「少し見ない間に、ずいぶん大人っぽくなったね。」 「え?そうかな?」 「うん。見違えたよ。」 そう言って笑いかければ、ネギ君は頬を淡く染めて照れ笑いを浮かべた。 尤も、魔法世界であったことを思えば、それも当然かもしれない。もちろん、まだ子供 特有の幼さはあるけれど、夏休み前と比べれば格段に大人っぽくなったと言えるだろう。 それだけでなく、武術も魔術も、以前とは比べ物にならないほどの成長を遂げていた。 『もう、僕ではとても太刀打ちできないな。』 思わず漏れる苦笑を、煙草を口にすることで誤魔化す。 そんなネギ君の成長が嬉しくもあり、また、まだ10歳という幼さでそこまでの成長を 余儀なくされた事実が気の毒でもあった。同時に、何の力にもなれなかった自分の不甲斐 なさが情けなかった。 尤も、側にいたところでどれだけ力になれたか、自分の力量を知っているからこそ、甚 だ疑問ではあったが。 『いないよりはマシ、程度かな?』 「どうしたの?タカミチ。」 浮かんだ自嘲の笑みを見咎めたネギ君が、首を傾げて問うてきた。 「なんでもないよ。それより、ネギ君。背が伸びたんじゃないのかい?」 「え?背?アスナさんにもそう言われたけど、どうなんだろ?自分じゃよく分かんないや。」 「確かめてみようか。立ってごらん。」 腰を浮かせながら立つよう促せば、ネギ君は素直に立ち上がった。真っ直ぐに立ったネ ギ君に一歩近づき、その両頬を両手で包み込む。そうして徐に身を屈めると、その唇に触 れるだけのキスを落とした。 「うん。やっぱり伸びたね。以前よりずっと、キスがしやすくなったよ。」 「………っっっ!///」 顔を近づけたまま、そう言って小さく笑えば、途端、ネギ君の頬が真っ赤になる。 何か言おうと開かれた口は、けれど言葉を発することなく、数度の開閉の後にそのまま 閉じられた。その後に聞こえてきた、小さな唸り声。 「ネギ君?」 「………タカミチのバカ……。」 頬を桜色に染め、上目づかいで僕を見るネギ君が、そう言って口を尖らせる。 そんな顔でそんな可愛らしい悪態を吐かれてもね、ネギ君、それは逆効果というものだ よ。 無意識に僕を煽るネギ君に苦笑しつつ、もう一度、今度は先より長めに口付けた。 THE END ぽこっと浮かんで、さらっと書きました。ので、短いです。 しかも、シリアスかと思いきや、そうじゃないし(苦笑) しかし、どんな測り方してんだか(笑)![]()