はてしなく青い空を見た 「これ、やるよ。」 寒さの続く毎日。 そんな中、ふと春めいた暖かさを感じさせる今日。 2月にこんなに暖かいのは珍しくて、それも全て邪馬人のせい なんじゃないのかって思ったら、思わず苦笑が洩れた。 目の前に、樹齢百年はあろうかと言う見事な大木。その根元に、 俺は小さなそれを静かに置いた。 「あんま金、なくてよ。小さくて悪ぃけど、とりあえず約束だっ たからな。やる。」 「義理でよければやるよ。」なんて、他愛のない話の中での約 束だった。「お返しは3倍か?」と、笑って答えた邪馬人との。 けれど結局その日を迎えることはなく、約束は一度も果たされ ることはなかった。 少しだけ楽しみにしてた約束を一度くらい果たしてやってもい いかな、なんて気紛れを起こしたのも、卑弥呼に教えてもらった からだろう。 邪馬人が眠るここを。 墓前への供え物のように置かれたそれは、小さなチョコレート。 しかもハート型。 もちろん、銀次にも同じものを買ってある。 「でも、分かり易くていいだろ?」 いるわけじゃないのに、それでもこれを見た邪馬人がどんな顔 をするか容易に想像がついて、少しだけ頬が赤くなるのが分かっ た。 照れ笑いと共に額を幹に押し付けて、生前の笑顔を思い出す。 思い出を反芻するように。 暫くそうして思い出に浸り、それからゆっくりと顔を上げた。 「そろそろ行くわ。うるせーのが待ってるからよ。」 笑ってそう言って、大木から一歩離れる。 「じゃーな、邪馬人。」 そうして軽く手を振って、踵を返した。 「あっと。」 そのまま行きかけて、言い忘れていたことを思い出し振り返る。 「3月14日。3倍返しだかんな?忘れんなよ、邪馬人。」 言いながら、大木に向かって指を指す。ウインクのおまけつき で。 そうして背を向けると、後は振り返らず、ゆっくりとそこを離 れた。 ふと見上げれば、雲ひとつない青空が広がっている。 はてしなく、青い空。 それはまるで邪馬人の笑顔のようで。 眩しくて、思わず目を細めた俺を包むように舞った風が、優し く笑ったような気がした。 THE END バレンタインネタ第1弾(笑)の邪蛮ですv 先にUPした「約束」と「TO BE WITH YOU」のエピ ソードを使った話ですね。 記録的な短さに、自分でも驚いてます。こんな短い話も書けんじゃ ん、と(笑) 去年に引き続き、ハートのチョコレートv蛮ちゃん、今回はどんな 顔して買ったんだろ(笑) そして続きは銀蛮。16日以降、書きあがり次第UPします。 目標は2月中UP〜(汗)