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「…ネギ君。」
耳元に、充分に欲を含んだ声が落とされる。
途端上がりそうになる嬌声を、ネギは辛うじて堪えた。
「ネギ君。」
再度の呼びかけ。しかし、ネギは固く目を閉じたまま、フェイトと視線を合わせようとは
しなかった。
「どうしても、嫌かい?」
囁きに、ネギはゆっくりと目を開いた。そうして、フェイトに鋭い視線を向ける。
「…決まって…る……だ、ろ……。」
それだけ口にすると、ネギは苦しげに息を吐き出した。
「絶対に?」
「ぜった、あう……っ!」
拒絶の言葉は、フェイトの不埒な手によって遮られた。
埋め込まれた指が、緩々と蠢く。決して達してしまわぬよう、僅かに的を外した愛撫に、
ネギは苦しげに頭を振った。
もうどれだけの間、こうして快楽に苛まれているだろう。全身をくまなく愛撫され、それ
でも、一度も達することを許されない。それも、フェイトの頼みに頷かない、ただそれだけ
のために、ネギはこんな目にあっているのだ。
「理不尽だ!」と抗議したいのは山々だったが、しかし、口から洩れるのは、既に嬌声で
しかなかった。
「や、あ…っ!も…フェイ…ト……っっ!」
求めるように名を呼ぶネギに、けれどフェイトはそれに応えることなく、逆に愛撫の手を
止めてしまった。
「フェ…ィト…っ!」
「なら、着てくれるかい?ネギ君。」
「ヤ…だぁ……っ。」
耳元に落とされた言葉に、ネギは苦しげに、それでも拒絶の意を表した。
「なかなか強情だね。それとも、こういうシチュエーションが好みなのかい?」
「…そんな、わけなっ、あぁ…っっ!」
上げた抗議の声は、不意に突きたてられた熱棒に、言葉にならなかった。
衝撃に達しそうになるのを、フェイトの手が根元を押さえてそれを許さない。奥まで入り
込んだきり動きを止めたフェイトに、焦燥感が募る。苦しげに、ネギは何度も頭を振った。
「も…やめ……。」
震える声が、許しを乞う。それに、フェイトはゆっくりと身を屈めると、ネギの耳元に今
日何度目かの願いを囁いた。
「なら、僕の望みを叶えてくれるかい…?」
「そうしたら、イかせてあげるよ。」と、続く言葉にネギは身を震わせた。
先までのような、明確な拒絶はなかった。けれど、諾もなく、ネギはただ苦しげに唇を噛
み締めている。
「ネギ君?」
どうあっても譲る気のないフェイトに、結局、折れるしかないのはネギのほうだった。
応えを促すフェイトの声に、ネギの唇が震える声で言葉を紡ぐ。
「……わ……かった……から……。」
一息後に続いた「早く…。」という微かな声。けれど、フェイトはそれでは不十分だとば
かりに、動こうとはしなかった。
「では、はっきりと口に出して言ってもらおうか。」
「え……?」
耳元に囁かれた言葉に、ネギはフェイトに潤んだ瞳を向けた。それに、フェイトの口元に
微かな笑みが浮かぶ。
「「あんなのは約束じゃない。」と、有耶無耶にされては困るからね。きちんと言葉にして
もらうよ。「僕はフェイトの選んだ振袖を着ます。」とね、ネギ君。」
「な…に……?」
ことりと、何かをサイドボードに置く音が耳についた。
反射的に視線を向け、そうして目にしたものに、ネギは思わず目を見開いた。
「な……っ。」
サイドボードに置かれていたのは、『鵬法璽(エンノモス・アエトスフラーギス)』だっ
た。
そうまでして自分に振袖を着せたいのかと、怒りを通り越して呆れてしまう。けれど、魔
法具による強制遵守など冗談ではない。そんなものを持ち出されては、フェイトの言うよう
になど、とてもではないが言葉にできるはずがなかった。
「や、だ……っ。」
「……そう。」
ネギの口から、拒絶の言葉が漏れる。陥落寸前だったネギの思いがけない拒絶に、それな
らばと、フェイトはゆっくりと抽挿を始めた。
「あ、あ…っやぁ……っ!」
的を僅かに外した愛撫に、思わず腰が揺らぐ。快楽の責め苦に、ネギは苦しげに何度も頭
を振った。
「君がどうしても嫌だと言うなら、仕方ない、このままだよ。それでもいいのかい?ネギ君。」
言葉と共に、ネギ自身に指が絡められる。途端、跳ねる体。苦しげな嬌声が零れ落ちた。
「あぁ…っや、め…っフェイ、トぉ……っ!」
懇願は、けれど叶えられることはなく、根元を押さえたままの手は外されることはなかっ
た。
「言葉にしてごらん、ネギ君。そうすればイかせてあげるよ?」
緩やかな抽挿を繰り返しながら、フェイトがそっと、ネギの耳元に毒を注ぎ込む。最早、
ネギには頭を振る気力すらなかった。
「ネギ君?」
「あ…、わ、かった……。着…る……。」
「何を?きちんと言葉にしなければダメだよ、ネギ君。」
「フェ…トの……。」
「僕の?」
「んぁ…、選……んだ、…振袖……、1回だけ着るか、らぁ……っ。」
「もうイかせて……っっ。」と、続いた言葉に、けれどフェイトは小さく苦笑した。
「そうくるか……。……仕方ない、今回はそれで妥協しよう。」
ネギによって「1回だけ」と制限をつけられてしまったことにより、いつでも望んだ時に
着てもらおうというフェイトの思惑は上手くかわされてしまったことになる。それでも言い
直しを強要しなかったのは、冷静に見えて、フェイトも相当に焦れていたからだ。
フェイトは根元を押さえていた手を外すと、その滑らかな背に一つ口付けを落とした。そ
うして腰を掴むと、先までの緩やかさはどこへやら、激しく抽挿を繰り返した。
「は、あ、あぁ……っ!」
激しい抽挿に堪らず、ネギは思いを吐き出した。けれど、行為は止まることなく続けられ
る。腰を激しく揺さぶりながら、フェイトは手で唇で愛撫を施した。
胸の突起を摘み、脇腹を撫で、背に口付けを落とす。焦らしたのと同じだけ自分も焦れて
いたのだと、知らしめるような行為。
結局、ネギが意識を手放すまで、行為は続けられた。
翌朝、満面の笑みで
「で、振袖だけれど、ネギ君は何色が好みだい?」
とのたまったフェイトの顔面に、ネギは渾身の力で枕を投げつけた。
THE END
『寿ぐ』フェイトネギver.の蔵ver.(ややこしい)です。
話が話なんで表にはちょっと、で、2つに分けたと。
尤も、いろんな意味でぬるいんですけれど(苦笑)
表にも書きましたが、フェイトもネギも15歳の設定です。
でもって、こちらから読んでくださると、分かりやすいです。