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		「わー!?何するんだよ!?」

		 俺の上に馬乗りになった彼は、俺のズボンと下着を引き抜くと、その口で、
		俺のものをぱくりと咥えてしまった。

		 なんで!?これがメモリー増やすことと、どう関係あんの!?

		 さっき彼は、確かに「メモリーを増やす。」と言っていたはず。それとこ
		の行為が結びつかなくて、俺は半ばパニックに陥っていた。

		「言ったろ?口で言うより実際にやってみたほうが分かるって。悪いように
		はしないから、大人しくしてろ。」

		 そう言いながらも、彼は俺のそれをちろちろと舐めて育て上げていく。ム
		スコを押さえられては、抵抗の仕様もなかった。

		「ん……こんなもんでいいな……。」

		 不意に快楽が止まった。

		 快楽に霞む頭に、彼がそう呟いたのが辛うじて聞こえた。

		「俺の名前……考えておけよ?銀次……。」

		『名前……?』

		 そうぼんやりと考えた瞬間、俺の思考は頭上で洩れた嬌声に遮られた。

		「な…………っ!?」

		 嬌声と、それに伴って訪れた感触に、俺は驚いて顔を上げた。その目の前
		で、信じられない光景が広がっている。

		 いつの間にか、彼は全裸になっていた。そうして、その、こともあろうに、
		俺の……その……を、とんでもないところに受け入れていたのだ。

		「なっ!?何して!?」

		「インストール作業……に決まって……あ……っんんっっ!」

		 言いながら、彼は自らゆっくりと腰を揺らめかせだした。

		「オメー……の…んっ…活性細胞…を……っこうや…って、補給して……っ
		んぁっ!あ……っぁっ。」

		 もう、何がなんだか分からなかった。

		 活性細胞を補給して?どうなるって?いやむしろ、なんでそんなもんが必
		要なんだ?さっきも俺のモノからデーターを強制入力してたし。一体全体、
		なんなんだよう!?

		「あ……くっう……んっ。」

		 俺の声にならない叫びなんかお構いなしで、彼は腰を動かして、どんどん
		俺を追い詰めていく。

		 その姿はすごくきれいで、男だって分かってるのに(人間でもないんだけ
		ど)見惚れずにはいられなかった。

		 高潮した頬、潤んだ紫紺の瞳、零れ落ちる甘い嬌声、そのどれもが、俺の
		心を捉えて離さなかった。

		「イ…インストール先……のディレクトリーを……作る…から……っ銀次っ
		俺の…名前を……っっ!」

		「ば……蛮ちゃん……っっ。」

		 言われて、とっさに浮かんだのはそれだった。

		 さっき彼が教えてくれた商品コードネーム。それにちゃんを付けたもの。
		なんでちゃんを付けようと思ったのか、自分でも良く分からないけれど。

		「“蛮ちゃん”……だな?俺は“蛮ちゃん”……メイク・ディレクトリー
		“蛮ちゃん”で登録。あ…っっ!メモリーが増え……っ!」

		「ん……くっっ!」

		 耐え切れず、俺は蛮ちゃんの中に全てを吐き出した。

		「100、200、500、800……っあっあぁ……っっ!」

		 訳の分からない数字を言いながら、蛮ちゃんもいわゆる絶頂ってやつを
		迎えたらしい。とはいえ、コンピューターにそんなものがあるのかは分か
		らないけれど。

		 俺の放ったものを全て受け入れた蛮ちゃんは、一息つくと満足そうに笑
		みを浮かべた。

		「インストール作業完了。ご馳走さん。」

		 その言葉に、俺は思わず頬を赤らめた。

		「イ…インストール作業って……一体……????」

		「俺達バイオタイプは、ご主人様(オーナー)の活性細胞を専用スロット
		からインストールしてもらわないとメモリーが増えない。しかも、俺のバ
		イオ・ニューログラムシステムは、活性細胞の保存が72時間以上はでき
		ねぇからよ。メモリーが不足しねぇように、定期的にインストール作業、
		してくれよな?」

		 にっこりと笑った蛮ちゃんに、俺は何も言えなかった。

		 定期的にインストールする。つまり、今したことを定期的にするってこ
		とだよね?蛮ちゃんと。

		 そう考えただけで、治まったはずの自身が熱を持つのを感じた。

		 ………蛮ちゃんは男で、いやそれ以前に人間じゃない、コンピューター
		で……なのにこんなに体が熱くなるのはなんでだろう……?

		 訳が分からず、でも熱をもち始めたそれは治まるどころかますます昂っ
		て……。

		「あの……さ……。もう一度したいって言ったら……蛮ちゃん怒る?」

		 おずおずと訊いた俺に、蛮ちゃんは嫣然と微笑んで見せた。

		「来いよ。」





		 こうして俺と蛮ちゃんの奇妙な生活は始まった。





		THE END








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