ss63
姿形はナギ似だが、その眼差しは亡きアリカ様を思い出させる。
揺るぎなく、真っ直ぐに前を見る高貴な瞳。
どんな時にも背筋を伸ばし、どこまでも気高く高貴であり続けたアリカ様。
まだ幼かった私の憧れであり、そして、初恋の人だった。
その遺児である、ネギ・スプリングフィールド。
私の思惑に彼を利用し、そして泥沼の抗争に巻き込むことを知ったら、アリカ様、
あなたならなんと仰るでしょう。
浮かんだ想像を、私は頭を振ることで振り払った。
「ではクルトさん、ペンを貸していただけますか。」
真っ直ぐに私を見つめ、ネギ君が手を差し出す。
アリカ様とは違う目の色。けれど、アリカ様を彷彿とさせる輝き。
私は魅せられたようにネギ君の瞳を見つめた。
「クルトさん?」
「ああ、ペンですね。」
一向に動こうとしない私に、ネギ君が小首を傾げる。
呼びかけに我に返り、ネギ君の目から視線を外す。ふと、目に入ったネギ君の右
手。袖口から細い手首が覗いている。それに引かれるように、気がつけば、私はネ
ギ君の手をとっていた。
自分のほうに引き寄せ、袖口を引き、細い手首を露わにする。そうして、白く細
い手首に顔を近づけ、そっと口付けた。
「…………っっ!?」
「クルトさん…っ!?」
瞬間起こったざわめきを無視し、私はネギ君の手をとったままにっこりと笑いか
けた。
「あちらに用意してあります。案内しましょう。」
THE END
クルト→ネギ君というかなんというか。
もうちょっと、クルトのアリカ様への思いを書こうかと思いましたが、
キリがなくなりそうだったので止めました(苦笑)