「あの……。」 私の膝の上に乗り上げ、向き合うという恰好を取らされているネギ君が、どこか所在 無げに俯いたまま口を開いた。 「なんですか?ネギ君。」 「外はいい天気なんですけど…。」 「そうですか。このような隠居生活をしていると、季節の変化にも疎くなりますねぇ。 そうすると、外は大分暑いでしょう?」 「はい…。」 たったこれだけで終わってしまった会話に、ネギ君は更に俯いてしまった。 静かな空間に、私の手がネギ君の髪を梳く音だけが微かにしている。 「……あの…。」 「なんですか?」 「……出かけないんですか?」 「どこかに出かけたいんですか?」 質問に質問で返す。と、ネギ君は暫しの間を置いて、口を開いた。 「…どこか行きたいところがあるわけじゃないんです。でも、折角いい天気なのに屋内 にいるのは勿体無いかなって、思うんですけど。」 「なるほど。」 ネギ君の言葉に、一応考えるふりをしてみる。そうしながらも、髪を梳く手は止めな い。 「この時季に行くところというと、海かプールか、そういったところでしょうか。」 独り言のように漏らした言葉に、ネギ君が顔を上げる。 「どちらも混んでいそうですねぇ。」 「…そうですね。」 「出かけるのは構わないんですが。」 「え?」 「そうすると、なかなか二人きりになる、というわけにはいかなくなりますからねぇ。」 「え?…あ…っ!?」 「そうなると、当然、こうしてネギ君に触れることもできなくなるわけです。」 「あ、や……っ。」 「私としては。」 「……っア、アル…っ。」 「折角の休みですから、二人っきりでゆっくりしたいと思うのですが。」 「んん……っ。」 「流石に外では、そうはいかないですからねぇ。」 「……ぁ、やぁ……っ。」 「それでも。」 「ん、ん……。」 「ネギ君がどこかへ行きたいと言うなら、私は構いませんよ?」 「……っは、ぁ……。」 「どこかへ出かけますか?ネギ君。」 「んっっ……っ。」 耳元に囁けば、ひくんと体を震わせて、微かな声を漏らすネギ君。瞳を潤ませて、恨 めしげな視線を向けてくるのに、にっこりと笑いかけた。 「ネギ君が出かけたい、と言うのなら、私は構いませんよ。お付き合いしましょう。」 「………。」 「外ではここのように大っぴらに触れることはできませんが、まぁ、その辺はなんとで も出来ますからね。」 笑んだままそう言えば、ネギ君が小さな唸り声を上げた。 「さて、ネギ君。どこに行きましょうか?」 再度の問いかけに、ネギ君は私の服を握り締めて胸に顔を埋めた。 「……もう、いいです…。」 小さく漏れた答えに、わざとらしく首を傾げてみせる。 「いいんですか?どこにも出かけなくても。」 私の胸に顔を埋めたまま、ネギ君はこくりと頷いた。それに満足した私は、小さく笑 みを浮かべた。 「では、折角ですから、外の暑さに負けないくらい熱くなることでもしましょうか。」 「え……?」 耳元の囁きに、ネギ君は驚いたように顔を上げた。その唇にそっと触れるだけのキス を落とす。途端真っ赤になるネギ君に、笑みが深まるのを抑えきれない。 「出かけるより、ずっと楽しめますよ?きっと、ね。」 THE END 「休日」アルネギver.です。 やっぱり出かけないんだという突っ込みはなしの方向で(苦笑)![]()