「浮気をしたくてもできない人と言うのは、相手(パートナー)にも浮気を求めないよう
				望むそうです。そのため、自分以外の人と必要以上に仲良くすることに対して、嫉妬す
				るのだそうですよ。知っていましたか?ネギ君。」

				 紅茶を口にしながら、にっこり笑って言われたことに、ネギは当惑したように目を瞬
				かせた。

				「はぁ、そうなんですか。知りませんでした。」

				 先ほどまで、父(ナギ)の昔の話をしていたのに、なぜここで『浮気』だの『嫉妬』だ
				のの話になったのか、正直、ネギにはさっぱり分からなかった。それでもアルの話は初
				めて聞いたものだったので、ネギは素直に首を振った。

				「ですから、焼餅焼きな人ほど、浮気願望が強いとも言えるわけです。尤も、嫉妬の要
				因は他にもありますから、一概にそうとは言い切れないでしょうけれど。」

				「はぁ。」

				 そう言われても、ネギには何と答えていいのかさっぱり分からなかったので、とりあ
				えず頷くに止めておいた。

				「ネギ君。私は君がどんなにコタロー君たちと仲良くしても、決して嫉妬しません。で
				すから、安心してください。」

				「……っ!?」

				 胡散臭いとしか言いようのない笑顔でさらりと告げられた言葉に、ネギの目が驚きに
				見開かれる。

				『えーと、これはどういう……?』

				 ネギの頭上に「?マーク」が浮かぶ。

				 話の流れから考えるに、アルは浮気をする気がないから、ネギに嫉妬しないと言いた
				いようなのだが、しかし。

				『それ以上の含みを感じるのは、僕の気のせいなのかな……?』

				 何となく感じるアルのどこか不穏な気に、ネギは思わず唾を飲み込んだ。

				「おや?どうかしましたか?ネギ君。」

				「いえ……。」

				 思わず固まってしまったネギに、アルがわざとらしい仕草で首を傾げる。それに、ネ
				ギは何でもないと首を振った。

				「尤も、もしネギ君が本当に浮気をしたとしたら…。」

				 アルはそう言いながら席を立ち、ゆっくりとネギの傍らに移動した。そうしてネギの
				右手をとると、そこに残る傷にゆっくりと指を滑らせた。その微妙な刺激に、ネギの体
				が微かに震える。

				「ネギ君はともかく、相手はどうなるか分かりませんねぇ。」

				「……っっっ!」

				 不穏な気を隠そうともせず、アルは全く目の笑っていない口元だけの笑みを浮かべ、
				そうさらりと告げると、傷跡にそっと口付けた。

				「尤も、そんなことは決してないと、ネギ君を信頼していますけどね。」

				「…………ありがとうございます…。」

				 ここでこの言葉は可笑しな気がしたが、ネギは他になんと言っていいのか分からな
				かった。

				 俯いたまま、アルの言葉を反芻したネギは、万が一にもそんな事態になったら、相手
				はもちろん、自分に何が起こるかを想像して蒼白になった。

				 アルの言い方から考え、自分だけ無傷で済むとは到底思えなかったからだ。

				『この場合のともかくは、最悪の事態だけはないってだけなような気がするんだけ
				ど……。』

				 それが正解かどうか、けれどネギにはアルに問うことも、ましてや、実践してみる勇
				気もなかった。

				 これを「信頼」と言う名の「束縛」だと感じるのは、気のせいだろうか。

				 アルに手をとられたまま、ネギは密かにそう考えた。

				「お茶を淹れなおしましょうか。」

				 先までの不穏な気はどこへやら、にっこり笑ったアルがネギのカップに紅茶を注ぐ。
				それを見ながらネギは、

				『絶対、アルに誤解されるような真似はしないようにしよう。』

				 と、固く心に誓うのだった。













					THE END





		 	















				冒頭のアルの言ってるようなことを、「いいとも」で知って
				ネタにしてみました(笑)
				こういうのはアルが似合うよなぁ。

				コタネギver.も考えたんですが、それはまた気が向いたら。