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					 何気ない日常の中で、ふと、気付く視線がある。

					 例えばすれ違いざまに、会話の切れた瞬間に、無言で向けられる視線。
	
					 その視線に、落ち着かなさを覚えるようになったのはいつからだろう。

					 今もそうだ。

					 会話の途切れた、ほんの少しの間、フェイトはカップを手にしたまま、それを口に運ぶでもなく、
					ただじっと僕を見つめている。

					 真っ直ぐな視線はただ僕だけに向けられていて、どうしてだろう、酷く落ちつかない気持ちにさ
					せられる。

					 口元に僅かに浮かんだ笑み。僕以外のほかの誰にも向けられることのないそれが、僕がフェイト
					にとって特別であることの証明のようで、嬉しいのだけれど、半面、ちょっと恥ずかしかったりも
					する。だから、余計に落ち着かないのかもしれないと思う。

					 落ちた沈黙と向けられる視線に耐えられなくなり、口を開きかけた瞬間、フェイトの澄んだ声が
					僕を呼んだ。

					「好きだよ、ネギ君。」
	
					 次いで告げられた言葉を、僕は半ば呆然と受け止めた。

					 耳に届いた言葉を、けれど僕は理解することが出来なくて、フェイトを見つめたまま、何度も目
					を瞬かせた。

					「………え?今、なんて……?」

					「君のことが好きだと言ったんだよ、ネギ君。」

					 落ち着き払った声が、先の言葉を繰り返す。

					「かなり鈍い君のために断っておくけれど、友達として、ではないよ。愛している、と言ったほう
					が、君には分かりやすいかな。」

					「………っ!?」

					 さらりと告げられた言葉に、返す言葉を失う。

					 頬が熱いから、多分、僕の顔は真っ赤になっているのだろう。

					 言葉もなく、ただ目を瞬かせている僕に、フェイトは焦れるでも呆れるでもなく、ただほんの少
					し、その笑みを深めただけだった。

					「……う、あ、え…と……。」

					「答えは今でなくてもいいよ。」

					 なんとか言葉を紡ごうとするのを、フェイトの一言が遮った。

					「ゆっくり考えてくれて構わない。尤も…。」

					 フェイトはカップをテーブルに置くと、静かに立ち上がった。そうして、ゆっくりと僕に近づく
					と、そっと耳元に囁いた。

					「君の答えがどうであれ、僕の気持ちは変わらないし、諦めないけれどね。」

					「………っ!」

					 落とされた言葉に固まった僕を残して、フェイトは悠然と立ち去った。

					 フェイトが立ち去ってからどれくらい経ってからだろう、しばらく固まっていた僕は、ようやく
					先のショックから覚め、けれど立ち上がることもできずにテーブルに突っ伏した。

					『…………今のって、告白……だよね?やっぱり……。』

					 溜息を吐きながら、ぼんやりと先のやり取りを思い返す。

					 なぜあんな展開になったのだろう。他愛もない話をしていたはずだ。それなのに、なぜフェイト
					がいきなりあんなことを言い出したのか、僕にはさっぱり分からなかった。

					『ゆっくり考えろって言われても……。』

					 何をどう考えればいいのかも、正直、分からなかった。

					 フェイトのことは決して嫌いではない。友達としてならもちろん、好きだとはっきり言える。け
					れど、それ以上の感情があるかと問われれば、困ってしまう。
	
					 親愛の情はあるけれど、フェイトの言う「愛している。」は、もっと深い意味な気がするから、
					答えに窮したのだ。

					『……そっか。あの視線はそういう意味だったんだ。』

					 ここのところの疑問が解けたのも束の間、新たな難題を突き付けられ、僕はもう一度大きな溜息
					を吐いた。









					THE END




		 	
















					WEB拍手のお礼として使用していたもの。
					さらりと爆弾を投下するフェイト(笑)