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		Intoxication





		「はぁ〜。」

		 ネギは、今日何十回目かの溜め息をついた。

		 誰もいなくなった職員室で、試験問題と睨めっこをしながらの溜め息。

		 試験問題と睨めっこをしながら、とは言え、決して作成に悪戦苦闘して
		いるからの溜め息では、ない。なぜなら、試験問題は既に出来あがってい
		るからだ。何度も零れる溜め息は、寮へ戻ったら自分を待ち受けているだ
		ろう現実を憂いてのものだった。

		「兄貴〜。い加減帰ったほうがよくないっすか?」

		「カモ君……。」

		 試験問題の作成も終わったと言うのに寮へ帰ることもせず、もう幾度と
		なく溜め息をついているネギに、カモが堪らずに声をかけた。

		 既に時刻は10時を回っている。当然ながら、職員室には誰もいなくて、
		残っているのはネギとカモだけだ。他の教室も明かりは全て消えていて、
		学園に残っているのは、ネギ達以外では宿直の先生くらいだろう。

		 もともと、試験問題作成のため、出来上がるまでは帰らないつもりだと
		言ってはいたが、こうして問題が出来上がった今でも、ネギは寮へ帰ろう
		としない。こうして溜め息をついているだけだ。これでは、カモが堪らず
		に声をかけるのも、無理からぬことだろう。しかし、カモの言葉に、ネギ
		は頭を抱えて再び溜め息をついた。

		「そうは言っても……。コタロー君があんなこと言うから、帰ったら何さ
		れるんだろうって考えたら、帰れないって言うか、帰りたくないって言う
		か……。」

		「ほう。そやから、こんな時間までこんなとこで油売っとったんか。」

		 カモの言葉に思わず洩らした本音に、一番聞かれたくない相手が答えを
		返してきた。

		「コ、コタロー君!?」

		 いるはずのない人物の声に驚いて顔を上げれば、出入り口に、そうと容
		易に分かる怒りのオーラを纏ったコタローの姿があった。

		「な、なんでここに……っ!?」

		「決まってるやろ?ネギの帰りがあんまり遅いさかい、迎えに来たんや。」

		 言いながら、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。

		 口元に笑みを浮かべているが、その目は笑っていない。いかにコタロー
		が怒っているか、容易に理解できた。

		 ゆっくりと近づいてくるコタローに、ネギは普段の彼らしからぬ行儀の
		悪さでもって席を立つと、脱兎の如く逃げ出した。

		「あ、兄貴!?」

		「な…っ!?」

		 コタローの入ってきた出入り口とは反対側から逃げ出したネギに、カモ
		はただ呆然と見送り、コタローは一瞬虚をつかれたものの、すぐに反転す
		るとその後を追いかけた。

		 廊下を猛スピードで走るネギの後を、コタローが負けじと追いかける。

		「なんで逃げるんや!?ネギ!」

		「コタロー君が追いかけてくるからに決まってるでしょ!」

		「アホ!おまえが逃げるから、追いかけんのやろが!」

		「そんなこと言ったって、そんな顔で追いかけられたら、逃げたくもなる
		よ!」

		「誰のせいで怒ってると思っとんのや!10時過ぎても帰ってこないどこ
		ろか、連絡も寄こさんで、心配で来てみれば『帰りたない。』って、怒
		るんも当たり前やろ!いいから、逃げんのやめや!」

		「だって、帰ったらコタロー君、する気なんでしょ!?しかもコタロー君
		の気の済むまで!明日も授業あるのに、そんなことされたら困るんだって
		ば!だから帰りたくないって言うか、帰れなかったんだよ!それに、試験
		問題の作成だってやってたし!連絡入れなかったのは悪かったと思うけど、
		でも、そんなに怒ってたら、『逃げるのやめろ!』って言われても、止ま
		れるわけないじゃんか!」

		「アホか!!気の済むまで言うたかて、明日も授業あるのに足腰立たなさ
		せるほど、節操なしとちゃうわ!シャレも分からんのか!アホネギ!」

		「シャレ!?そんなの分かるわけないよ!普段だってコタロー君、結構無
		茶するじゃないか!そんなんで、僕ばっかり悪いみたいに言わないでよ!
		コタロー君のバカ!!」

		「バ、バカぁ!?言うにことかいて、そないなこと言うか!マジ、ムカつ
		いたわ!そない言うんやったら、望みどおり足腰立たなさせたるわ!」

		「わー!!!ちょ、まっ!そんなこと、全然!全く!望んでないから!遠
		慮します!!」

		「却下や!」

		「却下って!コタロー君、横暴!!!」

		「うるさい!いいから、いい加減止まれ!ネギ!!」

		「やだー!!」

		 互いに尋常でないスピードで走りながら、もし他に人がいたなら、痴話
		喧嘩にしか聞こえない会話を繰り広げる二人。

		 廊下を駆け抜け、階段を、下へ向かえば良かったものを、やはり動揺し
		ていたのか、上へ向かってしまったネギの前に、屋上へ続く扉が現れた。

		 ここへ至り、ネギはようやく己の迂闊さに気がついた。

		 しかし、時既に遅し。

		 それでもとりあえず屋上に出れば、飛んで逃げることも可能だと瞬時に
		思い至り、扉のノブに手をかける。そのまま開けようと捻るが、扉に鍵が
		かかっているのか開かないことに気付く。

		「え!?うそ!鍵がかかってる!?」

		 動揺に、何度もノブを捻ってみるが、ガチャガチャと耳障りな金属音が
		するだけで、一向に開く気配はない。

		「ようやっと、鬼ごっこも終わりみたいやな。ネギ。」

		「…………っ!!」

		 かけられた声に、反射的に振り返る。そこには、ネギに向かってゆっく
		りと階段を上ってくるコタローの姿があった。

		 口元に浮かんだ笑み。けれど笑っていない目。コタローの放つ気に、ネ
		ギは扉を背に、体を強張らせた。

		「覚悟はできとるか?ネギ。」

		 最後の一段を上ってネギと同じ位置に立つと、扉を背に体を強張らせて
		いるネギの顎を掴んでそう告げた。

		 コタローの言葉に、ネギの頬に朱が散り、次いですぐに青くなる。ネギ
		のその反応に、コタローは笑みを深めた。

		「あ……えと、あの、逃げたのは謝るよ!ごめん!だから……。」

		「却下、言うたやろ?聞いてへんかったんか?ネギ。」

		「きゃ、却下って、聞いたけど、でも……あっ!?」

		 抗議の言葉は、コタローの行動によって遮られた。

		 コタローの顔が肩の辺りに埋められたと思った瞬間、首にぴりりとした
		痛みが走る。が、それも一瞬だった。

		 血液特有の鉄の匂いが辺りに広がる。血を吸われたのだと思った時には、
		既に遅かった。快感にも似た感覚が体を支配し、足が震えて立っているの
		も困難になってくる。支え欲しさに、コタローにしがみ付けば、そのまま
		抱き締められた。

		「……っっん……ぁ……っっ。」

		 吸血行為と、耳のすぐ側でする血を舐める音。その刺激に、背筋になん
		とも言えない感覚が走る。

		 それは、快感に酷く似た感覚だった。

		「は……ぁ…あ……っ。」

		 溜め息とも、喘ぎともとれる声が、ネギの口から零れ落ちる。それに、
		コタローの口に笑みが浮かんだ。

		「やっぱ、ネギの血は特別や。甘くて、こっちまで興奮するわ。」

		「ん……っっ!」

		 弱い耳元に囁かれ、紛れもない快感にネギは体を震わせた。

		 「血が甘いわけない。」と抗議したかったが、言葉に出来なかった。

		 いつの間にか肌蹴られたシャツの間から、コタローの手が忍び込んでく
		る。肌の感触を楽しむようにあちこち撫でてくる手に、体の震えが止まら
		ない。吸血行為と肌を弄る刺激に堪らず、ネギはその場にへたり込んだ。

		「……気持ちええか?ネギ。」

		「……や……だ………っ。」

		 耳を甘噛みされて、びくりと体が反応する。

		 コタローの問い掛けに思わず頷きそうになるのを、ネギは辛うじて堪え、
		震える声で拒絶の言葉を口にした。この期に及んで抗おうとするネギに、
		コタローの笑みが深まる。

		「まだ足りん、言うんやったら、もっと気持ち良くさせたるわ。」

		「や……っま、……っあっ!」

		 震える手でコタローの動きを制しようとして、しかし、徒労に終った。

		 再びぴちゃりと音を立てて血を啜られ、体の力が抜けていく。それだけ
		ではない。頭の中も真っ白になって、思考が困難になっていく。吸血行為
		による快感に良く似た感覚と、同時に与えられる紛れもない快感に、ネギ
		は堪えることも出来ず、嬌声を上げた。

		「……っは、ぁ…っコ、タ……っんぁ……っ!」

		 体のあちこちを弄っていた指が、不意にネギの熱に触れた。立ちあがり
		かけていたそれに触れられ、ネギの体は大きく跳ねた。

		「あ、やっコタロ…く…っやぁ……っ。」

		 震える手をコタローに伸ばし、なんとか止めさせようとするが、ネギの
		そんな抵抗など、コタローにとってはないに等しいものだった。

		 ネギの抗いの言葉を無視し、首筋に流れる血を舐めながら、指でそこを
		愛撫する。行為に体が震えるたび、コタローの口元に満足気な笑みが浮か
		ぶ。

		「今日は随分と早いんとちゃうか?もう、こないなってるで?」

		 既に先走りの雫を滴らせているそこに、揶揄するようにコタローが耳元
		に囁く。けれど、それすらも刺激にしかならないのだろう、答えることも
		出来ず、ネギはふるりと体を震わせた。

		「はぁ……も、や…だ……っ。」

		 弱々しく頭を振るネギに、コタローがどこか楽しげに笑う。

		「もうイきたくて我慢できへん?」

		「ち、が……ひぁうっ!」

		 ネギの言葉の真意を分かっていて、わざとそう言ってくるコタローに反
		論しかけた瞬間、自身を口腔に含まれ、嬌声が上がる。

		「や…ダメ……っやあぁ…っっ!」

		 そのまま丹念に舐め上げられ、ネギは快楽を振り払いたいのか、何度も
		何度も頭を振った。それでも、自身への直接的な愛撫には抗う術もなく、
		結局、そのままイかされてしまった。

		 一瞬の硬直の後、弛緩する体。

		 コタローは、放たれたものを躊躇いもなく飲み下した。それに、ネギは
		頬を赤らめたが、声を出す気力もないのか言葉はなかった。

		 まさかこんなところで最後までするとは思っていないネギは、射精後の
		気だるさに身を任せながらも、乱れた息を整えようと深呼吸を繰り返した。

		 大分正常に近づいてきたところで、立ち上がろうと体を起こす。それを
		コタローの手が支えたと思った次の瞬間には、体勢を反転させられていた。

		「!?コタロー君!?ちょ、何…っ!?」

		「自分だけイって終わりなんて、思ってへんよなぁ?ネギ?」

		「うそ……こ、こんなとこで……?」

		 コタローの言葉に、ネギの顔が青褪める。

		 ネギにしてみれば、こんなところでイカされたこと自体恥ずかしいこと
		なのに、その上コタローを受け入れるなど、常識の範疇を完全に超えてい
		た。

		「こんなとこでなんてやだよ!寮に戻ってからでいいでしょ?今度は逃げ
		たりなんかしないから……っ。」

		「却下や。」

		「却下!?って、ちょっコタロー君!」

		「こないなってて、寮までなんてもつわけないやろ?」

		「……っ!!!??」

		 苦笑して押し当てられたそれは、服の上からでも分かるほどに形が変わっ
		ていた。

		 確かにこの状態で歩こうとしたら、かなり変な歩き方になるのは必至だ。
		しかし、もうかなり遅い時間で、多少変な歩き方をしていても、それを見
		る人がいなければさして問題はないように思われたし、それがイヤなら、
		いっそのことトイレで抜いてきてもらって寮に戻ればいいじゃないかと、
		正直、ネギは思った。けれど、それを口に出したら、「そない言うんやっ
		たら、もちろんネギがしてくれるんやろ?」と言われるだろうことは容易
		に想像できたので、言葉にすることが出来ない。さりとて、こんなところ
		で最後まで、など、とてもではないが御免こうむりたい、というのが正直
		な気持ちだ。

		 なんとかしてこの状況を打破できないかと考えを巡らせるが、上手い考
		えが浮かぶわけもなく、ネギの想いなど他所に行為を再開させたコタロー
		に、ただ否定の言葉を口にすることしか出来なかった。

		「やだって言って……っコタロー君っっ!」

		「ちゃんと約束守らんかったネギが悪い。」

		「そんなこと言ったって……っあ、ひゃっ!」

		 後孔に感じたひやりとした感触に、潤滑剤を塗られたのだと気付く。

		 『なんでそんなもの、用意してるの!?』と、頭の隅で思ったが、口に
		出すことは出来なかった。潤滑剤の滑りを借りて押し入ってきたコタロー
		の指に、声を殺すので精一杯だったからだ。

		 入り込んだ指が、狭いそこを解すように蠢き、同時に、的確に前立腺を
		刺激してくる。刺激に、堪えようもない嬌声がネギの口から零れ落ちた。

		「あ…んく…っっあ、はぁ……っっ。」

		 目の前の扉に縋りつき、まるで腰をコタローに差し出しているかのよう
		に見えるネギの姿に、コタローはごくりと喉を鳴らした。

		「……っは、や…だぁ……っコタロ…く……っんあぁっ!」

		 潤んだ瞳でこちらを顧み、拒絶の言葉を口にするネギ。けれど、ここま
		できて止まれるわけもなく、コタローは逸る気持ちを抑えつつ、指を2本
		に増やした。途端上がる嬌声が、耳に心地いい。

		 潤滑剤を丹念に塗り込めながら、ゆっくりと、けれど確実に本数を増や
		していく。ついには3本に増やされた指が好き勝手に蠢いて、快楽がネギ
		の思考を奪っていく。それでもそれを否定したいのか、堪えきれない嬌声
		を上げながらも頭を振り続けるネギに劣情を煽られる。

		「はぁ……もう、我慢できへん……。」

		 熱っぽく囁かれた言葉と共に、指が引き抜かれた。それを安堵したのも
		束の間、指などとは比べ物にならぬ質量の熱棒をあてがわる。

		「やっ!コタロー君っっ!やめ……っ!」

		 思わず逃げを打つ腰を、コタローが引き寄せる。その勢いのまま押し入っ
		てくる熱棒に、ネギは声にならない声を上げた。

		「……………っは、あ、ぁ…っ。」

		 身の内にある熱に、ネギはふるふると頭を振り、嬌声混じりの息を吐い
		た。

		 馴染むのを待ってでもいるのか、ネギの中に全てを収めてしまったコタ
		ローは、後ろからネギを強く抱き締めた。

		「……ネギん中、めっちゃ気持ちええわ……。」

		 熱い呼気と共に耳元に囁かれ、ネギの体がひくりと震える。

		「は、はぁ、や、やめ……っ。」

		 この期に及んで、それでもまだ拒絶の言葉を口にするネギに、苦笑が洩
		れる。

		「こないな状態でやめて、辛いんはお互い様とちゃうか?なぁ、ネギ……。」

		「あ、やっ!あ、あぁ……っ!」

		 ゆっくりと腰を動かしながら、コタローの牙がネギの首に立てられた。

		 途端溢れ出す鮮血を、ぴちゃぴちゃと音を立てて舐める。同時に、緩々
		とした動作で腰を蠢かし、刺激を与えていく。

		 快楽に似た感覚と、紛れもない快楽に翻弄され、ネギの口から洩れるの
		は、喘ぎ声と、言葉にならない音の羅列だけだった。

		 ネギの血も、声も、表情も、何もかもがコタローを興奮させる。

		 荒い息を吐きながら、情欲のまま、コタローは徐々に腰の動きを早めて
		いった。

		「あ、あ…っや、ひぁっぁ、やぁぁ……っっ!」

		 繋がった部分からする濡れた音とコタローの上げる荒い呼気、そして自
		分の口から零れ落ちる喘ぎ声。「こんなところで。」と思う羞恥心が、聴
		覚をも刺激し、触覚の刺激と相俟って、ネギの中の熱をどんどん上げてい
		く。

		「や、いや、だ…やぁ…っ!」

		 そのままここで吐き出すことを躊躇うネギに構わず、コタローの繰り出
		す刺激はどんどん強くなっていく。それでもなんとか堪えようとするネギ
		の努力を無に帰すかのように、コタローの指がネギの熱に絡む。そのまま
		刺激を与えられれば堪えられるわけもなく、結局、ネギは快楽に屈服する
		しか術はなかった。

		「や…あぁ………………っ!」

		 嬌声を上げて果てたネギに少し遅れて、コタローも欲望をネギの中に放
		つ。注がれた熱に、ネギはふるりと体を震わせた。

		 コタローは、ネギを後ろから抱き締めると、暫くそのまま余韻に浸って
		いた。

		 それから幾許かの後、ゆっくりと離れる。抜けていくコタロー自身に、
		ネギは小さく体を震わせた。

		「ネギ……。」

		 扉に縋りつくようにして座り込んでいるネギの体を抱き寄せようと、コ
		タローは手を伸ばした。その途端、ネギに頭を叩かれる。

		 力が入らないのか、それはさした痛みを感じさせなかったが、いきなり
		の仕打ちに、コタローは叩かれた箇所を摩りながら口を尖らせた。

		「何するんや。」

		「五月蝿い。このバカ犬。」

		「犬言うな!」

		「コタロー君なんて、犬で十分だよ!しかも、躾のなってないバカ犬!も
		う、バカバカバカ!」

		「な…っなんやそれっ!?」

		「何って言葉のとおりだよ!ヤダって言ったのに、結局こんなとこでして、
		この後始末どうするの!?」

		 言われて見れば、先ほどの行為でネギが放ったものだろう、あちこちに
		点々と白いものが飛び散っている。

		「拭けばええやん。」

		 さらりと言った途端、今度は強く殴られた。

		「当然のこと言っただけやろ!?殴ることないやんか!」

		「そういう問題じゃない!あれほどっ…っで出すなって言ったのに……っ!」

		 顔を真っ赤にして怒るネギに、コタローにも、ようやくネギの言わんと
		していることが理解できた。

		「ああ、中に出したのの始末……。」

		 言い切る前に、また殴られる。

		「だから!殴ることないやろ!?」

		「五月蝿い!!コタロー君が変なこと言うからでしょ!」

		 怒鳴り返してきたネギは、顔だけでなく耳まで真っ赤で、照れているの
		が一目瞭然だった。

		「変なことやないやろ?中出ししたんは事実……。」

		「だから言わなくていいってばっっ!!!」

		 堪らずに、ネギはコタローの口を両手で押さえた。その手をぺろりと舐
		められる。

		「ひゃっ!ちょ、舐めないでよっ!」

		 驚いて手を引くのを、逆に掴んで引き寄せる。そのまま腕に収めてしま
		うと、コタローは意地の悪い笑みを浮かべた。

		「安心せぇ。俺が責任もって舐め取ったる。」

		「な……っ!?」

		 コタローの言葉に、ネギは頬を朱に染めて絶句する。その反応に、コタ
		ローの笑みが深まった。

		「中に出したんは、俺やからな。責任もって綺麗にしたるわ。」

		 その言葉に一瞬フリーズしてしまったネギに、にやりと笑いかける。そ
		うして、それはとても楽しそうに、コタローはネギの体をうつ伏せにさせ
		た。

		「わーっっ!!??ちょ、まっっ!コタ……ひぁっ!」

		 自分の状況に気付いたネギが、慌てて逃げようと身を捩るが、既に遅かっ
		た。そこをぺろりと舐められ、あられもない声を上げてしまう。

		 そのまま音を立てて舐められる。その度に、ネギの体は小刻みに震えた。

		「や……だぁ……っコタロ…く……やめ……っ。」

		「中のほうは、舌じゃ届かへんな。」

		 震える声でなんとか紡いだ言葉は、あっさりと無視される。それどころ
		か、言葉と共に指が挿し込まれる。それが中のものを掻き出そうと、ゆっ
		くりと動かされた。

		「やぁっ!も……やめ……っっコタロ、く…ん……っっ!」

		「俺は後始末してるだけや。そやろ?ネギ。それとも、欲しくなったんか?」

		 揶揄するように耳元に落とされた言葉に、ネギの頬に朱が散る。

		 「違う!」と否定しかけて、けれど前立腺を掠められれば、言葉は嬌声
		に摩り替わった。

		「あ……いや…だ……っも………っ。」

		「我慢できへんのやったら、遠慮なく言うたらいいで。今度はこんなこと
		せんでもええように、ちゃんとゴム使うたるからな。」

		「………………っ!?」

		 そう言って眼前に差し出されたものに、言葉を失う。

		 「だったら最初から使ってよ!」とは、けれど、言葉にすることが出来
		なかった。

		 いつの間にか『後始末』には程遠いものに摩り替わっていた行為に、口
		を開けば洩れるのは嬌声だけで、言葉を紡ごうとしても上手くいかなかっ
		たからだ。

		「は、ぁ……っコ、タロ……んんっの、バ、カぁ……っ。」

		 それでも精一杯の悪態をついてみせたネギに、コタローは苦笑と共にそ
		の唇を口付けで塞いだ。








		 その日からかなりの期間、ネギが屋上に近づくことはなかった。



		 THE END






		「描こう。」と思ってから形になるまで、かなり経ってしまいました;
		しかも、最初の予定では漫画だった(苦笑)描きたいシーンが増えて
		しまったため、結局こういう形になったわけなんですが。
		ん〜、微妙(苦笑)
		やはり、「描こう!」と思った時にがーっと書いてしまわないと、何
		が書きたかったのか分からなくなってしまいますね;自分で考えた話
		のクセに、と思われるかもしれませんが、そんなもんなんです。
		考えてるのは自分なのに、上手くいかないもんです(苦笑)
		それはさておき、とりあえず、ようやく書き終えました(^^;)
		「続きが読みたい。」と言ってくださったもずくさんと、もう一方、
		いかがでしたでしょうか?楽しんでいただければ幸いです(^^)
		この話はこのお二人に捧げさせていただきます。返品可です(笑)