Happy Halloween









			「ネギ君、大丈夫かい?」

			 ネギ君の姿を皆から隠すように立ち、身を屈め、そっとその髪に触れた。

			「…タカミチ。」

			 瞳がゆっくりと僕を認め、次いで小さな笑みが浮かんだ。

			 アルコールの入った頬はほんのり色づいて、眠いのだろう、どこか惚けた瞳と相俟って、得も
			言われぬ色香を放っている。それに小さく苦笑して、髪に触れていた手を頬に移動させた。

			「赤くなってるね。未成年のネギ君に飲ませるとは、あの人たちにも困ったものだ。」

			 苦笑交じりに漏らした言葉に、ネギ君の笑みも苦笑に変わる。それだけで応えがないのは、
			『あの人たち』の一人が自分の父であるからだろう。

			「眠いんじゃないのかい?目がとろんとしてるよ。」

			「ん…少し、ね。」

			 頬を指でそっとなぞれば、ネギ君の瞼がゆっくりと閉じられた。無意識の媚態に、苦笑が深ま
			る。

			 そのまま暫くの間、僕はネギ君の頬の感触を楽しんだ。

			「……似合うね。」

			「…え?」

			 不意に漏らした言葉に、ネギ君が顔を上げて僕を見た。軽く首を傾げているのに、小さく笑い
			かける。

			 『ハロウィンパーティー』と称されたアルのお茶会には、紅き翼のメンバーを含んだ数名が招
			待されていた。仮装が必須の今回、ネギ君は、ナギに無理矢理させられたという『ミニスカ風狐
			娘』の格好をしてきた。『ミニスカ風』と称すだけあって、その薄桃の着物は通常の着物に比べ
			て酷く丈が短く、太ももが半ばまで露わになっている。着物と同じ色のソックスがその柔肌をほ
			とんど隠しているが、僅かにのぞくその肌の白さが、劣情を誘ってやまない。狐の耳としっぽも、
			それを増長するものでしかなかった。

			「『ミニスカ風狐娘』の格好。可愛いよ、ネギ君。」

			「タ、タカミチ…っ!」

			 僕の言葉に、ネギ君の頬が更に赤味を増した。

			 頬に触れていた手を、緩慢な動作で顎へと移動させる。そうして、ゆっくりと顎を持ち上げ、
			上向かせた。

			「タカミチ……?」

			 不穏な気を感じたのか、ネギ君の瞳が不安げに揺らめく。数度目を瞬かせるのに、自然笑みが
			深まる。

			「可愛いよ、とてもね。……食べてしまいたいくらいだ。」

			「え……。」

			 言いながら、そっと触れるだけのキスをする。耳まで真っ赤になったネギ君が、目を大きく見
			開いた。次いで何か言おうと開かれた口を、口付けで塞ぐ。そのまま深く口付ければ、目を閉じ
			たネギ君は、小さく体を震わせながらも素直に受け止めた。

			「…ぁ……。」

			 吐息が甘く零れる。

			 凭れかかってきた小さな体を受け止め、背後の視線から隠すようにマントで包んだ。

			「……そろそろ帰るかい?ネギ君。」

			 小さな問いかけに、腕の中、ネギ君の体が小さく震えた。

			 言外の意を汲み取ったのだろう、揺れる瞳が僕を見、そうしてゆっくりと伏せられる。暫しの
			間を置いて、小さく、だがはっきりと、ネギ君は頷いた。それに、僕の口元に自然と笑みが浮か
			ぶ。

			 さて、問題は背後の視線だ。

			 先ほどから痛いほど感じている視線に、友好的なものは一つとしてない。やっかみを含んだ敵
			意も露わな視線の主たちから、さて、どうやってネギ君を連れていくか。

			 容易ならざる状況に、僕は僅かに口元を歪めた。









			 THE END











			
			ぎりぎり、ハロウィン当日にUPです(苦笑)
			間に合ってよかった〜(><)
			本当はイラストを描くつもりだったんですが、時間がなく断念。
			日にち関係なく、描くかな。

			去年はコタ(犬)ネギ、フェイトネギ、ナギネギだったので、
			今年はタカネギ(笑)他もやりたかったな。ネタないけど(爆)

			これ、フリーですって言ったら、誰かもらってくれるかしら?

			タイトルを考えてくれたれいこさんには、問答無用で捧げちゃ
			うぜ!(笑)ダンケです!