「STAND BY ME」、「AFFECTION」と同一設定のパラレルです。 そちらを読んでからのほうが、状況が分かりやすいかと思います。 まだの方は、そちらを読後にご覧いただければ幸いです。 「海外出張」と言う名目で魔法世界へ出かけた僕が、任務を終えて帰国したのは、 既に日付も変わろうというころだった。 時間を考えれば、そのまま自分の部屋へ帰るべきなのだろう。けれど、預けていた ネギ君のことが気がかりで、僕は迷惑を承知で学園長宅を訪れた。 携帯で往訪を連絡していたためだろう、夜分遅くにもかかわらず、僕はすんなりと 学園長の部屋へ通された。 「遅くにすみません。」 非礼を詫びれば、即座に「まったくじゃ。」と返される。のみならず、 「どうせネギ君が心配で来たんじゃろう。」 と図星を指されれば、苦笑するしかない。 「それで、ネギ君は?」 「お主が帰ってくると聞いて、起きて待っておる。報告など明日でいいから、さっさ と行って安心させてやれ。」 「すみません。お言葉に甘えさせていただきます。」 言葉と共に、ネギ君が待っているのであろう部屋の扉が身振りで示される。僕は学 園長に向かって軽く会釈をすると、そのまま踵を返しネギ君の待つ部屋へと向かった。 「今日はもう遅い。寝間着も用意しておる。お主も泊まっていくがよい。」 「はい、ありがとうございます。」 背後にかけられた言葉に、振り向きざま礼をする。学園長の配慮に感謝しつつ、僕 は部屋の扉をゆっくりと開けた。 部屋の明かりは消されており、ベッド脇のサイドテーブルの上に置かれたライトだ けが、部屋を薄らと照らしていた。 「ネギ君?僕だよ、タカミチだ。今帰ったよ。」 「タカミチ!?」 ネギ君を驚かせないよう、ゆっくりと扉を閉めながら声をかければ、嬉しそうな声 と共に、布団を跳ねのけたネギ君がこちらを振り返った。そうして、ベッドから飛び 降りると、僕の方へ駆けてくる。 「お帰りなさい!タカミチ!」 「ただいま、ネギ君。」 勢いのまま飛びついて来たネギ君を抱きあげ、その柔らかな頬に口付けた。それに 擽ったそうに笑うネギ君が愛しくて、知らず、抱き締める腕に力が籠る。 ネギ君を抱きあげたままベッドへ向かうと、そっと横たわらせた。自分も着ていた ものを脱ぎ、用意されていた寝間着に着替えると、ネギ君の隣に横になる。そうして、 その小さな体を抱き寄せた。 「留守中、何も変ったことはなかったかい?」 柔らかな髪を撫でながら問えば、気持ち良さそうに目を細めたネギ君が、ふんわり と笑う。 「うん。タカミチは大丈夫だった?怪我とかしてない?」 「ああ、大丈夫だよ。思ったより帰りが遅くなってしまったからね。心配させてし まったかい?」 「……ん、ちょっとだけ。でも、タカミチは強いから大丈夫って、信じてたよ。」 そう呟くように胸の内を吐露すると、ネギ君は僕の胸に顔を埋めてぎゅっと抱きつ いてきた。 予定では、一週間ほどで帰ってこられるはずだった。けれど、予期していなかった 出来事が重なり、結局、予定より一週間以上も遅れての帰宅となってしまった。 帰宅が遅くなるけれど心配しなくていいと、学園長を通じて伝えてはいた。けれど、 やはり不安だったのだろう。僕にしがみついたままの小さな体が、それを雄弁に物 語っている。 ネギ君を強く抱き締めて、安心させるように頭を撫ぜる。 「心配させてすまない、ネギ君。」 僕の言葉に、腕の中、ネギ君はふるふると首を振った。 「これで暫く、向こうでの仕事はないからね。ネギ君の側に入られるよ。」 「ホント!?」 ネギ君は僕の言葉に顔を上げると、目を輝かせた。それに、小さく笑ってみせる。 「ああ。明日はあの部屋に帰ろう。嬉しいかい?」 「うん!」 大きく頷いて、嬉しそうに笑うネギ君に、愛しさがこみ上げる。思いのまま、その 柔らかな唇に触れるだけの口付けを落とす。瞬間目を瞬かせたネギ君は、次の瞬間、 頬を淡く染め、嬉しそうに微笑んだ。 「さ、明日も早いからね、もう寝ようか。」 「うん。お休みなさい、タカミチ。」 「お休み、ネギ君。」 ネギ君は寝やすい位置に体をずらすと、そのまま安心したように眠りについた。 聞こえてくる規則正しい寝息。感じる温もり。愛しくて仕方のない存在を、ようや くこの腕に抱くことが出来た喜びに、知らず笑みが浮かぶ。 明日からはまた、二人きりの生活が始まる。 それは次の仕事までの決して長くはない時間だけれど、僕にとっては何にも代えが たい至福の時に違いない。 「お休み、ネギ君。いい夢を。」 そう囁きかけると、僕はネギ君の淡く色づいた頬にそっと口付けた。 THE END 時間軸的には、「AFFECTION」の後。 久しぶりにこの設定で書きましたが、楽しかったです。![]()