聞こえてきた、微かな声に目が覚めた。 ゆっくりと開いた目に映るのは、闇のみ。それが、夜明けがまだ遠いことを 物語っていた。 なぜ目が覚めたのだろうかと、首を傾げた途端、再び聞こえてきた微かな声。 「と…さ……。」 隣から聞こえてくる声に、視線を向ける。 「ネギ…?」 小さく声をかけるが、応えはなく、ただ聞こえてくるのは啜り泣くような声 のみ。 軽く上体を起こし、ネギの顔を覗き込む。闇に慣れた目に、まろやかな頬を 音もなく伝う雫が映った。 夢にうなされ涙するネギの姿に、思わず溜息が洩れる。 「ったく、しょうがねぇなぁ…。」 こんなに近くにいるのに、なぜ夢に泣く必要があるのか。 「俺はここにいるだろう?なぁ、ネギ。」 ナギは苦く呟いて、ネギを抱き寄せた。 悪夢なら、とっとと覚まさせるに限る。名を呼んで、頬を軽く叩けば、ネギ はゆっくりと目を開けた。 「…とう…さん……?」 ぼんやりとした表情で見つめてくるネギに、思わず苦笑してしまう。 「なーに泣いてんだよ、ネギ。」 「え……?あ…。」 瞬きと共に零れ落ちた雫を指で拭えば、状況を理解したのか、ネギの頬が羞 恥に淡く染まる。慌てて手で拭おうとするのを、右手を左手で、左手を右手で シーツに押さえつけ、身動きとれなくさせてしまう。 「え?あの、父さん……???」 訳が分からず目を瞬かせるネギの目元に、その涙を拭うようにナギはそっと 口付けた。 「……?!」 驚きに思わず目を見開くネギを他所に、ナギは目元へのキスを繰り返した。 何度も何度も繰り返される優しいキスに、最初は強張っていた体から、徐々 に力が抜けていく。そうしてナギに完全に身を委ねたネギの、その軽く閉じら れた瞼に優しいキスが落とされる。 ナギが徐に身を起こす気配に、ネギはゆっくりと目を開けた。 薄闇に見えるナギの姿に、ネギの顔に微かな笑みが浮かんだ。 シーツに縫い止められていた右手が、ナギによってゆっくりと持ち上げられ る。そのままナギの頬に押し付けられるのを、ネギはただ黙って見つめていた。 「俺はここにいる。……違うか?ネギ。」 静かな声に、ネギはふるふると首を振った。そうして求めるように、ネギは 左手をナギに向かって伸ばした。 ナギは腕を引き寄せると、首に回させ、そのまま細い体を抱き締めた。 「夢になんか泣かされてんなよ。」 「ごめんなさい……。」 思わず漏らした本音。それに返された小さな声に、思わず苦笑する。 『謝るのは俺の方だってのに、こいつは…。』 こうして側にいてやれるようになっても、不安を拭いきってやれない自分の 不甲斐なさが情けない。が、そんなことを嘆いていても始まらない。この先も ネギが不安になるのなら、その度に、こうして抱き締めて安心させてやればい い。もう決して、ネギの側を離れることなどしないのだから。 「ほら、こうしててやるから、もう少し寝ろ。」 「はい。」 ゆっくりと体を離すと、寝やすいように体をずらし、そっと抱き締めてやる。 嬉しそうに擦りよるネギの髪を撫でてやりながら、ナギは閉じた瞼にキスを落 とした。 「今度の夢は、俺も出てやるよ。偉大かつ超クールな天才&最強無敵の俺様が 側にいりゃ、怖くなんかねーだろ?」 「はい。」 ウインクと共に告げられた言葉に、ネギは嬉しそうに笑って頷いた。 THE END ナギネギは、甘々が好き(笑) ナギに思いっきりネギ君を甘やかして欲しいです。でも、ナギがネギ君に 意地悪するのもいいなぁ(笑) ネタ的にはタカネギでもいけそうですが、「a nightmare」でやったので、 ナギネギにしました。![]()