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				 姿形はナギ似だが、その眼差しは亡きアリカ様を思い出させる。

				 揺るぎなく、真っ直ぐに前を見る高貴な瞳。

				 どんな時にも背筋を伸ばし、どこまでも気高く高貴であり続けたアリカ様。

				 まだ幼かった私の憧れであり、そして、初恋の人だった。

				 その遺児である、ネギ・スプリングフィールド。

				 私の思惑に彼を利用し、そして泥沼の抗争に巻き込むことを知ったら、アリカ様、
				あなたならなんと仰るでしょう。

				 浮かんだ想像を、私は頭を振ることで振り払った。

				「ではクルトさん、ペンを貸していただけますか。」

				 真っ直ぐに私を見つめ、ネギ君が手を差し出す。

				 アリカ様とは違う目の色。けれど、アリカ様を彷彿とさせる輝き。

				 私は魅せられたようにネギ君の瞳を見つめた。

				「クルトさん?」

				「ああ、ペンですね。」

				 一向に動こうとしない私に、ネギ君が小首を傾げる。

				 呼びかけに我に返り、ネギ君の目から視線を外す。ふと、目に入ったネギ君の右
				手。袖口から細い手首が覗いている。それに引かれるように、気がつけば、私はネ
				ギ君の手をとっていた。

				 自分のほうに引き寄せ、袖口を引き、細い手首を露わにする。そうして、白く細
				い手首に顔を近づけ、そっと口付けた。

				「…………っっ!?」

				「クルトさん…っ!?」

				 瞬間起こったざわめきを無視し、私はネギ君の手をとったままにっこりと笑いか
				けた。

				「あちらに用意してあります。案内しましょう。」


















				THE END





		 	


















				クルト→ネギ君というかなんというか。
				もうちょっと、クルトのアリカ様への思いを書こうかと思いましたが、
				キリがなくなりそうだったので止めました(苦笑)