CONSULTATION 「相談というのは他でもない、ネギ君のことなんだけれど。 ……実は、このところ、ネギ君のことばかり考えてしまうんだ。 ずっと、そばに居たい。 抱き締めて、キスをして、昼も夜もなく、ネギ君を感じていたい。 できるなら、この腕に閉じ込めてしまいたい。 誰の目にも触れさせることなく、僕だけを見、僕だけを感じて欲しい。 まるで分別のない子供のようだとは思うけれど、そう切望する自分を止めようがない。 ……なぜこんな気持ちになるのか、自分でも分からなくてね。なにしろ、初めてのことだから。 なぜ僕は、こんなにもネギ君を欲してしまうんだろう。 僕だけのものにしたいと、なぜこれほどまでに切望してしまうんだろう。 この独占欲がなんなのか、その理由が分からない。 分からないけれど、思いは募る一方なんだ。 僕は、どこかおかしくなってしまったんだろうか。 君はどう思う? ネギ君。」 そう言って顔を上げたフェイトの視線から、僕は逃げるように目を伏せた。 顔が熱くて仕方がない。多分、真っ赤になっているだろう。 「ネギ君?どうしたんだい?顔が真っ赤だよ。」 「な、なんでもないっ!」 「なんでもない。」と答えたけれど、先のフェイトの言葉に、内心は動揺しまくっていた。 抱き締めたいだとか、キスしたいだとか、そんなことを面と向かって言われて平静でいられるほ ど、僕は人生経験豊富でもなければ大人でもない。しかも、なぜそんなふうに思うのか分からない なんて相談、何だって当人にするのか。そういうことはもっと他の、そう、第三者にするもんじゃ ないだろうか。尤も、フェイトがこんなことを相談できる友人を持っているとは思えないけれど。 でも、だからって僕に相談しないで欲しい。 「なぜそんな風に思うのか?」なんて言われても、僕に分かるわけがないじゃないか。 分かるのは、フェイトが僕に執着しているということ。それも相当に強く。 でもそれがなぜかなんて、僕に分かるわけがない。 というか、こっちが訊きたいんだけど! 「……なんで、僕にそんな相談を…?」 気持ちを落ち着かせるため、すっかり冷めてしまった紅茶を口にする。入れてあった砂糖の甘さ が、やけに口に残った気がした。 「君なら答えを出してくれるんじゃないかと思ってね。」 フェイトはさらりとそう答えると、僕の紅茶同様、すっかり冷めてしまっているだろうコーヒー を一気に飲み干した。 「で、君はどう思う?ネギ君。」 「どうって……。」 真っ直ぐに見つめられ、視線を逸らせなくなる。 フェイトが僕になぜそこまで執着するのか、それが何に起因するのか、そう訊かれても、正直、 僕には分からない。 思い当たる感情がないわけではないけれど、でも、フェイトが僕に、なんて、そんなこと、ある わけがない……と、思う。 「……僕には分からないよ。悪いけど……。」 「そう。」 呟くように零した言葉に、けれど落胆した様子もなく、フェイトはゆっくりと目を閉じた。そう して、少しの間を置き目を開けると、僕を見つめて僅かに口元を笑みの形に歪めた。 「ネギ君なら、この感情に名前をつけてくれるかと思ったんだけれど。残念だ。」 何か含んだような笑みと言葉に、担がれたのかもしれないと思い当たる。 「……もしかして、フェイト、僕のことからかってる…?」 思わずそう問えば、フェイトは僅かに笑みを深めた。 「まさか。僕は本当に君のことばかり考えているんだよ。寝ても覚めても、ね。」 「う……。」 そう言われてしまっては、口を噤むしかない。 でも、そう言いながらもフェイトの笑みはどこか楽しそうで。 だからきっと、やっぱりフェイトは僕をからかってるんだと思うことにした。 というよりも、そう思いたかったのかもしれない。 けれど、その思いを否定するかのように、僕を真っ直ぐに見るフェイトの瞳はどこまでも真摯 だった。 この時のフェイトの言葉が嘘でもからかいでもないことを、僕はその後、身をもって知ることに なる。 THE END 当事者に相談は反則ではないかと(笑) でもフェイトならありかと思ったんですが、どうでしょう。![]()