「お父さんたち、早く帰ってこないかなぁ。」

		 タカミチの膝にちょこんと座って本を読んでもらっていたネギが、本に視線を落したまま、そうぽつりと
		零した。

		「そうだね。そろそろ帰ってくるんじゃないかな。……ナギがいないと、淋しいかい?ネギ君。」

		 そう問いかけながらネギの頭を撫でるタカミチ。それに、ネギは体を預けながら、こくんと頷いた。

		「そうか。ネギ君は本当にナギが好きなんだね。」

		 その反応に苦笑を隠せないタカミチを、ネギはにっこり笑って仰ぎ見た。

		「うん。だからね。僕、お父さんとずっと一緒に居られる方法を、アルに教えてもらったんだよ♪」

		「……アルに?」

		「うんv」

		 嬉しそうに答えるネギに、タカミチの表情が強張る。

		 アルがネギにどんな入れ知恵をしたものか、一抹の不安を覚えたタカミチが、恐る恐るネギにその方法を
		尋ねようとした、ちょうどその時、件の人物らが現れた。

		「お父さん!お帰りなさいv」

		 タカミチの膝から飛び出ると、そのままナギに抱きつくネギ。それを、ナギは軽々と受け止めた。

		「アルも、詠春さんも、お帰りなさいv」

		「「ただいま、ネギ君。」」

		 満開の笑顔でのお出迎えに、二人の顔にも笑みが浮かぶ。

		「私たちと離れていて、淋しくはありませんでしたか?」

		 アルが、少し遅れてやってきたタカミチにちらりと視線を向けながら、そうネギに問いかけた。

		 「タカミチ君とガトウだけでは淋しかったでしょう?」と訊いているも同然の問いに、タカミチの表情が
		硬くなる。その反応ににこりと笑うアルに、タカミチは『相変わらず、意地の悪い……;』と思わずにはい
		られなかった。

		「淋しかったけど、タカミチとガトウさんがいてくれたから、平気だったよ。」

		「そうですか。」

		『それでも淋しかったんだね、ネギ君。』

		 「平気だった。」と答えながらも「淋しかった。」と正直に答えるネギに、喜んでいいのか、悲しんでい
		いのか、タカミチは複雑な気持ちだった。

		「だからね、ずっと一緒に居られるように、僕、大きくなったらお父さんと結婚するんだv」

		「は?」

		「へ?」

		 満面の笑みで投下された突然の爆弾発言に、少し離れて傍観を決めこんでいたガトウを含め、4人の目が
		点になる。ただ1人、アルだけはネギの発言を予想していたのだろう。目が点になるどころか楽しそうに
		笑っている。その様子からも、この間違った知識を植え込んだ張本人が誰であるかは明白だった。

		 にこにこと笑っているネギに、真っ先にショックから抜け出したナギが、声をあげて笑い出した。それに、
		ネギが「なぜ笑うのか分からない。」とばかりに、きょとんとした顔をする。

		「そうか、そうか。俺と結婚したいか。いいぞ、ネギ!お前が大きくなって、それでもその気持ちが変わら
		なかったら、してやるよ!」

		「ホント!?約束だよ?お父さん!」

		「ああ。」

		「わーいvお父さん大好きv」

		 そう言って嬉しそうに抱きつくネギ。それを抱きとめながら、ナギは堪え切れないのか、尚も低く笑って
		いた。

		「何安請け合いしてるんですか!?ナギ!」

		「では、私とも結婚してくれますか?ネギ君。そうすれば、私ともずっと一緒に居られますよ?」

		 その様子に思わず声を張り上げたタカミチを遮るように、アルがさらに事態をややこしくする。

		「アル!?」

		「アルと?うん、いいよ。」

		 迷うことなくそう答えたネギに、タカミチは眩暈を覚えた。

		 ナギはアルの提案に驚きもせず、ただ面白そうに笑っている。その横で、詠春は深い深い溜息をついた。

		「では、約束ですよ?ネギ君。」

		「うん。」

		 にこにこと笑っているネギに、アルはそっと、触れるだけのキスをその唇に落とした。

		 唇に落とされたキスに、不思議そうな顔をするネギ。それに、アルがにこりと笑って、更にいらぬ知識を
		植え付ける。それも、間違った方向で。

		「誓いの口付け、ですよ♪」

		「じゃあ、お父さんとも誓いの口付け〜v」

		 アルの言葉を聞き、『結婚の約束=誓いの口付け』と受け止めたネギは、そう言ってナギにキスをした。

		 ネギの言動が可笑しくて仕方がないのか、ナギは笑ったままだ。

		 第三者が見れば、それは微笑ましい光景だっただろう。けれど、当事者であるタカミチには、頭を抱えた
		くなる光景に他ならなかった。

		「ネギ君、「誓いの口付け」はそういう意味じゃ…;」

		 突っ込みどころはそこじゃないと、分かっていても、そう呟かずにはいられない。

		 そんなタカミチの姿に、詠春とガトウは『気の毒に。』と思わずにはいられなかった。

		「ネギ君。タカミチ君とはしなくてもいいんですか?結婚。」

		『何言ってんですかー!?』

		 アルの発言に、タカミチが声にならない突っ込みを入れる。と同時に、詠春とガトウの口から、溜息が漏
		れた。

		「タカミチ?」

		 首を傾げたネギが、タカミチに視線を向ける。目が合った瞬間、うろたえてしまった自分に、タカミチは
		動揺を隠せなかった。

		「うん。タカミチとも結婚する。」

		「…………っっっっ!!??」

		「そうか。だがな、ネギ。お前がそう思ってても、タカミチもそう思ってるとは限らないだろう?ここは、
		タカミチの意見も訊いてやらなきゃな。」

		「そうですね。ナギの言うとおり、タカミチ君の意見も尊重しないと。」

		 ネギの発言に動揺しまくっているタカミチをからかうように、ナギが笑いながら、とんでもないことを言
		い出す。アルも、それに追い打ちをかけるかのように、そう言ってにこりと笑った。

		 二人の言葉に、ネギは相手の同意も得なければ結婚できないのだと理解したようだ。不安げな視線をタカ
		ミチに向ける。

		「…タカミチ。僕と結婚するの、やだ?」

		「い、いや、そんなことはないよ…っ!ネギ君!」

		 不安げな瞳で見つめられては、「否。」と言えるはずもなかった。尤も、タカミチがネギと一緒にいたく
		ないと思うなど、あり得なかったのだが。

		「ホント?良かったv」

		 そう言って嬉しそうに笑うネギを見ていると、自分をからかうためにいつの間にかタッグを組んでいるナ
		ギとアルの楽しそうな笑みも、どうでもいいような気がしてきた。

		 しかし、それもほんの一時だった。

		「良かったなぁ、ネギ。」

		「うんv」

		「では、タカミチ君とも「誓いの口付け」をしないといけませんね。」

		 その言葉に、タカミチの目が一瞬点になり、次いで驚きに見開かれた。

		「うん。」

		 タカミチの動揺など知らず、アルの言葉に素直に頷くネギ。

		「タカミチ。」

		 名を呼んで、抱っこをせがむネギの手を、しかし、タカミチに拒めるはずがなかった。

		「タカミチ。僕ね、タカミチのことも大好きだよ。だから、ずっと一緒に居てね?」

		 せがまれるままその腕に抱くと、ネギは嬉しそうに笑ってそう言った。そうして、タカミチにキスをする。

		 微かに触れるだけの口付けを、それでも甘いと感じてしまった自分はもうダメかもしれないと、タカミチ
		は自嘲しながらもネギを抱き締めた。

		「ああ。君が望むなら、ずっと一緒に居るよ。」

		「うんv」

		 ぎゅうっと抱きついてくるネギの頭を優しく撫でる。

		 二人を見るナギとアルの笑みには、少しだが、まだからかいの色が混じっていた。詠春とガトウは苦笑を
		隠せないでいる。だが、それらも今のタカミチには、どうでもいいことに思えた。

		「約束だよ、ネギ君。」












		THE END


















		
		この話は、パラレル設定です。そのため、アスナの代わりにネギ君がナギのパーティーに
		おります。その辺はご了承ください(^^;)

		ええと。実は、一部実話が入っていたりします(笑)が、これまた人から聞いた話なので、
		どことは言いません。でも、言わなくても分かるよね?(笑)
		ナギネギのつもりで書いてたんですが、気がついたら「これってタカネギ?;」と思える
		代物が出来上がっていました(苦笑)
		おかしい・・・。ナギネギでラブラブだー!とか考えてたはずなのに;微妙に違う・・・。
		なんでだろう?・・・ま、いっか。(おいおい)
		このパラレル設定だと、タカミチはナギとアル(ついでにラカンも入るだろうな、ここに)
		に、おちょくられてると言いましょうか、遊ばれてます(笑)
		ネギ君はいろいろ間違ったことも教わってるようですが、この時はまだ小さいので、気づ
		いてません(笑)大きくなってから、この時のことを思い出して赤面するネギ君、てのを
		想像すると楽しいです(笑)(←ダメな大人がここにも・・・;)
		
		背景はフリージア。花言葉は「無邪気な君へ」(爆)