誰かが優しく髪を撫でる感触に目が覚めた。 ゆっくりと目を開ける。視界に広がるのは高い天井。ネギはそれをぼんやりと見つめた。 「目が覚めたか。」 声に視線を向ければ、大きな手が伸びてきてそのままくしゃりと頭を撫でられた。その瞬間、 さっきまでの感触は、この手がもたらしていたのだと知る。 「ラカンさん…。」 漏れた声があまりに掠れていて、そうしてなぜこんなに掠れてしまったのかを思い出し、頬 が羞恥に淡く染まる。眼前でそうさせた張本人がにやりと笑うのに、羞恥が増長されるのは仕 方のないことだろう。 「ずいぶんいい声になったな。」 「……誰のせいだと思ってるんですか……。」 笑ってそう言うのに、ネギは頬を染めたまま口を尖らせた。その様があまりに可愛らしくて、 ラカンは小さく笑ってもう一度頭を撫でた。そうしてそのまま耳元を、頬を擽るように、指を ゆっくりと滑らせる。それに、ネギが軽く肩を竦める。 「くすぐったいです、ラカンさん。」 ネギは困ったように小さく笑うと、その手から逃れようと身じろいだ。しかしラカンはそれ に構わず、髪を、頬を撫で、その感触を楽しんでいる。 「ラカンさん。」 抗議の意を込めて名前を呼んでみたが、応えはなく、撫でる手は止まる気配もなかった。 多少のくすぐったさはあったが、その感触は決して嫌ではなかったから、結局ネギはラカン のしたいようにさせることにした。 髪を撫でていた手が、頬を辿り、首筋から胸元に至る。そうして鎖骨の窪みをなぞっていた 指が、そっと唇に触れた。ゆっくりと唇をなぞる指の感触に、くすぐったさ以上のものを感じ たのか、ネギは小さく身じろいだ。 「ラカンさん……。」 微かに震えを帯びた声にひかれるように、互いの距離が縮まる。落とされた触れるだけのキ スに、ネギの体が小さく震えた。 「ラカン、さ……。」 何かを言いかけたネギの、その言葉を遮るかのように繰り返される、触れるだけのキス。行 為の先を感じ取り緊張に体を強張らせたのを宥めるようなそれに、それ以上はないのだと、ネ ギはどうやらそう解釈したらしい。徐々にネギの体から力が抜けていく。 「ん……。」 微かに漏れる声。目を閉じて、どこかうっとりと口付けを受け止めるネギの髪を、ラカンは ゆっくりと撫ぜた。そうして耳元、頬、首筋を順に辿り、鎖骨の窪みに指を滑らせた。 緩慢な動作でなされたそれに、そうして繰り返される優しい口付けに、ネギはすっかり油断 していた。ラカンがそれだけですむはずはないと、身をもって知っていたにもかかわらずに。 いつの間にか背に移動していた手がゆっくりと撫ぜる感触に、くすぐったさ以上のものを感 じ、ネギの体が小さく反応する。思わず目を開けた瞬間、ラカンと目があった。その目に紛う 方なき情欲の色を見、ネギは慌ててラカンから離れようと身を捩った。しかし、それを許すは ずもなく、細い体はあっけなくラカンの手に落ちた。 「ラ、ラカンさ…っやめ……っ!」 それでも逃れようと往生際悪く暴れるネギを、ラカンは片手で簡単に押さえこみ、口付けで その抗議の声を塞いでしまった。 「ん、んん…っっ!」 言葉にならない抗議は、しかし激しい口付けで封じ込められる。背を伝う指が双丘に至り、 未だ昨夜の情事のあとにぬめるそこにゆっくりと差し入れられれば、ラカンの腕の中、ネギの 背が弓なりに反った。 「ん、は、ぁあ……っ!」 ようやく口付けから解放されたネギの口から零れたのは、抗議の言葉ではなく、甘い嬌声 だった。 そこを解すようにゆるゆると蠢く指の感触に、ネギはラカンの腕にしがみつき、拒絶の意を 表すように何度も頭を振った。 「あ、や…や、め……っ、も…無理で、す……っ。」 限界を訴えるネギの首筋に、印を刻みつける。白い肌に色づいたそれに、ラカンは小さく 笑んだ。 「も、やだ…っっラカンさ、ぁ……っ。」 薄らと浮かんだ涙を口付けで拭うと、ラカンは指の動きを止めた。そうして、ゆっくりと引 き抜いた。 異物が取り除かれたことによる安堵にか、ネギの体から力が抜ける。ベッドに力なく横たわ るネギを、ラカンは真っ直ぐに見つめた。 「……そんなに俺に抱かれるのは嫌か?ネギ。」 静かな問いかけに、ネギは頬を淡く染めた。 本当に嫌ならば、最初からこのようなことなどさせない。嫌ではないから、ラカンのあまり に激しすぎる行為にも、抗議はしても、本当の意味での抵抗はしていないのだ。とはいえ、こ う度々貪られては体力がもたない。現に、昨夜もここまで声が掠れるほど啼かされたのだ。流 石にこれ以上は無理だと、ネギがそう思うのは無理からぬことだろう。 「……そうじゃなくて……。……昨日だって散々したじゃないですか。これ以上は無理です。 体がもちません。だからやめてください。」 「…そうか。」 上目使いではっきりとそう言ったネギに、ラカンは目を閉じそうぽつりと呟いた。 暫しの沈黙が流れる。 目を閉じ、無言のまま何もしてこないラカンに、自分の言い分が受け入れてもらえたのかも しれないと、ネギが勘違いしたのも無理はないだろう。しかし、ゆっくりと目を開けたラカン のその瞳に、未だ消えぬ情欲の色を見た瞬間、ネギは自分の考えの甘さを呪わずにはいられな かった。 「ラカンさ……。」 「ネギ。残念だが、俺のほうは止めようがねぇ。諦めるんだな。」 そう言って物騒な笑みを浮かべたラカンに、ネギの顔が赤く、次いで青くなった。 「諦めろって、ラカンさん…っ!」 ネギの抗議の声を無視し、その体をあっさりと組み敷いたラカンは、いつの間にか手にして いたコンドームの袋を噛み切った。悲しいことに最早見慣れてしまったそれに、ネギの目が驚 きに見開かれる。 「ラカンさん…っ、なんでそんなもの…っ!?」 「あ?なんだ、生のほうがいいのか?俺はいいが、中に出しちまうと、後で辛いぞ?」 「いいわけありません!中になんか出さないでください!いや、そうじゃなくて…っっ!」 そんなやり取りの最中も、ラカンは手慣れた動作でそれをつけると、ネギの腰を掴んでそこ へ押しあてた。 「や、やめ…っ!や…――――――――――――――…っっ!」 ゆっくりと押し入ったそれに、ネギの口から声にならない悲鳴が漏れた。 押し入った熱の熱さに目が眩む。浅い呼吸を繰り返しながら、ネギはラカンの腕に爪を立て、 ふるふると頭を振った。 「も、やぁ……。」 知らず潤んだ瞳に、宥めるようなキスが落とされる。それに、ネギは緩々と目を開けた。 ネギを見下ろしていたラカンと視線が絡む。口元を笑みの形に歪めたラカンが、ゆっくりと 口を開いた。 「安心しろ、ネギ。流石に昨日はやり過ぎたからな。まぁ、2、3回やれば満足するだろ。」 にやりと笑って告げられた言葉に、ネギの顔が真っ青になる。 安心材料に全くならないその言葉に、しかし抗議の言葉は、次の瞬間抽送を始めたラカンに 阻まれ言葉にならなかった。 結局、ラカンの好きなだけ貪られたネギは、目が覚めたらとっととベッドから出ることを固 く誓うのだった。 THE END 初のラカンネギ蔵物でございます(苦笑) といっても、UPが初めてなだけで、実は既に出来上がっている話も あったりするのですが。諸事情により、まだUP出来ず仕舞いです。 その前の話を書かないと、意味が分からなくなるのですよ(苦笑) それはともかく。 思ったよりさらっとネタが出来て、自分でもびっくり(笑) ラカンネギが好きな方々、OKかどうかのご意見、お待ちしておりま す(^^;)