギ、……啼いて くれへん?」 そう言われて素直になれるはずもなく、ネギは無言でコタローを睨みつけた。 キツイ瞳に、コタローの背筋をなんとも言えない感覚が走った。 そのプライドを粉々に砕いて、思うまま貪り快楽に啼かせてみたい。 浮かんだ衝動に体温が急激に上がるのを感じ、コタローは小さく苦笑した。 「ほんま、煽るのうまいわ……。」 「な、に…言って……う、ぁ……っ!」 不意に自身をなぞられ、微かな声が上がる。 触れたそれは、しかし僅かに掠めただけですぐに離され、それ以上の刺激を与えられることはなかっ た。 「は…ぁ………。」 身を震わせ、苦しげに息をつくネギに追い打ちをかけるように、背に口付けが落とされる。と同時に、 内股をゆっくりとなぞり上げられ、堪え切れぬ嬌声が漏れた。 形の良い尻に手を這わせ、ゆっくりと撫でる。時折口付けを落とせば、先をねだるかのように腰が揺 らめいた。 「や…め………っ。」 微かに漏れた拒絶の声に、コタローはゆっくりと顔をあげた。 「やめてええんか…?」 耳元に囁くように問いかけるが、応えはなかった。 快楽に陥落しまいと固く目を瞑り、唇を噛み締め耐えているネギに、コタローはもう一度問いかけた。 「ほんまに、やめてええんか…?ネギ……。」 名を呼ばれ、びくりと体を震わせる。緩々と開かれる双眸が、躊躇いがちにコタローに向けられた。 快楽に潤んだ瞳に困惑と切望が滲む。淡く染まった目元が酷く扇情的で、コタローは無意識に喉を鳴 らしていた。 僅かに交差した視線は、しかし、すぐに外され、ネギは再び固く目を閉じた。震える手がシーツを握 り締め、新たな皺を作り出す。 「……なぁ、ほんまに、やめてええんか?ネギ…。」 唇を噛み締めたまま答えぬネギに、コタローは3度目の問いかけを囁いた。 「…も、い……。」 「…ネギ?」 微かに零れた言葉に、耳を澄ませる。震える唇が、微かな言葉を紡ぎだした。 「も………コタロ…くんの……好きにすればい……あ、あぁ……っ!」 堪らずに零れ落ちた言葉は、しかし、最後まで紡がれることなく嬌声にすり替わった。 「は……あ、…ぁ……っ。」 先までのじれったい行為はなんだったのかと、思わず抗議したくなるほどの性急さで押し入った熱に、 体が震えるのを堪えられない。苦しげに、ネギはシーツをきつく握り締めると、緩々と頭を振った。 「…はぁ……ネギ…。」 「ん…っ。」 耳元に落とされた熱を多分に含んだ声に、ぞくりと快感が突き抜ける。それが合図ででもあったかの ように、再開された愛撫に堪え切れない嬌声が上がった。 望んでいたはずの刺激は、しかし、焦らされた時間に比例するかのようにあまりに熱くて、過ぎた快 楽に流されそうになる。せめてと上がる声を堪えようとすれば、差し入れられた指に邪魔をされる。 シーツを握り締めた指先は、力を込めすぎて白くなっていた。 「あ、ふぁ……っ…っや、あ……っっ。」 繋がったところからする濡れた音に、羞恥と悦楽が交差する。抗う術もなく膨れ上がる熱に飲まれか けたその時、突然に放り出された。 「あ…ぁ……。」 身を焦がす熱を持て余し、ネギはシーツをきつく握り締めた。その手にコタローの手が重ねられたと 思った次の瞬間、くるりと反転させられる。仰向けになったネギは、自然、コタローと向かい合う形と なった。 コタローを見つめるネギの潤んだ瞳に、抗議の色が滲む。劣情を揺さぶるそれに、コタローは小さく 苦笑した。 「…そんな顔すんなや。俺かて辛いんやで…?」 ならばなぜこんな仕打ちをするのだと、目で問うてくるのに口元を笑みの形に歪める。 「…イく時のネギの顔が見たいからに決まってるやろ?」 「……っっ!?」 耳元に落とされた言葉に、ネギの頬に朱が散る。上がりかけた抗議の声は、けれど口付けによって塞 がれ形を成すことはなかった。 再び押し入ってきた熱に、もはや堪えることもできなくなった嬌声が上がる。無意識に伸ばした腕は、 コタローに導かれるままその首にまわされた。途端始まった律動に、ネギはコタローに縋りつき嬌声を 上げた。 時折零れるコタローを呼ぶ声に、甘さが滲む。常より高く掠れたネギの声が、コタローの欲望にダイ レクトに伝わってさらなる熱を呼んだ。 「…ネギ…ネギ……っ。」 「…っぁ、コ、タロ…く……も…あ、ぁあ……っ!」 ようやく許された解放に、歓喜の声が上がる。過ぎた快楽に流され、ネギはそのまま意識を手放した。 「ん……。」 くすぐったさに、ネギは意識を取り戻した。 ゆっくりと瞳を開くと、自分を見下ろすコタローと目が合った。 「大丈夫か?ネギ。」 「コタロ…くん……。」 髪をゆっくりと撫でられながら、ネギはぼんやりとコタローを見つめた。 覚醒したばかりの脳は状況を即座には判断できず、どこか陶然とした表情で、ネギはコタローをただ 黙って見つめている。それに、コタローは苦笑を浮かべた。 「そんな顔で見つめんなや。ネギ。」 漏れた言葉の意味が掴めず、首を傾げる。それに苦笑を深めたコタローが、耳元にそっと囁いた。 「またしたくなるやろ?」 「な……っっ!?」 途端、ネギの頬に朱が散る。 身の危険を感じて慌てて起き上がれば、下腹部の滑りに気付き、更に顔が赤くなった。 「あ、わりぃ。まだなんもしてへんわ。これからするから、まだ横になっててええで。」 にっと笑って告げられた言葉に、一瞬反応が遅れる。瞬間言葉をなくしたネギを、コタローはあっさ りうつ伏せに寝かせると、腰を掴んで持ち上げた。 「わーっ!?ちょ、やめっ!コタロー君!!!」 とらされたあられもない格好に慌てて逃げ出そうとするが、腰を掴まれているため儘ならない。抵抗 らしい抵抗もできぬうちに、そこにコタローの唇が触れた。 「…………っっ!」 思わずびくりと反応するのに、羞恥に頬が朱に染まった。 ぴちゃりと水音を立てて舐められれば、意思に反し、体は小刻みに震える。シーツを握り締める手に、 自然と力が籠った。 「じ、自分でする、から……っ…放し、てよ……っ。」 震える声で懇願すれば、小さな笑いが零れた。 「ネギが自分で処理してんの、ここで見せてくれるんか?」 「バ…っそんなことするわけな…っ!ひぁ…っ!?」 不意に押し入ってきた指に、体が跳ねる。 「んじゃ。却下。」 「な…っっ!?」 「俺の好きにしてええんやろ?」 「さっきそう言うたもんなぁ?」と嬉しそうに言われ、一瞬言葉を失う。 イかせて欲しくて、けれど素直にそう言葉にできなくて、苦し紛れに告げた言葉の上げ足をそんな風 にとられるとは思ってもみなかった。 自分の失言に今更ながら気づいたネギは、小さな唸り声を上げた。 「あ、あれは…そういう意味じゃなくて……っ。」 微かに漏れた抗議の声に、コタローは手を止めた。指を抜きとり、言葉の先を促す。 「じゃなくて?」 「コ、コタロー君…が、その……。」 「俺がなんや?」 「……い、意地悪するから……っっ。」 「意地悪?したか?」 「したよ!」 「ああ、焦らしたんを怒ってるんか。でも好きやろ?」 「な……っ!?」 そう言ってにやりと笑うコタローに、思わず絶句する。 「僕はそんな……っ!」 「俺のことが。」 「……っ!」 ネギの言葉を遮るように囁かれたコタローの言葉に、再び言葉を失う。「好き」の意味を勘違いして いた自分に気づき、頬が淡く染まった。 「そやろ?ネギ。」 確信をもった響きに、その自信はどこからくるのだろうかと、思わず苦笑してしまう。けれど、それ は否定できないので、ネギは躊躇いながらも小さく頷いた。 「なら、問題なしやな。」 その言葉に満足げに笑うと、コタローはネギの頬に口付けた。 「というわけで続きを…。」 「ま、待ったーっっ!!」 慌ててコタローの下から逃れようとして、けれど逃れられず組み敷かれてしまう。 「あ、明日も仕事…っっ!」 「そやな。」 「そやなって、コタロー君だって学校でしょ!」 「そんな体力なしとちゃうわ。」 「そういう問題じゃないっ!もうすぐ試験だって…って、どこ触って……っ!?」 「ああもう、うるさいわ!もうすぐ試験なんは承知してるし、そやからもう1回なんやろ!」 堪らず叫んだコタローに、ネギは驚きに目を瞬かせた。 「何言って……??」 「試験前後は忙しいからヤダ言うたんはネギやろ!そやから明日から我慢しよう思ってんのやから、今 日くらい付き合うてくれたってええやんか!」 捲し立てられた、しかしどう聞いても我儘としか言いようのない願望に、ネギの目が点になる。返す 言葉をなくし、暫し呆然とコタローを見つめていたネギは、次の瞬間思わず吹き出していた。 「なんで笑うんや!?」 「だ、だって……っ。」 コタローが怒っているのは分かっているが、どうしても笑いを堪えられない。それでもシーツに顔を 押し付け、なんとか笑いを止めようと努力する。 以前、試験期間中だというのにことに及ぼうとしたコタローを、ネギは本気で怒って拒絶したのだ。 それを覚えていて、だからその間は我慢しようとコタローなりに考えているらしい。自分の「本気の否」 をきちんと嗅ぎ分けているところがホントに犬なんだなと思うと、おかしいやら、かわいいやらで、ど うしても笑いがこみあげてしまうのだ。 『もう、しょうがないなぁ。ホントに犬なんだから。』 「ネギ!」 激高したコタローに、ネギは苦笑して、その首に腕を絡ませた。 「笑ってごめん、コタロー君。うん、そうだね。試験期間中は勉強しなきゃ。だから明日から暫くは、 絶対に相手しないからね?」 にっこり笑って宣言され、コタローの耳が知らず項垂れる。分かってはいても、こうもはっきりと言 われるとショックなようだ。 「そ、そんなん言われんでも、分かっとるわ。」 「うん。」 コタローの強がりに、ネギが小さく笑う。それに、コタローは口をへの字に曲げた。 「だからね。」 ネギはそこで言葉を区切ると、コタローにそっと触れるだけのキスを送った。途端、コタローの耳が ピンと立ち上がる。剰え、ゆらゆらと揺れるしっぽにネギの笑みが深まる。 「あと1回だけ、コタロー君に付き合ってあげる。それでいい?」 頬を薄らと染め、ふわりと笑ったネギに、コタローの顔にも笑みが浮かんだ。 「充分や。」 言葉と共に重ねられた唇を、ネギは静かに受け止めた。 THE END 他ジャンルのR18指定のSSを読んでいて書きたくなったコタネギ(爆) しかし、書いている途中で何をコンセプトにしていたのか分からなくなると いう・・・。ダメじゃん。 しかし、うちのネギ君は、ホントに犬に甘い・・(苦笑)