呼びかけに振り返ったネギに、無造作にバラの花束を押し付けた。

				「え?ラカンさん?」

				 ネギは、目を瞬かせて俺と花束を交互に見た。

				「やる。」

				「はぁ…。」

				 ぶっきら棒にそう言って背を向ければ、気の抜けた返事が返ってきた。

				 バラの花束を贈るなんて、自分でも柄じゃないのは分かっている。が、『DOZEN ROSE』の話を
				聞いてから、どうしても贈りたかったのだ。ネギに。

				 ネギがまだ5歳のガキだったころから本当にいろいろあったから、こいつには幸せになってもら
				いたいし、してやりたいと思っている。無体な手段でネギを手に入れた俺が言うことじゃないかも
				しれないが、それでも、その気持ちに嘘はない。

				 だから、ネギに贈ったのだ。

				 12本のバラの花を。

				 ネギはきっと、その意味を知らないだろう。

				 自己満足と言われようと構わない。

				 ただ、自分の気持ちをはっきりさせたかっただけなのだから。

				「……11、12本。」

				 ぽつりと漏れた声に、思わず振り返る。

				 バラの本数を数えていたらしいネギが、花束からゆっくりと視線を俺に向けた。

				 真っ直ぐに俺を見るネギの瞳に、『ネギが知るわけがない。』なんて、浅はかな考えだったこと
				に気がついた。

				「『DOZEN ROSE』ですね。」

				 そう言って、それは嬉しそうにネギが笑う。

				「嬉しいです。ラカンさんの気持ち、有り難く頂戴します。」

				 ネギが俺の伝えたかったことを理解してくれた。そのうえでこんなにも嬉しそうに笑っている。

				 それはとても嬉しいことなのだが、同時に、猛烈な照れを感じずにはいられなかった。柄でもな
				いと分かっているから尚更だ。

				 バラの花より綺麗に笑うネギに、俺はただ苦笑するしかなかった。













				 THE END




		 	
















				WEB拍手のお礼として使用していたもの。
				本当は、漫画にしたかった。
				バラの花より綺麗に笑うネギ君と、照れるラカンを描き
				たかったんですけどね。
				しかし、短い(苦笑)