「ネギ君。『DOZEN ROSE』というのを知っていますか?」

			「『DOZEN ROSE』ですか?いえ。」

			「『DOZEN ROSE』とは、言葉の通り1ダース、12本のバラのことです。欧米では、『1ダースのバラを
			贈ると幸せになれる』という言い伝えがあり、そのため、恋人に贈る習慣があるんですよ。」

			「へぇ。」

			 話しながら、テーブルの花瓶からバラの花を12本抜き取る。それを手に、ゆっくりとネギ君に歩み寄っ
			た。

			「1本1本のバラの花にはそれぞれ意味があり、12本贈ることで、その全てを誓うことを意味します。
			これは、『尊敬』。」

			 12本のうちの1本を、そっと差し出す。ネギ君は、差し出された物を、目を瞬かせながらも受け取った。

			「『信頼』、『幸福』、『栄光』。」

			 意味を告げながら、その度に1本1本ネギ君に手渡していく。

			 渡されるバラを、不思議そうに、けれど拒むことなく受け取るネギ君に、思わず笑みが深まった。

			「『努力』、『希望』、『誠実』、『感謝』。」

			 ネギ君の手には、8本のバラ。あと4本で1ダース(12本)になる。

			「『情熱』そして…。」

			 9本のバラを渡したところで、一呼吸置く。そうして10本目を手にし、そっとネギ君に差し出した。

			「『愛情』を、ネギ君に。」

			「え?」

			 目を瞬かせて私を見るネギ君に笑いかけ、その柔らかな頬にそっと口付けた。途端真っ赤になるネギ君に、
			知らず笑みが深まる。

			「これは『真実』ですよ、ネギ君。」

			 11本目を渡しながら、今度はおでこに口付ける。

			 ネギ君は真っ赤になったまま、私にされるがままだ。戸惑いを隠せぬ瞳が、僅かに揺れている。

			「そして、『永遠』を誓いましょう。」

			 言葉と共に、唇に口付ける。

			 触れるだけの口付けに、けれど震えるネギ君が愛しくて仕方がない。

			 先ほどまで私の手にあった12本のバラは、今や全てネギ君の手にある。その意味は、流石にもう、分か
			りますね?ネギ君。

			「迷惑ですか?」

			 そっと頬に手を添え、そう問えば、ネギ君は慌てて首を横に振った。

			「それは良かった。」

			 にっこり笑って、ネギ君をバラの花束ごと抱き締める。

			「二人で幸せになりましょうね、ネギ君。」

			 腕の中、ネギ君は小さく、けれどはっきりと頷いた。
















			 THE END




		 	
















			WEB拍手のお礼として使用していたもの。
			アルはこういう搦め手が似合うと思う。