「いい天気だね。ね、コタロー君。折角だから、どこか行こうか?」

			「どこか行きたいとこでもあるんか?」

			「んー、そういうわけじゃないけど、こんなにいい天気なのに部屋にいるなんて
			勿体無いなって。」

			「そやなぁ……。」

			「どこがいいかな。天気がいいから、室内より屋外のほうがいいよね。海かプー
			ルか、う〜ん。コタロー君はどこか行きたいところある?」

			 言いながら上げたネギの顔に影が落ちる。思っていたよりずっと近くにあった
			コタローの顔に、ネギの目が軽く見開かれた。

			「え?」

			 お互いの顔の近さに驚いたのも束の間、合わされた唇の感触に、ネギは更に目
			を見開いた。

			 突然の展開についていけず、ネギの反応が数秒遅れる。しかし、コタローには
			その数秒で充分だった。

			 瞬間固まったネギの体を抱き込んで、更に深く口付ける。自分の置かれている
			状況にようやく気づいたネギが腕の中でもがき始めても、抱く手は緩めない。コ
			タローは自分が満足するまで、ネギの唇の感触を楽しんだ。

			「…い、きなり…なに……?」

			 コタローの不埒な行動に、ネギは鋭い視線を向けた。しかし、目元を赤く染め
			た状態で睨まれても、怖くないどころか、寧ろ、コタローにとってみれば情欲を
			煽る興奮剤にしかならなかった。

			「出かけるのもええねんけどな。」

			 口元を笑みの形に歪めたまま、コタローは言葉を紡いだ。

			「折角の完全オフやねんから、部屋でゆっくりせえへん?」

			 コタローの右手がゆっくりとネギの頬をなぞる。言外の意味を雄弁に語る手の
			動きに、ネギの目が僅かに細められた。

			「……こんなにいい天気なのに?」

			「天気は関係あらへんやろ。たまたま休みの日が晴れってだけやん。」

			 悪びれもせずそう言ったコタローに、ネギが小さく溜息を漏らす。

			「しかも朝から……?」

			「2週間もまともにおまえに触れてへんねんで?それとも、どうしても海かプー
			ル言うてたか、行きたいんか?」

			「そういうわけじゃないけど。」

			「そやったらええやんか。それに、どうせ泳ぐんやったら……。」

			 言葉を区切ったコタローが、ネギの耳元に口を寄せる。そうして続きを囁いた。

			「シーツの海でのほうがええねんけど。」

			「ぶ……っっ!」

			 コタローの言葉に、ネギは思わず噴き出した。そうして声を上げて笑いだす。

			「笑うな!」

			「だ、だって……っに、似合わない……っっ!」

			 笑いすぎて苦しいのだろう。ネギは腹を抱え、苦しげに言葉を紡いだ。

			「どうせそういうキャラちゃうわ!もうええ!今日は1日ベッドに決定や!」

			 コタローはそう宣言すると、未だ笑いの収まらないネギを横抱きに抱きあげた。

			「わ!ちょ、コタロー君!?」

			「暴れんなや。あんま暴れっと、落とすで?」

			 腕の中で暴れるネギに、コタローは冷めた声でそう告げた。

			 思わず静かになったネギを、無言で寝室に運び込む。そうして少々乱暴に、コ
			タローはネギをベッドに放り投げた。次いで覆い被さってきたコタローに、ネギ
			が小さく溜息をつく。

			「もしかしなくても、さっき笑ったの、怒ってる?」

			「別に。」

			『別にって、怒ってるじゃん……。』

			 再度溜息をついたネギに、コタローが目を細める。

			「なんや、そんなにいやなら……。」

			「いやなんて言ってないよ。」

			「へ?」

			 予期せぬ返答だったのだろう。さらりと告げられた言葉に、コタローの目が点
			になる。

			「いやとは言わないけど……。……お手柔らかに。」

			 そう言って、ネギは照れたように微笑した。

			 コタローはネギの言葉に暫し呆然とすると、次いで唇を笑みの形に歪めた。

			「努力はするわ。……できるかは疑問やねんけどな。」

			 コタローの言葉に、ネギが苦笑を浮かべる。

			 今までの経験から、確かにそれがコタローにできるかと言うと「否」と言わざ
			るを得ないが、それでも、休みは今日1日だけなのだ。加減してもらわなければ
			身が持たない。

			「最大限の努力でよろしく。」

			「了解。」

			 くすりと笑った二人の唇は、どちらからともなく近づき重なった。







		 	THE END















			「休日」コタネギver.です。
			思った以上に甘く仕上がりました・・・。
			自分で書いててなんですが、コタの「シーツの海」発言にうけてしまい
			ました(笑)なんだかなぁ。

			出かけたらどうかと思うのですが、みんなして出不精(←違う)なのは、
			書いてる私のせいですかね(苦笑)