※注意 この話は、278話及び279話のネタばれを含みます。 本誌(マガジン)を読まれていない方で、少しでもネタばれは嫌!とおっしゃる方は 閲覧をお控えくださいますよう、お願いします。 読まれた後の苦情は一切受け付けませんので、悪しからずご了承ください。 大丈夫な方だけ、スクロールしてご覧ください。 「……ギ、ネギ!」 「…………っ!」 自分を呼ぶ、どこか切迫した響きに意識が覚醒する。 注がれる視線に顔を向けるが、視界が霞んで、覗き込むその顔がよく見えない。 「ラカン…さ……?」 漏れた、掠れた声に呼応するように、手が伸ばされる。そうして、そのまま腕の中に抱き込まれた。 「……どうした?怖い夢でも見たか?」 「夢」という単語に反射的に震えた体を、力強い腕が、さらに強く抱き締めてくれた。 「………夢……。……そう、ですね……。」 そう呟きながら、僕は無意識にラカンさんにしがみついた。そんな僕をあやすように、ラカンさんは ゆっくりと背を撫ぜてくれた。 その心地よい感触に身を任せながら、ラカンさんの逞しい胸に耳を寄せる。聞こえてくる規則正しい 鼓動に、思わず安堵の吐息が漏れた。 「良かった…夢で……。」 あれが夢でないことは承知しているけれど、それでも、今ここにある存在は夢幻ではない。現実だ。 ラカンさんは、確かに、ここに、いる。 その事実に、知らずに涙が溢れだす。 「どうした?ネギ。」 それを見咎めたラカンさんが、僕の顎を掴み、顔を上げさせる。泣き顔が恥ずかしくて隠そうとした 腕は、しかし、あっさりとラカンさんに封じられた。 「なんでも……。」 「急に泣き出して、なんでもないこたぁねぇだろ?ほら、何があったか言ってみろ。」 「……ここに、ラカンさんがいることが、嬉しくて……。」 「そう思ったら思わず…。」と、観念して話をすれば、ラカンさんの眉が僅かに顰められた。次いで 苦笑が漏れる。 「5年前のことか。」 漏れた呟きに、体が強張る。それに、ラカンさんの苦笑が深まった。 「バカだな。俺はこうしてここに、おまえの側にいるだろ?あんな昔のことなんざ、とっとと忘れちま え。」 「そうなんですけど…。」 ラカンさんの言葉に、思わず苦笑してしまう。 忘れてしまえと、簡単にそうできたら、もっと楽になれるだろう。けれど、僕の中であの日のことは、 しこりのようにいつまでも残っていて、決して忘れ去ることが出来ない。 『無慈悲な真実』。 さらさらと、それ自体まるで夢幻ででもあったかのように、風に掻き消されていく姿。 叫ぶように呼んだ名に、けれど、答えは二度とかえらず。永遠の喪失を知ったあの瞬間―――。 あの日を思い出し、恐怖に体が震えた。思わず強くしがみついた僕を、ラカンさんは何も言わず、た だ抱き締めてくれた。 「……なぁネギ。この俺は、幻か?」 静かな問いかけに、一瞬意味が掴めなかった。けれど、意味を理解すると、首を力いっぱい横に振っ た。 「幻なんて、そんなことあるわけ……っ。」 「だったら、確かめてみるか?」 「………っ!」 真っ直ぐに見詰めてくる瞳の奥に、見知った感情が揺らぐのに気づいた。頬をゆっくりと撫ぜる指に その意図を知り、思わず頬が朱に染まる。 「どうする?」 落とされた耳元への囁きに、ぞくりと背を走る感覚。点された快楽の火を自覚してしまい、頬の赤味 がさらに増した。 「ネギ?」 ダメ押しの囁きに、僕はゆっくりと頷いた。 「ぁ、あぁ……っっ!」 その存在を知らしめるかのように、殊更ゆっくりと押し入ってくる熱に、堪え切れず、掠れた嬌声が 零れ落ちた。 ラカンさんと向き合う形でその上に座らされた僕は、自重で、常以上にそれを深く受け入れていた。 深く、深く穿たれた熱に眩暈がする。 思わず縋りついた僕を、ラカンさんはそのまま強く抱き締めた。 普段なら性急に動きだすのに、今日はまるでその存在を知らしめるかのように酷く緩慢な動作で腰を 揺すられる。酷くゆっくりと抜き、そして突き刺す度に、そこから濡れた音がする。堪え切れず漏れた 嬌声が、それに混じる。それが羞恥を誘い、けれど声を止めようがなかった。 「あ、ん、んん……っは、ぁ…、ラ、カン…さぁ……っっ。」 快楽に霞む意識の中、その逞しい体にしがみつく。 知らず滲む涙に、視界がぼやけて良く見えない。 ラカンさんの、その存在を確かめたいのに、こんなに近くにいるのに、今、どんな顔をしているのか すら分からないのが、酷くもどかしかった。焦燥にも似た思いに、無意識に唇を噛み締める。 役に立たぬ視覚を、目を瞑ることで自ら封じ、代わりに身の内にある存在に意識を集中した。 ゆっくりと抽送を繰り返す熱棒。それを体内で感じる度に、安堵とも歓喜ともとれる感情がこみあげ てくる。衝動に任せラカンさんに必死でしがみつくと、その動きに合わせるように自ら腰を揺らめかし た。身の内でどくどくと脈打つそれが、僕の動きに更に容量を増すのが嬉しかった。 「…ネギ。」 耳元に落とされる、どこか掠れたラカンさんの声。それにすら過敏に反応する自分がいる。 「分かるか?俺が。感じるか?俺を。」 「は、あぁ……っ!」 言葉と共に深く穿たれ、嬌声が漏れる。そのまま動きを止めたラカンさんに、僕は、閉じていた目を ゆっくりと開いた。 視界は相変わらずぼやけたまま。その顔をはっきりと見ることはできない。けれど、先ほどまで感じ ていた不安はほとんど消えていた。 僕は真っ直ぐにラカンさんを見つめると、息を整え、ゆっくりと頷いた。 「…はい、ラカンさん……。」 手を上げ、そっと、ラカンさんの頬に触れる。触れたその感触に、思わず小さな笑みが浮かんだ。 「俺はここにいる。」 「はい…。」 「おまえの側に。」 「はい。」 「ずっと、な。」 「はい。」 言葉と共に、額に、目に、頬に、口付けが落とされる。そうして、最後に、唇に。 触れるだけで一度離れ、次いで深く口付けられた。 「おまえが嫌だって言っても、離れねぇよ。」 口元を歪めて言われたのであろう言葉に、自然と笑みが零れる。 「……はい、ラカンさん。」 そう返して、そっと、ラカンさんの唇に唇を重ねる。自分の行動が気恥ずかしくて、顔を隠すように しがみつく。そうして、そっとその耳元に囁いた。 「ずっと、側にいてください。」 THE END パラレル設定のラカンネギ。ネギ君は15歳の設定です。 278話を読んで考えた話。 ちょっとセンチな話ですみません。