「今日は楽しかったね。」

		 ぼんやりと上を見ていた小太郎に、ネギはそう言って話しかけてきた。

		「そやな。しっかし、こないに遊んだんは初めてや。」

		 視線だけネギに向けて、小太郎が笑って答える。それに、ネギも笑みを浮かべた。

		「うん。僕もだよ。こんなに遊んだのは生まれて初めて。すごく、楽しかった♪」

		 小太郎のほうに体を向けて、満面の笑みを浮かべるネギ。それに魅かれるように、小太郎もネギと向かい
		合うような体勢をとる。

		「日本に来なければ、3−Aのみんなに会うこともなかった。もちろん、師匠(マスター)にだって会って
		なくて、そしたらこんなに短期間で強くなることもできなかったし、まして、父さんの手掛かりを得ること
		もできなかった。修業だけじゃない。こんな風に遊ぶことも、いろんな経験をすることも、たぶん、出来な
		かったと思う。だから僕、日本に来られて、本当に良かったと思ってるんだ。」

		 笑顔でそう話すネギに、小太郎はただ黙ってそれを聞いていた。

		 確かに、ネギが日本に来なければ、小太郎自身もこんな風にいろいろな経験をすることもなかっただろう。
		ネギに出会っていなければ、今でも一匹狼を気取って誰にも頼らず、生きていくためにザコ妖魔の退治でも
		していただろうことは簡単に想像できた。世界の広さも知らず、井の中の蛙でいただろうことも。

		 誰かに頼りたいとは思わないが、頼れる存在がいるということがどれだけ心強いか、小太郎はネギと会っ
		て初めて知った。

		「3−Aのみんなだけじゃないよ。もちろん、コタロー君にも会えなかった。」

		「……あ?」

		 ネギの言葉を聞きながら、ネギと出会ってからの自分をぼんやりと振り返っていると、その物思いを破る
		ように、ネギの右手が小太郎の左手に触れた。

		 自然な動作だったせいか驚きはなかったが、触れてくる手の温かさに、どきりとする。

		「僕ね、コタロー君に会えて、本当に良かったと思ってるんだ。」

		「……ネギ…?」

		 小太郎の手をとり握りしめてきたネギが、そう言って嬉しそうに笑う。

		 その笑顔が何だか眩しくて、ドキドキが止まらない。たぶん、頬も赤くなっているだろう。暗闇の中で良
		かったと、小太郎は本気でそう思った。

		「コタロー君はこういうと怒るかもしれないけど、僕にとってコタロー君はかけがえのない友達で、大事な
		仲間なんだ。他のみんなには相談しにくいことも、コタロー君になら話せることもあるし。だからね。」

		 そこで言葉を区切ったネギが、ふんわりと笑う。

		「コタロー君に出会えて、本当に良かった。」

		 柔らかく笑うネギの顔が眩しくて、だからなのかなんなのか、ドキドキが止まらなくて、言葉が出てこな
		い。

		 半ば以上真っ白になっている小太郎に気づかず、ネギは握っている手に力を込めた。

		「離れても、ずっと、友達でいてくれる…?僕…コタロー君のこと……す……。」

		「………っ!?」

		 途切れたネギの言葉に、小太郎の耳がぴんと立ちあがる。

		『な、なんや!?今、なんて言ったんや!?「す…。」って、なんや!?「す」って!?』

		 ネギの言葉の続きが分からなくて、小太郎の頭の中はパニックになっていた。「す」で始まる言葉をいろ
		いろ考えても、ネギが言いかけた言葉に当てはまりそうなものは浮かんでこない。

		「ネ、ネギ…?い、今の続き……。」

		 ドキドキしながらネギの顔を覗きこめば、先の言葉の途中で意識が途切れたようで、口元に笑みを浮かべ、
		幸せそうに眠っている。

		「……なんや、眠ってもうたんか……。」

		 眠ってしまっているネギに、小太郎の肩の力が抜ける。

		「俺のこと「す」って、なんて言いたかったんや?ネギ……。」

		 「す」の続きがとても気になりはしたが、こんなに幸せそうに眠っているネギを見ていると、それを聞く
		ために起こすのは忍びなくなってくる。

		 明日訊いてみればいいかと、結局小太郎も眠ることにした。

		 気がつけば、未だ握りしめられている手。温かいそれを引き寄せて、そっと、唇を寄せる。軽く触れるだ
		けの行為だったけれど、自分のしたことが恥ずかしくて、小太郎は慌てて布団を頭まで被った。

		 暫く布団で顔を隠していたが、ゆっくりと顔を出すと、起きた様子もないネギに安堵のため息をついた。

		「…お休み、ネギ。」

		 そう言って、少しだけネギに近付くと、小太郎はゆっくりと目を閉じた。














		『ねぇ、あの二人、私たちがいるってこと、忘れてるんじゃない?;』

		『ラブラブやねぇv』

		『お嬢様。その表現はどうかと……;』

		『そういう問題じゃありませんわ!ああ、やはりネギ先生だけでもこちらで寝かせるべきでしたわ!』

		『ネギく〜ん(ToT)』

		『う〜ん、これは思わぬ強敵出現、ってとこかな?ねぇ、のどかにゆえ?』

		『な、何を言ってるですか!?ハルナ!あ、あれはその、お、男同士の友情というものです!そうですよ
		ね!のどか!』

		『え!?あ、う、うん。そう、だと思う……。』

		『あの犬もネギ狙いってこと!?やっぱり一刻も早く、ネギをウェールズへ連れて帰らなきゃ!!』

		『モテモテでござるな、ネギ坊主。』








		THE END















		180時間ネタでございます(^^)
		いくら部屋がなくても、10歳と15歳の男女が一緒に寝るのはいかんだろう。
		ネギ君とコタは押し入れで寝てもらうか、どうしても一緒に寝るなら、ネギ君
		とコタをセットで隅にしとくべきだよね。と、これが本来の考え方ではないか
		と。特に、ネギ君は、まがりなりにも3−Aの担任なんだから(苦笑)とは言
		え、それではあの話が成り立たなくなるので、突っ込みませんが(←してる
		じゃん;)
		それはともかく、「押し入れで二人は寝なさいねv」ということで、押入れに
		押し込められた二人の会話。ちなみに押入れの襖は開いています(笑)
		天然に期待させちゃうネギ君と、それに振り回されてるコタが、書いてて楽し
		かったです(^^)
		は〜、久しぶりにラブラブだ〜(笑)
		ちなみに、背景の花は「コレオプシス」。花言葉は「夏の思い出」だそうですv