emission


		 蛮の様子がおかしい-------

		 そう気づいたのは、蛮が珍しくリビングのクッションに身を寄せて、
		うたた寝をしていたときのことだった。

		「…蛮?」

		 名前を呼んでも身動き一つ取らず、起きる気配さえ見せない。

		「蛮、大丈夫か?」

		 心配になって駆け寄ると、蛮は今初めて邪馬人の存在を確認したかの
		ように驚き、慌てて身を起こした。

		「何か用か?」

		 寝起きのせいか、それとも見せたくない姿を見せたせいか、不機嫌そ
		うに顔を歪ませ、クッションの脇に置いてある煙草に手を伸ばした。

		「体調が悪いときは止せ」

		「うるせぇよ…てめぇが教えたんだろうが、煙草もイケナイ遊びも全部!」

		「…蛮?」

		「触るなよっもう俺に触れるな!俺は…」

		 手を伸ばしかけた手を振り払われ、邪馬人は作り笑いを浮かべると蛮
		の顎に手を伸ばし、そっと頬を撫でた。

		「蛮?どうした…なにか嫌な夢でも見たのか?」

		 普段よりはトーンを落とし、穏やかで優しい声音で話しかけると、跪
		き蛮を胸元で抱きしめる。

		 途端に逃げようと足掻く蛮だったが、邪馬人の子供をあやすような背
		中へのリズムのよい振動に、観念したように大人しくなった。

		「蛮、どうした?」

		「…邪馬人、俺は自分が憎い」

		「バカだな…どうして自分のことをそんな風に…」

		 軽い口付けを交わすと、蛮からは甘い特有の色香と血の香りが鼻をく
		すぐった。

		「夢を見たのか?今度は誰が死ぬ夢だ?」

		 邪馬人の言葉に蛮は言い辛そうに口籠り、視線を反らすように目を閉
		じた。


		 蛮は、予知夢に似たものを見ることが稀にある。

		 感受性が人一倍敏感なせいか、近くにいる人間と親密になれば親密に
		なるほど、その相手のいつかくる未来を見ることがあるらしい。

		 デジャヴぐらいなら俺にだって感じることはある。

		 だが、蛮はそんな可愛いものじゃない…そう人にとっての負の部分の
		みを感じ取る。

		 今回は、多分俺のことだろう。

		 もう時 期 も 近 い -------


		「…俺だな」

		「っ邪馬人!俺…俺…」

		「いいんだ…分かっていることだ…蛮が気にするようなことじゃない。
		まだ来ないその時に脅えるなんて止せよ、似合うわねぇ」

		 耐えれるよう閉じられた唇から声が漏れ始め、涙が溢れ出す。

		「蛮、笑ってくれ…俺が死ぬときにお前の笑顔が思い出せるように…で
		ねぇと、泣いてるか喘いでる顔しか浮かばねぇ…」

		 そう耳元で囁いてやると、顔を真っ赤にして怒りのあまり言葉になら
		ないのか、胸倉を掴んでくる。

		 そんな蛮が愛しくてたまらない…

		「テメェなんざ、もう心配してやんねぇ!」

		「蛮、愛してるぜ」

		 腕の中から逃げ出した蛮を捕まえようとして失敗し、肩で安堵のため
		息をつきながら何気なしに告げる。

		「俺は、死に急いでるヤツなんざ愛してねぇよ!」

		 蛮はそうい言い捨てると、自室へと消えていった。


		「…死に急いでるか…お前を残して今死ねるかよ」

		 邪馬人は悔しそうに呟いて、蛮の後を追った。


		 その光景を一部始終目の前で見ていた卑弥呼は、深く深く呆れたため
		息をつき、二人のバカップルプリに当てられたのでした。









		桜月 まひるさまからサイト復活の記念にいただきましたv
		ありがとうございます!!すっごく嬉しくて浮かれまくって
		ますvvv
		邪蛮〜vvvバカップル、だけど、でも、切ないです(泣)
		本当になんで死んじゃったんでしょうね!?にーちゃん!
		にーちゃんが生きてたら銀次との出会いはないって分かって
		ても、そう思わずにはいられません(泣)
		切ないけど、でも幸せですv
		桜月さま、本当にありがとうございましたvvv