CRAFTY











				「はぁ……。」

				 ネギは溜息にも似た息を1つ吐くと、ゆっくりと上体を起こした。

				 全身のだるさと下腹部の滑りに瞬間眉を顰めながらも、ネギは片足をそっと床に下ろした。
				そうしてもう一方を下ろそうとした途端、逞しい腕が腰に巻きついた。

				「え…?わ…っ!?」

				 状況を認識するより早く、引き寄せられる。そのままベッドに逆戻りさせられた上に、組み
				敷かれてしまったネギは、顔を青褪めさせた。

				「ラカンさん!?ちょ、ちょっと待ってください!これ以上は無理……っっ!」

				 ネギの悲鳴に近い抗議の声は、非情にもスルーされた。

				 ネギの言葉など聞こえないとばかりに、ラカンは先までの情事に濡れそぼったそこにゆっく
				りと指を差し入れた。そうしながら、細い首に噛みつくように口付ける。

				「ん、ぁ…っ!」

				 途端上がった小さな嬌声とひくつく体に、ラカンが喉の奥で笑う。

				「や、め……っラカンさ…っ。」

				 緩々と蠢く指と体を弄る手に反応しながらも、ネギはラカンを引き剥がそうと懸命にもがい
				た。尤も、そんな抵抗、ラカンにとってはないに等しいものだったが。

				 もがくネギに構わず、2本目を差し入れる。抵抗などさして感じさせずに受け入れるそこに、
				零れ落ちる嬌声に、ラカンは口元を笑みの形に歪めた。

				「んん…っ!…は……っ…も、ホント…に……やめ……っ。」

				 ネギは懸命に身動ぎしながら、緩く頭を振り続けた。

				 体はこんなにも素直なのに、一向に屈服しないネギに、ラカンはゆっくりと上体を起こした。

				「どうした?やけに嫌がるな、ネギ。」

				 頬に手をかけ、そう問えば、ネギは閉じていた瞳をゆっくりと開いた。そうして、ラカンに
				潤んだ瞳を向ける。

				「なんで、こんなに……したがるんですか…?…これ以上は無理です…。もう、やめてくださ
				い、ラカンさん……。」

				 昨夜から、休む間もほとんどないまま繰り返される行為に、ネギの体は限界寸前だった。精
				神も悲鳴を上げかけている。これ以上続けたらおかしくなってしまうのではないか、とまで
				思ってしまうほどだ。それなのに行為を続けようとするラカンに、ネギは困惑を隠せなかった。

				「ラカンさん…っ。」

				 無言のままのラカンに、ネギが焦れたように声をかける。

				 それに呼応するかのように、ラカンはネギの顎に手をかけると、ゆっくりと顔を近づけた。

				「ラカンさ…。」

				「本当に嫌なら、本気で抵抗してみせろ。」

				「え……?」

				 ラカンの言葉に、ネギの目が驚きに見開かれる。

				「ラカンさん…?」

				「力づくで排除すればいい。本気で俺を拒絶しろ。おまえならできるはずだ。そうだろう?ネ
				ギ。」

				「ラカン…さ……。」

				 5年の時を経て、ラカンを上回る力を得たネギならば、それは確かに可能だろう。

				 けれど。

				「……………〜〜。」

				 ネギの表情が、驚きから困惑へと変わっていく。そうして、拗ねたように口を曲げると、恨
				めしげな目でラカンを見つめた。それに、ラカンの口元に笑みが浮かぶ。

				 きっと、できないと分かっていての言葉。それとも、試しているのか。

				 そのどちらでもありそうなラカンの笑みに、ネギは思わず頬を膨らませた。

				「くっ。だったら諦めて抱かれてるんだな。ネギ。」

				 言葉と共に口付けられる。そうして再開された行為に、ネギは諦めたように抵抗をやめた。

				 その様に、ラカンが喉の奥で笑う。

				「……ズルイ……。」

				 くつくつと笑うラカンを恨めしげに見ながら、ネギは悔しげにそう呟いた。












	
				THE END














			


				本当は漫画にしたかった話。
				拗ねたネギ君は描きたかったなぁ…。
				そして、蔵に置こうか悩んだ話でもあります(苦笑)